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他人行儀になった幼馴染美少女と何故か一緒に住むことになった件  作者: 戦告
第3章「中学と高校は雲泥の差」
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第89話「蛍との約束」



「どっちがいいかなぁ……」


 蛍はブレスレットかネックレスまではどうにか絞込みができたようだったが、その二つをなかなか選べないでいた。


 どちらもアクセサリー系に入っており、きっとカルマは気に入ってくれるはずだ。

 カルマが気に入るのはアクセサリーだからではなく、蛍からのプレゼントだからだろうが。


 よく見回っていくと、どちらもペアとして売られているものがあったので、蛍は悩んでいたのだ。


「付けているカルマを思い描いてみればいいよ」

「どっちも似合ってて困るの」

「確かにな……」


 どちらも似合っている、という蛍の意見には同意だ。ブレスレットをつけている姿のカルマも、ネックレスをつけているカルマの姿もかっこよく想像できてしまう。


 どちらも買えれば話は早いのだが、金銭的な問題でそれは不可能だ。蛍は「もう少し貯金しとくべきだったなぁ」と悲しそうに嘆いていた。


「よしっ。ネックレスにしよっ」


 やがて、蛍は決断し、ネックレスの方を選んだ。


「決め手は?」

「何となく!」


 勢いよく、そう言った蛍は嬉しそうにはにかんだ。


 無事買い物を終え、帰宅になってもおかしくはなかったのだが、蛍が付き合ってくれたお礼に、と近くのカフェへと入った。


 初めて入るカフェに若干の戸惑いを感じながらもそれを気付かれまい、と振る舞う。学校の帰りは一直線に帰宅する翔にはなかなか新鮮な放課後だ。


 ただひとつ悔やまれるのはここに桜花が居ないことだろう。もし居れば、今よりももっと楽しい時間を過ごせていたに違いない。


「タイミングを逃してしまった翔くんに私からいいお話がひとつ」

「悪代官みたいな言い回しだな」


 両手をにぎにぎしているので、尚更悪代官のように思えてくる。


「聞くぅ?」

「……聞きます」


 にっこりと笑うだけで済ました蛍はいじらしく、訊いてくる。翔はごくりと唾を飲み、耳を傾ける。


「次の行事で何があるか知ってる?」

「期末テスト」

「そうじゃなくて!!行事!」

「行事?……あぁ」


 あまり考えたくない行事がひとつあったのを思い出した。

 期末直前にも関わらず、この学校では学校大会、簡単に言えばミニ体育祭のようなものが行われるのだ。その暑苦しい行事にあまり乗る気ではない翔は如何に何もせずに過ごすか、ということを目標にしていた行事だ。


 そのような運動をするぐらいなら期末の勉強に勤しむ方がマシだ。

 そう思っていた。


「今年はリレーと障害物競走をするんだって」

「僕には関係ないな……」

「翔くんは是非とも障害物競走に出て欲しいかな」

「何で?」

「いいからいいから」


 理由を話さない蛍に恨めしい視線を向けると、はぐらかすような笑みをひとつ、返し、手元にあった珈琲を啜った。


 翔も同じように啜ろうとしたところで、蛍がふと、呟いた。


「翔くんが出るなら桜花ちゃんが出てくれるから」


 危うく、噴き出しそうになったが、何とか口内で留め、睨みつけた。


 言うタイミングを確実に狙っていた。そう思えてならない。


「どうしてそこで桜花が出てくるんだよ」

「桜花ちゃんが頑張っているところをみんなは見たいの」

「桜花じゃなくても美人はここにもいるだろ?」

「そういう事を平気で言うものじゃないよ。う〜ん、桜花ちゃんは学校の有名人で、しかもまだ誰しもに彼氏になれるチャンスがある。私はもうカルマくんと付き合ってるし。……まぁ、たまにそれでも来る人はいるけど」

「た、大変なんだな」


 付き合ってる、と知られている人にいいよっていく、というのは翔としては考えられない事だったが、諦め切れない気持ちがそうさせているのだと思うと、ありえない、と切り捨てる訳にも行かなかった。


「私の話は置いといて!問題は翔くんと桜花ちゃんがどうすればお付き合いできるようになるかってこと」

「僕が頑張る」

「その成果は?」

「何もありません」


 翔は「何の成果も得られませんでした!!」と脳内で膝を着いて泣きながら叫んだ。

 立体機動装置を、使って空中を飛び回りたい。


「本人達が無理なら周りがサポートするしかないの!!」

「それで、障害物競走がどう繋がるんだよ」

「教えてもいいけど、翔くんが嫌って言いそうだから言いたくない」

「全裸で走る、とか花束持ってプロポーズとかあれば確かに嫌って言うな」

「花束持ってプロポーズは思い付いてなかった。それでもいいよ」

「嫌だって言ってるだろ」


 全く……。と翔は苦笑する。


 翔の脳内ロジックでは何をどうすれば告白の話から障害物競走の話が繋がるのかが分からない。だが、蛍はしっかりと道筋が立っているらしく、自信満々な顔をしている。


「桜花ちゃんにも聞いておいて」

「出る、とは言わなそうだけど」

「翔くんが「僕も出るから」って押せばいける」

「それで乗るかなぁ」


 翔が招いただけで来るとは思えなかった。


 翔は何事もなく終わると思っていた行事に恐ろしく面倒事が到来しそうで、今から大きなため息を吐いた。


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