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他人行儀になった幼馴染美少女と何故か一緒に住むことになった件  作者: 戦告
第3章「中学と高校は雲泥の差」
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第76話「ピンチヒッター」


 しばらく休憩した後、ぶらりぶらりと歩いていると、目の前に大きな城が現れた。


 城、と言っても日本式の戦闘に特化した城ではなく、ミッキーマウスの夢の国にある、シンデレラ城のような、美術的な城だ。因みにシンデレラ城は東京とアメリカだけらしい。


 このテーマパークは今年に5周年を迎えるらしく、城は綺麗に着飾られており、美しかった。


「綺麗ですね」

「夜にパレードがあるらしい。その時に花火もあるからもっと映える」

「パレード」

「嫌いだったか?」

「いえ、好きですよ。でも翔くんが知っていたのは意外です」

「桜花が好きそうだと思って調べただけだ」


 翔自身は好きでも嫌いでもない、つまりは興味があまりないと言った感じなのだが、それは言わなかった。


 翔が唯一調べたのはパレードについての事だった。桜花にどうしてもその景色は見せてやりたい、と思っていたのだ。


 その努力は功を奏したらしく、桜花はその姿を想像してうっとりしていた。


 微笑ましいその様子にふと口元が緩みそうになってしまうが、何とか噛み殺し、翔はスマホの画面に映る、時間を見た。


 あと一時間ほどでパレードは始まる予定になっている。場所取りをするには少し時間が早い。

 何をして時間を潰すべきか、と思案していると、桜花が手招きしてきた。


「まだ時間があるけど」

「写真を撮りましょう」


 スマホを片手ににこにこ、と微笑む桜花に苦笑しながら頷く。


 桜花からスマホを受け取り、一枚撮る。その後、翔と場所を交代して、一枚撮られた。


「二人の写真も撮っておきましょう」

「じゃあ僕が撮ろう」


 桜花よりは腕が長い翔がカメラとの距離を摂る為にそう申し出た。桜花は頷いて、翔にスマホを渡す。

 最大限まで伸ばし、スクリーンを確認するが城を全て入らないし、何より桜花が見切れてしまっていた。


「もう少し寄ってくれ」

「こうですか?」

「もっと」

「こう……ですか?」


 翔がふと、我に返り、よくよくスマホのスクリーンを見ると、翔の肩口に桜花の顔が乗っていた。

 ふわり、と風に乗った桜花の甘い匂いが翔の鼻腔を擽る。


 近くに寄れ、と言ったのは翔なので、離れてくれとも言い難い。自撮り棒を持ってくればよかったのだが、今更言ってももう遅かった。


「撮るぞ〜。笑え〜」


 努めて桜花の事を極力考えないようにして、翔は調子よく言った。


「翔くんも笑ってください」


 桜花がスクリーン越しで翔の表情を見たらしく、指で頬を強引に上げてきた。


 先程よりも近い距離に否が応でも反応してしまう。


 翔はスマホを持っていない方の手で桜花の手を自分の頬から剥いだ。あの様子を写真に収める気はない。


「はい、チーズ」


 写真を撮る際のお馴染みの掛け声を言いながら翔がシャッターを切ろうとした時、腕に衝撃が走った。


 取り繕うように浮かべた笑顔が跡形もなく消え去り、心底驚いたような表情へと変わる。不幸にもその瞬間を待ちわびていたように、写真は撮られた。


「近くに寄らないといけなかったのでしょう?」


 悪戯が成功してご満悦のような顔を見せる桜花の声はすぐ近くから聞こえる。


 そう。


 写真を撮るあの瞬間に桜花は翔の腕に自分の腕を絡め、密着した状態で記録に残したのだ。


 柔らかな感触が伝わってきて、羞恥心で真っ赤に顔を染めた翔は振り払う事もできない。


 ただ惚けているばかりだった。


「いい写真ですね」

「あぁ……」


 翔の手からスマホを取り、確認した桜花が嬉しそうにしている様子を見ながら、翔は返答にもならないような生返事を返した。


 どうして桜花は写真を撮り終わった今でも自分の腕にくっついているのだろうか。


 答えは何となく分かっているものの、そう思わずにはいられなかった。手を繋いだり、抱き締めたりした事はあるが、腕にくっつかれるというのはそれらよりも難易度が高いように感じられる。


 堪らず火を吐いてしまいそうだった。


「翔くん」

「……何だ?」

「暫くこのままでいいですか?」

「……嫌なら振りほどいてる」

「……ありがとうございます」


 桜花も途中から自分の言葉がどれほどまで攻めているのかが分かったらしく、感謝の言葉は照れて、小さくなっていた。


 翔はいつもの思考回路が全く働かなくなり、雰囲気に呑まれていた。


「カップルさんですか?」


 どこか異質な空気を破壊したのはこのテーマパークで働いているであろう、可愛い制服に身を包んだ女性だった。


 傍から見れば確かにそうかもしれないが、まだ翔はお付き合いの申し込みをしてもされてもいない。翔と桜花の関係の説明をどうしたものかと悩んでいると。


「ごめんなさい、初対面の人にそんなこと聞かれても困るよね」

「いや、まぁ」


 困ったのは確かなので、曖昧な返事ながらも否定はしなかった。ただ、制服のおかげなのか初対面というには見慣れていて何だか不思議な感覚だった。


「少しご協力頂けないでしょうか」


 先程は会話の前座だったらしい。

 前座に気を遣って損した、と翔は心の中で愚痴をひとつ零した。


 アンケートか何かの集計だろう。

 テーマパーク関連の場所では雰囲気から大事にしていくため、来場者にアンケートをするのは少なくない。


 だが、女性から紡がれた次の言葉は予想に反したものだった。


「王子様とお姫様になってくれませんか?」



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