第12話「学校生活一週間体験記」
えっと、前回で第1章の第1節が作者自身の中で終わった感じです、はい。
1日しか経過してないのはきっと気の所為でしょう……。
今後も楽しみにしていただけると幸いです。
感想くれると嬉しい(๑′ᴗ‵๑)
「はぁ……」
深く、重い、落胆のため息を吐く。
手元にあるのは入学して早々に受けたテストの成績が載った紙切れ1枚だ。
たった一つの紙切れでここまで落ち込むことが出来るのだから、テストとはやはり、色々な意味で凄いものなのだろう。
翔は余り芳しくなかった成績に再びため息をついた。
どれも平均点は超えているが、少しだけであり、光っているものは無い。
それでも救いだったのはこの点数でまだ、上位の順位にねじ込めた事だろう。
その点数、220点。
順位、27位。
数学、国語、英語の3教科で、翔が最も得意とする数学は80点を叩きだし、まずまずの感触だったのだが、続く2教科で計140点。つまり平均すると70点というまさかの結果に終わった。
この原因は直ぐに思い当たった。
受験後の遊び過ぎであろうことは結果が目に飛び込んできた瞬間に察した。
やりきった、という感情に任せ、全く勉強に手をつけなかったため、空白の何もしなかった時間があったのだ。
そして、ぼちぼちやろうとシャーペンを持つも、遅々として進むことなく、イベントを回る、モンスターを狩る、村の住民を守る、など、引きこもりにも似た生活を送っていたのだ。
桜花が来て、対抗心が降って湧いた翔は入学式の日から全神経を燃やしたのだが、残念ながら遅かった。
「どうしたのですか?」
「いや、まぁテストがな」
「悪かったのですか?」
「悪かったといえば悪かったが……」
マンモス校での30位以上は良いと言われればいいだろう。つまり受け手の問題なのだ。
「お茶入りますか?」
「頼む」
桜花はコップを2つ取り出した。そして鍋に水を入れ湯を沸かし始めた。
翔の家へ来てから1週間経ちそろそろ慣れてきた頃だろう。
沸かした湯を注ぎ、軽く回してからコップに流す。
翔と桜花、それぞれの前にことり、と小さく音を立てて熱い茶の入った容器が置かれる。
「ありがとう」と感謝を言うと、「いえ」と返された。
翔は極度の猫舌なため、直ぐには飲めないが、桜花は平気なようで上品に自分で点てた、茶を飲んだ。
「落ち着きますよ?」
「僕は猫舌なんだ。見てきたから分かるだろ?」
「えぇ。一番長く一緒にいますからね」
「別にこういう所は一緒に居ても覚えなくていいんだけどな」
恐る恐る口をつける。
何とか飲めるが、もう少し時間を置いておきたいところだ。
翔がテーブルにコップを置くと、くすっと微笑まれた。
まだ飲めないのだ、とでも思っているのだろう。
「その紙、テストの成績が載せてある紙ですよね?」
「あぁ、中身はよろしくないが」
「見せてください」
「ん」
翔は躊躇いもせず、持っていた紙を桜花に渡した。
いくら成績が悪かったとはいえ、一緒に住んでいる相手にまで隠すほどでは無いし、翔の性格は元々成績などの個人が評価されているものを過剰に隠すことはしない。
「……響谷くんはこれよりもっと上を目指したいのですか?」
「うん?まぁそうじゃないと、この成績で、ため息は出ないな」
「そうですか」
そう言って翔にテスト成績の紙を返し、桜花は思案顔で何かをじっと考え込んでいた。
翔は考えている時に話しかけるのもどうかと思ったので、桜花が口を開くまで黙って茶を啜った。
「余計なお世話かもしれませんが、私でよければ手伝いましょうか?」
「手伝い?何の?」
「勉強の、です。この話の流れから料理の手伝いにはならないでしょう」
「誰も料理とは言ってない」
翔は桜花の提案に驚いた。
勉強の手伝いというのは、恐らく分からない問題に直面した時に教師のように教えてくれるという解釈であっているのだろうか。
「手伝いね……。ちなみに双葉の点数を聞いてもいいか?」
「295点です」
「それは……もしかして」
「はい。1位でした」
桜花の提案よりも驚いた。
流石に全て満点と言うわけではなかったが、それでも5点ならば、数学の間違いだと最終問題1問のみのはずだ。
「1位が身近に居たとは……」
「1位は努力さえすれば誰だって取れますよ」
あくまで淡々と返す桜花はあまり、1位とかそもそも順位に関してそんなに気にしていないようだった。
「それで話を戻しますが、1つお願いがあります」
「お願い?」
桜花は一度、立ち上がって何かを取りにいった。そして、それを翔の前で広げて見せた。
「数学のテスト……?」
「ここです」
桜花が指を差した場所は丸が並んでいる中一つだけ撥ねられていた。
そこは奇しくも295点と聞いて間違えている可能性を考えたときに思い浮かべた数学の問題だった。
「響谷くんはこの問題正解してましたよね?」
「この問題は確かに難しかったな」
先程、桜花が成績を見た時に気付いたのだろう。
翔はこの先に桜花が何を言うのか予想が着いた気がした。
「解き方を教えてくれませんか?」
やはり、と翔は思う。
この解き方を教えることで桜花も翔の勉強を見てくれる。互いに高め合える事が出来てとてもいいことでは無いだろうか。
「いいぞ。ただし」
「何でしょう」
「僕が分からないところは双葉が教える。双葉が分からないところは僕が教える。これで対等だ」
一方的に教わるだけでは下に見られているような気がして嫌だった。
桜花が完璧だったならこの話は通用しなかったのだが、桜花も努力をしてきた人間。
どうしても抜けていたり、忘れてしまったりするところもあった。
それが、まさかの翔の得意な数学で起こったのは僥倖だったという他ないだろう。
「分かりました。よろしくお願いします」
「おう。じゃあ早速、この問題はな……」
翔は桜花に丁寧な導き方で教えてやり、桜花は教えてもらった問題以外の翔が詰まった問題を一問ずつ、解説していった。