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山を下ること僅か五分。
ファーストアイコンタクトの相手はワイバーンだった。
「なんでだよ!最初の魔物と言えはスライムかゴブリンだろうが!?なんで初手からワイバーンと出会すんだよ!?」
いきなりのハプニングである。
いや、もしかするとこのワイバーンらしき奴は実は弱いのかも知れぬ。あの女神が考えなしにこんな山の山頂に俺を転生させるとは思えない。そう思えば少し気が和らいだ。
……しかしその期待は一瞬にして裏切られた。
「ひっ!勘弁してくれーー!ヒィッ」
我ながら情けない声が出た。
やばい、食われる。背中に生温かい鼻息が当たっている気がする。
ワイバーンはこちらを見逃すつもりはないようだ。
捕まったら人生終了の追いかけっこをすること三十秒。
もういっそ食われてしまおうか、、
俺が生を諦めかけた、その時。
「キシャァァァァァァァァァァ!」
あまりに異様な鳴き声に驚いて振り返ると、そこには…
「ヒィッッッッ!?」
地面から飛び出した鯨サイズのメガサイズ芋虫がワイバーンを丸飲みしていた。
「やだ、おうちかえりたい、、」
***
三十分後。
ようやく息が整い、心も落ち着いてきた。
死ぬかと思った。真剣に。
異世界を甘く見過ぎていた。
さて、これからどうしようか。
出鱈目に逃げてきたせいでもはや方角はすでにわからない。
道など勿論無いので山頂にも戻れない。
おまけに俺が今いるのは、俺より遥かに強いワイバーンが住んでいて、地面からメガサイズ芋虫が飛び出してくる森の中ときた。レベル上げをしようにも、俺がレベルアップの糧にされてしまう。
「……あれ?詰んでね?これからどうすんの?」
俺は途方に暮れるのだった。
***
3時間後。もう昼は過ぎていた。
いや、この世界の1日が何時間かわからないし、時計などないので実はそんなにたっていないかも知れないが。
俺はともかく水と食料を確保するため、腹を括って山を散策していた。しかし、1しかない体力を何度も回復しては使い切っているため、既に疲労困憊である。食えるかわからん木の実は幾分か集まったが、なかなか川が見つからない。
水は何としても今日中に見つけなければ。
俺は疲れる足を引きずりながらその一心で歩いていた。
すると突然、頭の中にピロリン♪と音が響く。
「レベルアップしました。レベルが2になりました。」
「……マジ!?」