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娘が放つ必殺技。その日はホワイトクリスマスでした。

作者: ルーシー・スカイ

「何がホワイトクリスマスだ。こんな雪国の田舎でホワイトクリスマスもへったくれもあるか」

_ザック、ザック、ザック。新しくできた住宅街の一画から、豪快に雪を掻く音が聞こえた。時刻は18時30分。

「飲み会だぁ!?ふっざけるな!こっちは仕事して家事して子育てでいっぱいいっぱいだって言うのに!」

その女は、防水ジャンパーのフードをすっぽりと目深に被り、長靴に軍手という姿でスコップを手荒に扱っていた。

旦那への愚痴も相まって、ずっとこの調子で雪を掻いている。皮肉にも、その怒りは雪掻きのいい原動力になっているようだ。

結婚して3年。旦那への愛情なんてものはとっくに冷め切っている。理由なんてものはあげたらきりが無い。まだ稼ぎがよければ、何かしらの“情”は残るだろうが。

「あなたの稼ぎが少ないから、まだ小さい娘預けて働いてんだよ、こっちは!」スコップで力任せに持ち上げた雪の塊は、宙に舞うことはなく、ドスッという鈍い音を立ててスコップから落っこちた。日本海側の雪は、水分量が多くて重いのだ。大きな雪の塊が道のど真ん中に鎮座した。

「うわぁー!すごーい!おかーしゃん!待って!待って!ちーちゃんもやる!!」キャラクター物の小さなスコップを持った娘が、一生懸命に雪をすくい、その鎮座した雪の塊に乗せていく。

「何してんの?もうやめなよ。お母さん疲れた。お家に入ってお風呂入ろ。夕飯は…クリスマスだけど、うどんでいい?」

「うどん好き!おかーしゃんも?」

「うん、好き。楽だから。本当はチキンとかさ、用意してあげなきゃなのにね…ごめんね。今日もお母さんと二人きりだ」

「うどんもおかーしゃんも好き。おかーしゃん。ほら、二人じゃないよー?」

一瞬、旦那が帰ってきたのかと思ったが、車の音もしないしと思い、首を傾げて辺りを見回した。

「これ!この子!名前は、ふわふわうさぎ雪だるまちゃん!」

私がぶん投げた雪の塊に、娘は上手に雪を乗せて顔を作っていた。全くうさぎの要素はないが、ふわふわうさぎ雪だるまちゃんを見て、なぜが鼻の奥がつんとした。娘の必殺技【大真面目に不思議発言】はこんな時でも炸裂する。

「今日は3人でうどんパーティーしよ!」娘はホワイトクリスマスを心底楽しんでくれているようだ。無邪気な笑顔とその必殺技が、私のささくれ立つ心をなだめてくれた。


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