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他人行儀になった幼馴染美少女と何故か一緒に住むことになった件  作者: 戦告
第6章「恋と愛とカップルと夫婦」
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第188話「俺達も自然に」


「ナチュラルに手を繋いでんだな」

「もう自然体だよね〜。羨まし〜」


 出店で作られた道を歩いてしばらくしたあたりで、ようやく翔達が手を繋いでいることに気が付いたのか興味が湧いたのか、カルマ達が話題を振り始めた。


 羨ましいのならば蛍達もすればいいのに、と思うのだが、それをしないということは何か理由があるのだろう。


 その理由を知らない以上、翔がとやかく言うのはよろしくないような気がしたので、黙っておく。


「蛍さん達も手を繋いだらいいと思います」


 翔が黙った代わりに桜花が言葉に出した。

 カルマ達は桜花の言葉を聞いた途端にお互いが顔を見合わせてもじもじと恥ずかしそうにしている。


 蛍がもじもじしているのは男としてぐっとくるものがあるので別に構わないのだが、カルマはもう少し男らしく決めるべきだと思う。


 翔がカルマにじとったした圧を込めた視線を送ると、カルマはぎくっと肩を反射させた。

 視線だけで「行け」と伝えるのだが、無理だと返って来る。


「私達はその……まだ」

「?」


 桜花は蛍達の羞恥心を勘づくことなく、不思議そうな顔を浮かべていた。


 翔はここでどうしようもなく、煽りたくなってしまった。


 こういう触れ合いは男性から行くべき、というのが翔のポリシーであり、目の前でしかも知人がポリシーに反するようなことをしていると口を出してしまいたくて仕方がない。


「カルマ?」

「な、何ですか?我がまマスター」

「わがままスターってなんだよ、星かよ。ってそうじゃなくてだな、カルマ達は別に手を繋ぐことを恥ずかしがるような段階ではもうないだろ?」

「その段階なの!毎日リセットされる仕様なの!」

「何だそれ。ちゃんとレポート書けよ」

「ジムバッチ六つでやめたな」

「せめてクリアしろよ」


 カルマと話しているとどうしても話題がずれていってしまうのだが、今回は蛍も入ってきた。

 桜花はリセットの辺りから疑問符を頭に浮かべていた。


 何ですか、それ、と視線で訊ねてくるので、何も言わずに頬をつついておいた。

 ふにふにと柔らかな弾力だが、その中にしっかりと物質があり、病みつきになりそうだ。


「あの……頭を撫でられないからと頬で代用するのはやめてください」

「編み込みは崩したくないし」

「翔くんが言ったからでしょうに……」

「気持ちいいから許して」

「意味がわかりません」


 ぷくっと頬を膨らませてくるので更にふにふにしておいた。

 カルマ達が手を繋ぐまでは暇だから、と思って桜花と戯れていたのだが、カルマのわざとらしい咳払いが聞こえてくる。


 もう二回目なので分かる。


「二人の世界に行かないでくれ」

「あれ?まだ手を繋いでないのか」

「まだ繋がない!」

「まだ?」

「……」

「わーい、カルマが照れたー!」

「棒読みで煽られても反応に困るんだが?せめてツッコミ易いボケにしてくれ」

「夏休みで行く所まで行ったカルマさん?今更手を繋ぐのが恥ずかしいってどういうことですかー?」

「行くところまではいってない!まだ最後の関門が残ってる」

「否定するのそこぉ?翔くんに言ってたなんて知らなかったなー?」


 カルマが握り拳をつくり、ギリッと奥歯をかみ締めながら熱弁する。

 蛍がハイライトを失った瞳をしているような気がするが気の所為だろう。きっと。そうきっと。


「自慢したかったんだよぉお!」

「……」

「いちゃいちゃしたかったんだよぉお!」

「もううるさい!そんなに大声で恥ずかしいこと言わないで!」


 顔を真っ赤にさせた蛍。怒っているのか恥ずかしがっているのか分からないが、周りの人が微笑みを向けてくれているのも更に拍車をかけたのだろう。いつの間にか地面に膝をつけていたカルマに蛍は近付き、ぐいっと引っ張る。


 蛍の力でカルマの身体が引き上がるわけは無いのだが、カルマも蛍に自分の体重を預けるのは気が引けたのか、引っ張られる形で自分で立ち上がった。


「翔くんになら自慢してもいいけど、他の人には言わないでね?」

「……肝に銘じます」

「その間は何かな?」

「何も無いです。翔に自慢しまくります」

「しまくりって……。それもどうかとは思うけど」


 そう言いながら、蛍は恥ずかしそうにカルマの腕にしがみついた。

 手を繋ぐよりもより密接な形。

 隣の桜花がはっと息を飲むのが分かった。


「さぁ、翔、行こうか」

「おいちょっと待て。何事も無かったかのように済まそうとするな。説明を求む」

「見たまんまだが」

「手を繋ぐのも恥ずかしそうにしていたはずなのにどうして段階超えてしまっているのかを聞いてるんだが」

「これが俺達のカップルパワーだ」

「恥ずかしいからやめて!」


 蛍から悲痛な叫びが飛んでくる。

 確かにカップルパワーは恥ずかしい。一緒のグループに居ると見られている翔ですら恥ずかしいのだ。腕に引っ付いている蛍など、もっとだろう。


「夏休みの進展もそれか」

「冬休みはそれ以上行くつもりだぜ」

「カルマくん?!」


 先程は蛍が、そして今はカルマが、祭りの気分に煽られてテンションハイになっている。


 まさか桜花もテンションハイになるのだろうか、と少し不安になってちらりと盗み見るが、桜花は蛍が意を決してカルマにしがみついた辺りからずっと頭がパンクしているようだった。


 可愛い。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 大方、人が多くなってきたらとか、花火を見ながらとか、そんなきっかけで手を繋ごうとしていたのでしょうね。 [一言] 人ごみはさらなる密着チャンスだったりしますが。
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