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他人行儀になった幼馴染美少女と何故か一緒に住むことになった件  作者: 戦告
第5章「秘密はいずれ明かされる」
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第169話小説家になろう20万PV達成記念ss「愛してるゲーム」


「桜花」

「何でしょう」

「愛してる」


 翔が真面目な顔で唐突に告白めいた言葉を言うと、桜花は分かりやすく固まってじわりじわりと頬を染めていく。


 何故、翔が後々黒歴史に残るようなことをしているのか、といえばそれは翔の先程までの行動が原因だった。

 翔は先程まで見ていた動画に感化されていたのだ。


 そして、深く考えず、面白そうだな、と思い、翔は桜花に試すことにしたのだ。


 あと、どうでもいいが、Simejiの変換でFischer'sと打つと「マサイ」と出てくるのはどうしてなのだろう。


「あの……ありがとうございます」


 ほとんど消え入りそうな声で礼を言う桜花に翔はお礼じゃないんだけどな、と少しずれた感想を抱いた。


 この愛してるゲームは笑ったら負け。

 つまりはどれだけ相手を「愛してる」という四文字、口にする時は五文字、を使って、相手を照れ笑いされるか、というところにある。


 翔は照れ笑いをさせたいのだ。

 しかし、桜花は翔が思っているよりも深く受け取ってしまっていた。


「本当のことを言っただけだよ。愛してる」

「……私も、です」


 照れたように身体を左右に揺らしながら桜花は呟いた。

 翔は桜花のカウンターに一瞬陥落させられそうになったものの、何とか堪えた。ゲームという意味でも、彼氏という意味でも。


 数度繰り返していると、桜花は勘違いをし始めた。


 まぁ、翔が何度も「愛してる」と言ってくるのだから、何か言って欲しいことがあるのか、と疑うのが普通だろう。


「私も翔くんを、愛してます」

「……」

「翔くん?」

「目の前に大きな川が……」

「渡らないでください」


 そして、聡明な彼女は残念ながら翔の野暮な目論みを見事に外し、翔に愛を伝える、という暴挙に出た。


 こうして、翔も桜花もお互いが黒歴史を量産する羽目になった。


「愛してる」

「私の方が愛してます」

「いや、僕の方が」


 言い合っていると、翔も桜花も徐々に冷静さを取り戻してきたのか、頬に赤みが刺し、少し躊躇するようになった。


 翔はもう色々と限界を迎えた。


「僕の負けです」

「私の方が愛してますね」


 えへん、と胸を張る桜花に翔は苦笑するしか無かった。

 勿論、桜花はこれが「愛してるゲーム」であることは知らない。翔が対抗してきた桜花に耐えきれず降参したのだ。


「ところで、どうして急にこのようなことを……?」

「いや、実は」


 翔は正直にこれがゲームであり、桜花を照れ笑いさせようとしていたことを話した。

 初めは真顔で聞いていた桜花だったが、徐々に呆れから自分の行いを思い返して照れ、口を聞いてくれなくなった。


 まぁ、当然のことだろう。


「桜花、その……ごめん」

「翔くんにはもう言ってあげません」


 それはまずい。すこぶる不味い。

 翔は機嫌を直してもらおうと、桜花に正面から抱きついた。


「ごめんな。照れる桜花が見たかったんだよー」

「……」

「好きだから好きって言って欲しかったんだよー」


 翔が女々しく言い訳を零す中、桜花は抱き着かれて耳元で囁かれて顔を真っ赤に染めていた。


「わ、分かりましたから。もう離れてください」


 翔は言う通りに大人しく離れた。

 桜花が顔を赤くさせていることに疑問を感じたが、翔はそれについて深くは訊ねなかった。


「桜花。好きだ。愛してる」

「ま、また私をからかって……」

「今度は僕の本心だよ」


 翔は桜花が恥じらいながら、顔を俯かせて両手をごにょごにょと忙しなく動かしているのを見た。


 ちらっと翔を伺うように見てくる桜花に微笑みを向ける。

 ぴゃっ?!と桜花には珍しく変な声が漏れた。


 どうやら効果は抜群らしい。


 回り回ってゲームに勝ったような気がする翔だった。


「私も大好きです」


 ……。

 訂正だ。


 ゲームには負けた。しかも完敗だった。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 倦怠期とは無縁そうでなによりです。 [一言] 途中で愛していたと、フェイントで過去形にした場合を想像しましたが、可哀想なのでやめました。
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