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他人行儀になった幼馴染美少女と何故か一緒に住むことになった件  作者: 戦告
第6章「恋と愛とカップルと夫婦」
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第189話「お祭り」


「さぁ何するよ?」

「確かにいっぱいあって、どれから回ればいいか悩むな」

「初めて来ました」

「そうなの?!楽しいから楽しみにしといてね!」


 何気ない会話を挟みながら、出店の前を歩いていく。翔もそれなりに見た目を整えたので、四人をひとまとまりとして見られているはずだ。


 すれ違う人達のほとんどが、翔達が過ぎたあたりで振り返っている。

 ような視線を感じる。本当は振り返ってどれほど注目を集めているかを見てみたいが、予想以上の人に見られていた場合に耐えきれないような気がしたのでついヘタレてしまった。


 特に注目を集めているのはやはり桜花だろう。カルマに訊ねれば蛍だ、と答えそうだが、お淑やかさで言えば断然に桜花に軍配が上がるし、男性女性問わずに誰しもがその美しさに惚れていた。


 蛍は男性受けがよく、彼女連れだった彼氏さん達は「あたっ?!」「いたっ?!」とすれ違ってから叫んでいた。


「とりあえず勝負しようぜ」

「何の勝負?あと勝負といったからには何か賞品か罰ゲームがあるのか?」

「勝負に対して厳し過ぎだろ……」

「翔くんは勝負事にはとことんまでに弱いので」

「桜花……?それは言っちゃダメなやつ」


 翔が勝負事に弱いのは産まれた時から言っても過言ではなく、これまでの大事な勝負、そこまで大事では無い勝負、その他諸々全ての勝負と名のつくものは全て負けてきた翔である。


 ここまで来ると最早、勝負の神のいたずらなのではないかと思ってしまう。


 そして、そこまで思考が辿り着くと、今度はどうしたら勝負を回避できるのかを考えるようになる。

 翔はそこでこの厳しい設定を突きつけているのだ。


 そうすることで生半可な勝負は避けることが出来る。


「賞品と罰ゲームは選ばせてやるよ」

「桜花から聞いて調子に乗るんじゃない」

「勝負事は射的でどうだ?」


 しかし、カルマはそんな翔の思惑など露知らず、あまつさえ賞品と罰ゲームの指定は翔に委ねてきた。


 しかも勝負内容は射的と悪くない。得意ではないが、不得意でもない。調子が良ければ当たるし、悪ければとことん出来ない。


 カルマの実力がどの程度なのかは分からないが、乗ってみたくなった。


「よし、乗った。勝者には国民的アニメの最終回みたいに全員からおめでとう、と言われる」

「……罰ゲームは?」

「負けた方の彼女に決めてもらう」


 翔がそう言わざるをえなかったのは蛍がちらちらと視界に入ってきて、訳知り顔で見てくるからである。

 明らかに混ぜてくれ、と言っているのがわかったので仕方なく罰ゲームはこのように決めたのだ。


 翔自身は罰ゲームを決めろ、と言われても何一つ思い浮かばなかったので、別に構わなかったのだが、代わりに桜花にくいくいと浴衣を引っ張られた。


「私が決めるのですか?」

「ちょっと?!どうして僕が負けること前提になってるの?」

「もし私が統計学を履修していれば……」

「そうだね!確かに負け数しかないけどね?!」


 しかし、信じてくれてもいいのではないだろうか。

 そんな翔の思いとは裏腹にもう翔が罰ゲームを受けるものだと思っている桜花は必死に何事かを悩んでいた。


「できるだけ軽い罰になるように頑張ります」

「……う、うん。よろしく」


 とても複雑な心境だった。

 罰ゲームを受けるつもりはなく、むしろ勝つ気でいるので、そんな心配はいらない、と払い除けてしまいたかったが、どうしても万が一を考えてしまうと、軽い罰を設定して貰えると助かるのは助かるので何とも返事がしにくかった。


「的はどれでもよくて、何かを落とせたら勝ち。どちらも落とせた場合、大きい方が勝ち、でいいか?」

「うん、いいよ」


 翔達は射的のおじちゃんに小銭を渡し、マスケット銃を受け取る。

 桜花は手を離す時に、頑張れ、と言っているように背中を押してくれた。カルマ達は名残惜しそうにしていたが。


 別に終わったあとにもう一度し直せばいいと思うのだが、また段階がリセットされてしまうのかもしれない。


「俺が先するぞ」

「どうぞ」


 翔は大人しく先攻を譲った。

 カルマの銃と翔の銃は同じ。つまりは先に失敗を見て、弾道や威力を模索できるということでもある。


「どっちが勝つと思う?」

「本人達が聞こえているところでそれを言うのはやめておきます」

「おっ!桜花ちゃんが解説者っぽい」

「蛍は実況者ってところか?」

「カルマくんは集中する!ちゃんと勝たないとダメだからね!」

「ほいほい」


 ふと、カルマの纏う雰囲気が変わった。

 優しく面白い、人のツボを浅くするような雰囲気から一気に勝負師の顔つきになり、空気が張り詰められる。


 実況者になっていたはずの蛍でさえ、何も言うことが出来ず、ただ固唾を飲んで見守っている。


「……落ちろ」


 カルマは引き金を引いた。

 狙いはよく、獲物に当たるが、重いのか落ちない。


「進撃か?」

「それは、落ちて」


 少し遅れて翔がボケる。

 そのボケに返す時には先程の空気は霧散していた。


「僕にあの空気を作れと言われても無理だからな?」

「あの空気って何の事だ?」

「あー無意識ならいいや。きにしないことにする」


 翔がカルマと場所を交代する。


「蛍さん」

「知ってたよ。私の好きなところでもあるの」

「呼吸することを忘れさせられました」

「そうでしょ?あの時の瞳に見つめられたらドキッとしちゃうの」

「あのー蛍さん?全部聞こえてるんだが?」

「ん?わざと」


 えへー、と微笑む蛍にカルマは仕方ないな、とばかりに微笑み返した。


 ……。


 翔の番なのだから、もう少し期待して欲しい。



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― 新着の感想 ―
[良い点] こういう勝負なら、勝っても負けてもおいしいと思いますよ。 [一言] 泥仕合にさえならなければ、好感度は下がりませんし。
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