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他人行儀になった幼馴染美少女と何故か一緒に住むことになった件  作者: 戦告
第1章「幼馴染も進化する」
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第13話「学校生活の闇」

サブタイトルが合ってないような……?


「お〜い、翔?聞いてんのか?」

「ああ、悪い。何の話か聞いてなかった」

「爆裂魔法ぶちかますぞ」

「エクスプロージョン!!」

「先撃ちとは……卑怯な」


 2人でケラケラと笑う。

 このクラスで過ごすのもだいぶ慣れてきた。カルマは相変わらずのコミュニケーション能力を発揮し、着実にムードメーカーになりつつあった。


 そんなカルマだったが、翔が自分の中ではまだ1番話しやすい友達のようで、休み時間になるといつも何か一言、二言話しかけてくる。


 翔は人付き合いが苦手な部類にはいるが、話しかけられたことに返せないほどではない。翔にとって、カルマは仲のいい友達ではあるがどこか眩しい存在だった。


「ちょっと待て。エクスプロージョンしたら、卑怯な、とか言ってる場合じゃなくね?」

「今更か」


 趣味が合うのも仲のいい友達で続いている理由の一つだろう。


「んで?何をそんなに考え込んでたんだ?」

「考え込んではいない。ただ今日の献立を考えていた」

「おかんか」

「せめてオトンだろ」

「誰と結婚してんだよ」


 カルマのツッコミに「さぁな」と返すと、カルマの目線は隣に座る学校の有名人へと向いた。


 目だけでまさか、と言っているのがわかったので、べしっと軽く肩を小突いておく。


 あまりこの手の話題を口に出すものでは無いことは翔が一番よく知っているし、カルマも理解している。


「最近はどうだ?」


 主語はなく、少し踏み込んだ内容をカルマは訊いた。


「別に良くもなく悪くもなく、普通だ」

「お呼ばれとかは?」

「……してない」

「……そうか」


 この少しの間で、察したカルマだったが、チャイムが絶妙なタイミングで鳴ったため、真面目な顔をおちゃらけた顔に戻し、じゃあと手を振りながら自席へと帰っていった。


 入学早々、トラブル手前の問題の当事者となってしまった翔は今、軽いイジメのようなものを受けていた。


 同じ横列で廊下側にいる(翔は窓側)須藤が主犯で最近は手下を作ったらしくあとに、2,3人がいつものメンバーとなっている。


 暴行はまだであるがそれも時間の問題であるのは目に見えていた。


「私は心配です」


 授業が始まってしばらく。

 桜花が小声で翔に話しかけた。


「双葉のせいじゃない。気にするだけ時間の無駄だぞ」

「そうは行きません。何か良くない目に遭わされているのでしょう?」


 心配させないように少し尖った言い方をするが、意に返さず桜花はカルマとの話を盗んで聞いた事から予想を立てていたらしく、強く踏み込んでくる。


「まだ遭ってない」

「まだ、ということはやはり響谷くんも可能性があると認識しているではないですか」


 綺麗にノートへと板書し、目も合わせずにまるでゲートオブバビロンのようにグサグサ刺してくる。


 心の中でしまった、と後悔するものの、やはり翔自身、それは思っていたものだったのでどうしようもなかった。


「可能性は何にだってある。明日地震が起こる可能性や僕が今、ぽっくり死ぬ可能性だってあるだろ?」

「それはそうですが……」


 翔は桜花の言いたいことも十分に分かっていた。しかし、だからこそ話を少しずらし、論破せざるをえなかった。


「それでも納得できません」

「意固地だな」

「何とでも言ってくれて構いません」


 ツン、と返される。


「私が一声発せば終わりますか?」

「ダメだ。これは僕の問題だ。だから頼ってもカルマを頼る」


 翔はどうしても桜花をこの件に巻き込みたくはなかった。

 事の発端は桜花の人を魅了するその整った顔なのだが、それを原因にしてはダメな気がしたのだ。


「どうして私を頼ってくれないのですか」

「もしかしたら逆上して双葉に手を出すかもしれないだろ?」

「自分の身は自分で守ります」

「男女の体格差はあんまりナメない方がいいぞ」


 それでも翔の気持ちを知らず尚も食下がる桜花に翔は絶対に埋められない差を見せつける。


「僕と須藤ですら決定的な差があるのに、双葉と須藤なら、紙切れと岩の差だろ」

「なら紙切れの方が強いじゃないですか」

「ジャンケンじゃない。物理的に考えてだ」


 例えが悪かった。


「そうですね。物理的なら岩の方が強いですね」

「理解が早くて助かる。流石、学年首席」

「うるさいです」


 順位は気にしていないが、翔がこうしてからかいに持ち出すと普通に小さく怒るのだ。


 不思議だ。


「私に出来ることは何もないのですか?」

「ないな。何もしないのが一番いい」

「そうですか……」

「ま、強いて言うなら、祈ってくれ」


 翔が思いつく精一杯の慰めだった。

 桜花は納得していないようだったが、いつまでも平行線のこの話を続ける気が無くなったのか、一応予習しているとはいえ授業はしっかりと聞いておこうと思ったのか、話を打ち切って板書に集中を始めた。


 特に翔もこれといって話しておかなければならないことはなかったので、ペンを走らせることに重きを置き、こっそりと須藤の方を見る。


 カルマが交友関係を急速に広げているのは翔のイジメを根絶させようとしている理由があるのだろう、と感じている翔は元凶である須藤を見やる。


 だが、カルマのやっていることは無意味で終わるだろう。

 須藤が世間体、この場合、生徒間の噂になるが、それを気にするような人間であるはずがない。


 翔も殴られたいわけではないが、一方的な感情なため、対処しようにも出来ないのだ。


 翔は深く考え込んだ。


 それ故のミスだろう。

 隣の聖女様が「気付かれなければ問題はないですね」と呟きながらノートの最後のページに勉強とは関係ないプランを神速にも迫る勢いでシャーペンを走らせていたことに気付かなかった。

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