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第48話「そわそわします」


 蛍は今日も桜花の席へと遊びに来ていた。ここ何日かはずっと詰め込んで訪れているような気がする。


「やっはろー」

「蛍さん……」


 蛍の人懐っこい性格にすっかり当てられてしまった桜花も段々と打ち解けているようで、学校ではあまり見せてこなかった微笑を浮かべている。


 その光景を見て、翔は一言。


「俺ガイルか?」

「大老師は俺な」

「おい」


 俺ガイルの主人公である比企谷八幡はとある国から「大老師」の名が贈られている。


 老師は教師、先生と言った意味なので、それ以上であるということだ。


 どちらかと言うと友達の多いカルマは大老師では無い気がしたが、そこまで大事なことでは無いので深くは訊かなかった。


 大老師抜きにしても、目前の光景は華があった。


 桜花の初めての友達は蛍になりそうだった。


「二輪の花が咲いてますなぁ」

「近くまで来たのはそれが狙いかよ」


 カルマが風流だ、とでも言うように呟く。

 カルマは蛍が桜花の元に訪れるので隣の席である翔の所へと来る機会が多くなった。


 喜ばしいのかそうでないのかを問われると複雑なところだが、カルマも必死なのだろうと推測する。


 蛍以外に桜花へと話しかけに来る女の子は今のところはいない。


 男子達からのカルマのような目線を気にしなければいいシチュエーションだと言える。


「話しかけには行かないのか?」

「こういうのは傍で見守ってるのが一番いいんだよ」

「ふーん、そういうものなのか」


 カルマの信条なのだろう。

 確かに、こうして顔立ちが整った2人が談笑しているところを見るのは何だかとても癒される。


「それに、どうしていいか分からないし」

「そっちが本音だろ」

「ま、そうとも言う!」


 九割九分程、そちらだろう。

 気になる人に話しかけるというのは案外緊張するものだ。


 翔に関しては元々が幼馴染であったことと、同じ家に住んでいるため、そのような緊張はない。……たまに心奪われる時があるが。


「放課後、デートに誘ってみるとか」

「で、デートっていうな!まだ付き合ってない!」

「『まだ』って付き合う気満々だな」

「うるさい」


 翔がからかうとカルマは不貞腐れたように口を尖らせた。


 あまり大きな声で言うと、隣にいるので聞かれてしまう。翔はその事を思い出し、少し声量を落とす。


「大人気の天使ちゃんなんだぜ?その気がないのは翔ぐらいだぞ」

「……ふん」


 蛍はクラスの中心的な存在で平和の象徴のような扱いを受けている。彼女がいれば大抵のいざこざはどうでもよくなるのだ。


 勝手に命名した「天使スマイル」は何度男子達の心を奪ってきたことか。


 須藤に関しては全く効かなかったようだが。


「翔にも効いてないぞ」

「地文を読むな」

「シンパシーを感じた」

「ったく……」


 翔は本当に綾瀬蛍に関して、何一つ気がない。それは他に気になる人がいるからで、カルマもわかっててそれを言っているのでタチが悪かった。

 からかいにからかいで返された。


「まぁ、翔に……」

「うるさい」

「まだ途中までしか言ってない」

「充分うるさかったぞ」

「酷いッ!」


 およよ、と泣き真似をするので、軽く叩いた。

 お巫山戯の延長だと互いにわかっているので、顔を見合わせて笑いあった。


 その先は絶対に何があろうと口に出させる訳には行かない。

 そんな翔の信念を先程のシンパシーみたく感じたのか、それ以上は言わなかった。


「ゴールデンウィーク暇?」

「5日と6日以外なら」

「翔の家に遊びに行ってもいい?」

「え」


 しばらく笑いあったあと、カルマが家に遊びに行ってもいいか、と訊ねてきた。

 一人の時ならば即答したのだが、脳裏を過ったのは桜花の事だ。呼べば何より桜花と一緒に暮らしていることが明るみに出る。


 別にやましいことなど一切ないが、誤解を招きそうなので言うのは憚られる。


「決まったら連絡してくれよ」

「ん?あぁ」


 一応、といって、カルマは自分の連絡先をメモ帳に書いて翔に渡した。

 メモ帳を常備携帯していることに感心した。


 言葉を濁したことを親の認証がいる、と勘違いしたであろうカルマに翔は頭を悩ませた。


「いい返事を期待しているぜ」

「カルマもな」


 恋愛事情でも、いい返事があることを祈るばかりだ。


 悩んではいたがそれを表面に出すことはなかった。


「あそこのパンケーキは美味しいの」

「それは是非、行ってみたいものです」

「そう?!私も桜花ちゃんと一緒に行きたいな」

「構いませんよ」

「やった!今日の帰りとかいってみる?」


 桜花は驚いた顔を見せた。

 それにいち早く気づいた蛍はどうしたの?と訊ねた。


「いえ、ゴールデンウィーク中の話かと思いまして」

「あっ!そうだね。そっちの方がいい?」

「時間はそちらの方が沢山ありますし」

「うん、休みの日の方が長く遊べるしね!」


 蛍が嬉しそうに微笑んだ。

 その時にカルマを見ると、これはダメだ、と翔が心の中で思うほど、表情が緩んでいた。


 デレッデレであった。


 蛍はふと思いついたように手を叩いた。


「桜花ちゃん、今度遊びに行ってもいいですか?」

「はい?」


 隣でそんな会話が聞こえてきたが翔は幻聴であることを願った。


 思わず吹き出しそうになり、カルマに訝しげな目を向けられたが、何とか誤魔化した。


 桜花が周りに悟られないようにこっそりと翔を盗み見る。困ってます、助けてください、と目で言ってくるが、翔にはどうしようも出来ない。


 目線で一応、先延ばしにしてくれ、と送ると桜花は「えぇ構いませんよ」とあろう事か快諾した。


「マジか……」


 今年のゴールデンウィークは桜花と旅行行ったり、カルマや蛍が遊びに来たりと忙しない予感がした。


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