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他人行儀になった幼馴染美少女と何故か一緒に住むことになった件  作者: 戦告
第3章「中学と高校は雲泥の差」
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第74話「ホラーマンション」


「次はあれに行きましょう」

「げ」


 翔が変な声を出したのも無理はなかった。桜花が指し示している建物は最近のホラー界隈を賑わせているとあるアトラクションだったからだ。

 日本一怖いと評判のそれは怖いものにとりわけ強い訳でも無い翔はお近付きになりたくないアトラクションだ。


「自分を痛めつけるのが好きだな」

「流行りに乗るだけです」


 恨めし気に言うと、サラッとしたものが返ってきた。猫耳の相乗効果もあって、ツン、とした猫のような印象を受けた。


「なぁ、しかもこれって自分で歩いていくタイプのやつじゃなかったっけ?」

「スリル満点!だそうです」


 桜花はうじうじしている翔にパンフレットを見せつけた。そこには見間違うことも無く、しっかりと「スリル満点」の文字が刻まれていた。


「他のを行った方がよくないか?待ち時間が……」

「一時間ほどではないですか。翔くんと話していればすぐですよ」

「うん、まぁそうなんだけど」


 翔が言いたいところはそこではなかったのだが、残念ながら論破されてしまい、黙るしか無かった。


 仕方がない、と覚悟を決め、翔は桜花と共に並ぶ。


 すると、翔が素直に並んだ事に驚いた様子の桜花。翔が「どうした?」と訊ねた。


「もっと粘るのかと思ってました」

「僕を一体何だと……」

「何でしょうね」

「まぁ、ひとつ言えることとしては「粘る」ってことは僕が何を言おうとも他に変える気はなかったということだ」

「だって……私は翔くんとこれに行きたかったのです」


 少し照れた様子で言う桜花はとても可愛いかった。その破壊力抜群の表情に危うく理性を持っていかれそうになったが、何とか堪えた。


「なら、このアトラクションについて教えてくれ」


 はぁ、と色々意味の籠ったため息をつき、翔は桜花に頼んだ。桜花がそこまで言うからには面白いのだろうし、事前に調べているだろうと確信に近く思っていたからだった。


 そしてそれは間違いではなかったらしく、桜花はにっこりと嬉しそうに微笑み、口を開いた。


「このアトラクションのモチーフは出られなくなった高級ホテルです。ある日に起こった火災が原因で宿泊者は勿論、従業員も脱出不可能になってしまい、そのまま亡くなってしまいました」

「昨日だったら、不安で寝られなかったな」


 翔がぽつりと呟いて、笑うとと、桜花もそうですね、とつられて笑った。

 翔に関しては桜花が気になって同じく眠れなかった訳だが。


「その火災が起こった日から数日後、このホテルを訪れ、中に入ると」

「白骨化した遺体が見つかったのか」

「いえ、遺体すらなかったそうです」

「全員?」

「全員です」


 遺体すらない、というのは少しおかしなことではないだろうか。いくら火災とはいえ、骨ぐらいは残るだろう。しかも、桜花の話では宿泊者と従業員という事だったので、結構な人数がいたはずだ。


 翔がそこまで思考を深くさせていると、こほん、と咳払いが聞こえる。


「不思議に思ったので、その人はどこかにいないかな、と探しましたがやはり、見つからなかったそうです」

「ま、そうだろうな」

「しかし、問題はそこではなかったのです。その人が一度探した箇所をもう一度調べようとすると、扉が開かなくなっていたのです」

「一度開いていた扉が二度目は開かなくなったのか?」


 桜花が再びパンフレットを見せてくる。それを覗き込むと、確かにそういった感じの内容が書かれてあった。


「その人はその現象を日記に残し、私達に託しました。そして、私達はその謎の現象を調べに行くのです」


 色々とツッコミたいところは多数あったが、概要としては充分と言えるだろう。この先の展開も想像できないことは無いが、それを口に出すのは楽しみを半減させてしまうだろうと思い、口を塞いでおいた。


「僕達はその人の弟子みたいな感じかな」

「そうだとすれば、師匠からの謎を解き明かして、無事に帰るまでがミッションですね」

「倒壊するかもしれないしな」


 冗談めいた様子でそう言うと、桜花はその可能性を微塵も思っていなかったようで、はっとしていた。


「盲点でした……。でも、幽霊さん達が居るので何とか保ってくれているのではないでしょうか」

「幽霊さんって言っちゃったよ……」


 翔の言葉に桜花は慌てた様子でおろおろしていた。幽霊の件は黙っておきたかったらしい。

 慌てふためいている姿は見ていて大変微笑ましかったのだが、翔は桜花の頬をぷにっと人差し指でさした。


「何ですか」

「慌て過ぎだよ。ここまで来てやめようとは流石の僕も言わないよ」


 桜花はぷにっとさしている翔の人差し指を両手で掴み、ぺいっと放り投げた。

 照れているのは丸わかりだったが、からかいはしなかった。


「なら最後まで付き合ってもらいますからね」

「そこまで怖くありませんように……!!」


 翔は願い、桜花は翔の手を引いた。


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