2
気付けば、森に立っていた。
空気は澄んでいて、どこまでも空は晴れ渡っている。
眼下には見渡す限りの木々の緑。
ここは山の頂上のようである。
ふと正面の木に目をやるとその根本には水溜りがあった。
なんとなく自分の姿を見てみる。
そこには知らない西洋人の男が立っていた。
俺は右手を上げる。
するとその西洋人の男は挨拶をする様に左手を上げてきた。
俺は男に会釈をする。
すると男も会釈を返してくる。
ーーーどうやら本当に転生したようだ。
俺の前世は日本人だったので、今世の俺が果たしてイケメンの類に入るのか、それとも風景に溶けるほどのフツメンなのかわからない。しかし、顔立ちははっきりとしており、ブスではなさそうである。背は170cmくらいだろうか。
まぁ、そんなことはどうでもいい。
この世界の基準はわからないが、俺にとって外見ほど興味のないことはない。
さて、ひとしきり自分の姿を見たところで重大なことに気が付く。
記憶がない。
前世の自分に関する記憶が何一つないのだ。
自分の名前も家族や友達の名前も、年齢も趣味も好きな食べ物も。
前世の知識と常識だけが残り、他のことは全て忘れてしまっていた。
ふと、頭に知らない声が響く。
「こちらは転生神ルクアの部下、セラです。これは神託を使って一方的に話しかけているため、こちらに声は届きません。ご注意下さい。」
神託ってこんな感じなのか。
「あなたは無事、転生を果たしました。反動で一時的に記憶を失っているかと思いますが、半年ほどで完全に思い出せるかと思いますのでご安心ください。」
そうか。
「まず、あなたの現在地ですが、ウルフルン王国西部にあるベータ山というところの山頂です。この山を正面の方向に下ると村があります。そこを目指すといいでしょう。」
何故村スタートにしなかったのだろうか。
「また、この世界ではステータスという個人の力を数値化したもので自分の力を見ることができます。ステータス、と唱えることで確認できます。」
まるでゲームみたいだ。
「最後に、もし死ぬ時が来れば、継承スキルは必ず誰かに渡してください。」
そう言えばそんなことを転生前にも言ってたな。
「恐らく、あなたに神託を授けるのはこれが最後になります。第二の人生を楽しんでください。」
それを最後に声は聞こえなくなった。