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他人行儀になった幼馴染美少女と何故か一緒に住むことになった件  作者: 戦告
第3章「中学と高校は雲泥の差」
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第79話「お土産」



「ふぃ〜っ。大変だったな」

「お疲れ様でした」

「桜花もな」

「ありがとうございます」


 物凄く恥ずかしい間違いをしでかしてしまった翔であったが、桜花が何も言ってこないので、ほっと安堵したのが半分、関心がないのか、と少し不安になったのが半分の複雑な気持ちだった。


 翔達はお礼に、と黒川から異常なまでのテーマパークのグッズを渡されかけたのだが、翔が無理を言って王子様役をやらしてもらったのと、桜花が丁重にお断りをし、受け取りは辞退した。


 しかし、そうはいかぬ、と引かない黒川は翔達にこのテーマパークの3年間分のパスポートとこのテーマパーク内でのみ使える1万円券を渡した。


 翔はこっそりと耳打ちで、「結婚式はお待ちしております。ドレスは保存しておきますね」と言われてしまった。


 この若干暴走した感じは梓に似ている。


 翔は苦笑いのみで返し、荷が重い気持ちを表すかのようにため息をこぼした。


「これ使えるのかな?」

「確認は必要かもしれませんけど、使えると思いますよ」


 ひらひら、と1万円券を紙切れのように扇ぐと、桜花がひょいっと取り上げた。


「折角ですから、これでお土産を買いましょう」

「そうするか」


 翔も特に欲しいものはないので、頷く。


 お土産の商品が売られるところにやってくると、パレード終わりのせいで、やけに人が多かった。都会の満員電車ほど、身動きが取れない、という訳では無いが、ゆったりと買い物をするには少し息が詰まる。


「親とカルマ達ぐらい?」

「そうですね。何かいいものがあれば……」


 突如、桜花の身体がぐらりと、揺れる。翔は慌てて桜花の華奢な身体を支えた。


「大丈夫か?」

「大丈夫ですよ。少し身体が言う事を聞かないだけです」

「それは大丈夫ではないのでは……?」


 翔の腕に掴まりながら、見栄を張る桜花に翔は心配になる。

 人前で何かをするのはとても疲れる。人混みの中に溶け込むのもやはり、疲れる。翔は兎も角としても、桜花が疲労するのも無理はない。


「時間も頃合いですし、お土産を選び、帰りましょう」

「……しばらく掴まってろ」


 頑として譲る気のない桜花に翔は何とか疲労を緩和してやろうとした。何の手助けになるかは分からないが、桜花の軽い体重を支える。


「翔くん、一つ訊いてもいいですか?」

「何だ?」


 桜花はきゅっと唇を一文字にきつく結んだ後、意を決したように口を開いた。


「どうして私を止めてくれなかったのですか」


 翔は桜花の言葉が一瞬、何のことを言っているのか分からなかった。しかし、その後、あの姫と王子様を頼まれた時か、と思い当たる。


「止めて欲しかったのか?」

「止めて欲しかったです。翔くんは私がお姫様になっても良かったのですか?」

「お姫様になるのは別にいいと思うけど」

「む……」


 思い当たる節はあった。引き受ける前の桜花と視線が交差した時の何かを訴えるような目はきっとそれだったのだろう。


 桜花がご立腹のようで、腕に頭突きをしてくる。痛みはないが、可愛いやら微笑ましいやらで忙しい。


「僕は桜花の意思を尊重したかったんだよ」

「尊重されてません」

「今回はね。でも……」


 意思を尊重、なんて欺瞞だろう。あとから思いついた体のいい言い訳。

 翔は嘘でもないが純粋な真実でもないことを口走った。それが許されるのか、許されないのかを問われた時、きっと答えは許されないのだろう。


「でも、何ですか?」

「いや、それはまた今度でいいや」


 そんな風に誤魔化す。

 桜花はじとっとした目を翔へと向ける。


「代わりに桜花の問いの答えを言うよ」

「はい」

「ドレス姿を見たかったから」


 じとっとした目から、驚きの表情へと変わった。翔が止めなかったのは止めても聞かないだろう、とも思っていたからだがそれ以上に桜花のドレス姿が見たかったからだ。


「でも……あの時には王子様は……」

「そうだな。あの時は確かに王子様は僕じゃなくてちゃんとした人がすることになっていた」

「それでもですか……?」

「それでもじゃないから、現実はこうなったんだよ」


 あまりに独特な言い回しに、桜花は初め、きょんとしていたが、やがて理解したのか柔和な笑みを浮かべて目を細めた。


「さっきも言ったけど、僕は傍にずっといるから」


 たとえ、桜花が翔を何とも思っていなくとも。後に続くこの言葉はぐっと飲み込んだ。


 桜花は何かに悶えるようにぐーっと唇を噛み締めた。そして、翔の胸をぽこぽこと叩く。


「翔くんは卑怯です。私の知らない間に王子様になっていたり、急にそんな言葉を言ったり」

「……ごめん」


 自然と紡がれた言葉は謝罪の言葉だった。桜花は翔の頭を優しく撫でた。


「でも、そんな翔くんはかっこいいですよ」


 さすりさすり、と撫でられる翔は思わず「卑怯だ」と呟きそうになった。その落差は反則だろう。


「傍にいてくださいね、王子様」


 翔は当たり前だ、と言わんばかりに頷いた。


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