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他人行儀になった幼馴染美少女と何故か一緒に住むことになった件  作者: 戦告
第3章「中学と高校は雲泥の差」
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第75話「気概が試される時」



「今のところ何とか進めてるな」

「止まってしまった方が怖いですもん」

「まだ笑ってるのか」


 虚勢を張った声色とすっかり引き攣ってしまった顔を桜花へと向けると、桜花はくすくす、と面白そうに笑っている。


 笑っている理由はおそらく、翔の悲鳴がおかしかったのだろう。自分でも「ひゃあ」という、女の子めいた悲鳴が出るとは思いもしなかった。


「順調とは言えませんけどね」

「急に驚かしてくるのは好きじゃない」

「急ではなければ平気なのですか?」

「急ではないのも……無理だな」


 からかってくる桜花に翔は素っ気なく返した。


 暗闇という、不安を煽る雰囲気の中で、大声をあげられたり、轟音が鳴り響いたりすると、細部まで行き渡らせていた緊張が一気に警鐘を鳴らすのだ。


「逆に桜花は平気そうだな」

「大体出てきそうなところは予想が着くので、身構えておけば耐えられます」

「身構えておくのか」

「無防備だから必要以上に驚かされるのですよ」


 どうやら平気という訳では無いらしい。

 桜花は翔とは違い、場所によって警戒しているため翔ほど、驚きは少ないようだ。


 毎度思うが、どうして二人とも苦手なアトラクションに乗っているのだろうか。


 翔は永遠の謎になるであろうその問いに深いため息を心の中で吐いた。


「まだ中盤?」

「そろそろ終わる頃だとは思いますが……。そこの井戸と廃車の後ろにいそうですね」

「危機察知能力が反応しているのか」

「ただの直感ですけど」


 翔は桜花の言葉に戸惑いと期待を込もった目線を向けた。


 本当に桜花の予想を当っているのだろうか。当たっていればそこに警戒するだけでよく、耐えられる気がする。しかし、そうしてしまってはこのアトラクション本来の楽しみを無くしてしまっているような気もする。


 そんな目線だった。


 そしてその視線を井戸へと向け直すと、機械で操られているであろう血塗られた人形が飛び出してきた。


 若干びくっとして後ろに一歩引くと、待ち構えていたかのように、廃車の後ろから窓を突き破って拳と轟音が鳴った。


「よく分かるな」

「雰囲気で何となく、ですけど」

「それでも凄いと思う」

「……」


 ここまで的確に当てれる、というのは控えめに言っても凄いことだろう。それだけ危機感を感じられる、言い換えれば第六感とも呼べるそれがあるということと同義なのだから。


 桜花は翔の腕をペしっと叩いた。全く痛みはなく、翔も何かしらの八つ当たりであることは理解していていたのでとやかく言いはしなかったが、何故だろうか、と首を傾げた。


「そんなに褒めないでください……」

「事実を言っただけだぞ?」

「誇張表現が入ってます」

「凄い、って言っただけだぞ」

「それでもです!」

「わ、分かったよ。次から気をつける」


 桜花の気迫に押されて、ついそんな事を口走ったが、何に気をつければいいのか分からなかった。


 翔がう〜む、と頭を捻っていると、翔の肩につんつん、と刺激を受け、呼び止められる。


「何だ?」

「何ですか?」

「今、僕を呼ばなかったか?」

「いいえ、呼んでませんよ」


 翔は狐に包まれた気持ちになった。

 とりあえず、桜花の両手を握り、桜花がしたのでは無い、と確証を得ることにする。こてん、と首を傾げていた桜花があどけない表情をしていた。


 その時と同じくして、翔の肩に再び刺激が加わる。


 桜花の手は翔がしっかりと握っているので桜花がしたのではない。


「桜花」


 翔は桜花の耳元で名前を呼んだ。桜花にだけ聞こえるような囁き声だ。


「ひゃい!な、何ですか」

「逃げるぞ」


 桜花が顔を真っ赤にしているのには触れることなく、翔は後ろを振り返った。


「ひゃっ?!」


 後ろに居たのはやはり血塗られたものだった。ただ違うのはそれが動いていること。


 桜花の小さな悲鳴を聞きながら、翔は無意識に桜花を守ろうと手を広げていた。


 驚きと恐怖に支配され、声を出すこともままならなかったが、隣に桜花がいることを思い出すことでどうにか自我を保ち、手を引いて駆けだした。


 ただ向かう先は光が眩しいこの世界からの出口。もうコンセプトやらガバガバだった設定などは頭から離れて空の彼方へ消えていっていた。


「翔くん!追ってきてます」

「よく振り返られるな?!怖すぎだってこのアトラクション!!」


 桜花の胆力には恐れ入ったが、物騒なことは言わないで欲しかった。

 翔の悲痛な叫びが轟き渡る。


 視界が開けて、逃げる速度を弛めた時には出口をすり抜けていた。


「一生分怖がったよ」

「私もです……」


 全力ではなかったが、緊迫感によってそれと同等ほどの体力を使ったので翔はもとより、後を付いて行った桜花でさえ、肩で息をしていた。


「お疲れ様」

「お疲れ様です」


 二人で視線を合わせて、そんなことを言い合った。それから、どちらからともなく笑い始めた。


 怖がった反動で笑いが止まらなくなったのか、「お疲れ様」とお互いが変に労ったのが不自然で面白かったのかははっきりとはしなかったが、翔は漠然とどっちもだろうな、と思った。


 あと、アトラクションに乗るのはいいが、これから乗るものはあまり激しい疲れるようなものは避けて欲しいと願った。




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