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他人行儀になった幼馴染美少女と何故か一緒に住むことになった件  作者: 戦告
第3章「中学と高校は雲泥の差」
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第78話「特等席ですよ」


 パレードが始まる。

 本当ならば今頃、人混みに塗れながらも二人で見ていたはずのそれはいつの間にか叶わぬものになりそうだった。


 桜花は着替えを終え、ドレスを着ていた。

 ひっそりと盗み見た桜花の姿は息を呑む程に美しかった。


 薄い青色が基調のドレスは桜花の為に作られたと言っても過言ではないと思えるほどに桜花の魅力を存分に引き出している。何と、入念なことにベールまで作られていた。


 結婚式と見間違えるのも仕方の無いことかもしれない。そんなことを思う程に翔は桜花に見蕩れていた。


 対して自分は、と。


 着ている服があまりにも似合ってない。馬子にも衣装、という諺がぴったりの状態だった。


 だが、そうは言っても、これ以上変えようが無い。服を変えることは出来ないし、顔の作りを変えるのは更に無理な話だ。


(パレードは特等席何だけどな)


 白亜の城から見るパレードは目線がいつもとは違い、新鮮で、どこか気持ちが乗ってくる。


 ここは穴場だな、次回もここで見よう。

 何て不可能なことを考えてしまうほどに景色が良かった。ここにいるのは全くの偶然、たまたまであり、翔は桜花のおまけ程度に過ぎない。いや、求められていないのでおまけとすら言い難い。


 求められないおまけはただの要らないものだろう。


「そろそろです。スタンバイお願いします」


 黒川の声が響く。女性なので尚更だ。

 桜花が深く頷き、真剣な顔つきになった。しかし、その顔はどこか緊張が勝りすぎていて、気負いすぎているような気がした。


 桜花は好き好んでやっている訳では無い。だから、翔はもっと楽にしてもいいと思うのだが、桜花はその事さえ考えられていないかのように自分の世界、ドラゴンボールで言うところの「精神と時の部屋」に入ってしまった。


「響谷くん、ごめんね」

「こちらこそ、無理を言ってすみません」


 翔はお世辞ではなく本心から礼を述べた。

 黒川は翔の背中に気合いをバシッと入れた。


「カップルだもんね!こちらも応援するよ」

「あはは……」


 カップル疑惑だったのが、確定になってしまっていたことに乾いた笑いが漏れた。


 頼みを聞きいれてくれた時にそういう解釈もできるように言ってしまった翔の責任でもあるのだが、もう会うことは無いだろうと、大見得切ってしまったのだ。


 黒川の後ろでは快諾してくれた人が親指を突き出してウインクしてきた。


 翔は心の中で「人」を500回ほど飲み込み、緊張を捨てる。


「始まります!」


 黒川の叫びに応じて翔は桜花に近付いた。

 桜花は一足先に、パレードを見に来た人の注目を集め、にこやかに手を振っていた。


 まるで本当のお姫様のようだ。翔は幻聴ではあるだろうが、下から感嘆の声が漏れ出たのを聞いた。


「よう、姫」

「……」


 翔が呼び掛けながら桜花の隣に並ぶ。桜花はあまりに突然なことに茫然自失としていた。


 それも無理はないだろう。桜花は翔がまさか王子様として出てくるだなんて思ってもいなかったのだから。


 タキシードにも似たぱりっとした服装に白いマント。着る人が着れば様になるであろうことは容易に想像できる。翔がギリギリこの服を着て成り立っているのは急遽ではあったが、髪をセッティングして貰ったからに他ならない。


「ちょっと笑顔が固いぞ。それに指が震えてる」

「どうして……翔くんが……?王子役は居ますと聞いていたのですが」


 翔に指摘され、指は見せまい、と隠した桜花は困惑した顔で訊ねた。


「頼み込んで代わってもらった」


 翔が頼み込み、それを快諾してGoodポーズで送り出してくれた人こそ、今回の王子様役の人だ。


 頼む時の事は今となっては黒歴史に近いものがあるので、思い出したくは無い。


「ふふ、無茶しますね」

「確かに無茶だったかも。足が震えて止まらない」


 茶化していってみたはいいものの、冗談では済まないほどに足はガクガクと震えていた。


「私は止まりましたよ」


 どや、と言わんばかりに桜花は手を出し、翔に見せつけた。そこには確かに震えはなかった。


「どうしてか分かりますか?」

「……あ、止まった」


 翔は桜花の問いに答える。桜花が訊ねてくる前に、翔は何となく理由を察していた。


「桜花と一緒だと思ったら止まったよ」

「……私もです」


 自ずと差し出した手が絡み合っていく。深く密着していく形。


 空いている方の手は空中を行ったり来たりさせる。小さい子供の中には手を振り返してくれる子もいた。


「桜花」


 翔は名前を呼び、急に片膝をついた。付け焼き刃ではあるがレクチャーをして貰ったのだ。カッコ良さはやや欠ける気がしないでもないが、様にはなっていた。


「翔くん」


 この先の展開は衝撃を受けたためしっかりと脳裏に焼き付いている。桜花も同じようで、その時が来たのか、と確かめるように翔の名前を呼ぶ。


「僕は桜花の傍にずっといたい。どんな事があったとしても」


 本当のセリフは「月夜に輝く〜〜」と気障なものだったのだが、全て飛んでしまって本心が出た。


「私でよければ永遠に。私の王子様」


 にこり、と微笑みを向けてくれた桜花の手の甲にキスを一つ落とす。


 恐る恐る桜花の顔を伺うと恍惚な表情をしていた。きっとこの顔を見せるのは翔の他にはいないだろう。


 マントを華麗に翻し、桜花をエスコートしながら、翔は白亜の城へと戻った。


(あ、「桜花」じゃなくて「姫」じゃん!)


 緊張感が完璧に抜けた後に翔は間違いに気付いた。


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