第1話「プロローグ」
新作です。
主人公の名前は「響谷翔」
ヒロインの名前は「双葉桜花」
翔の母親の名前は決まってません、アイデア募集中
お試し投稿です。
PVが伸びない場合消去しますので、予めご了承ください。
「響谷くん……。あの、もう少し集中しませんか?」
「できるなら苦労はしていない。出来ないから僕も困ってるんだ」
「そんな誇らしげに言わないでください」
向かい合って勉強道具を広げている桜花に、集中しろ、と怒られるが、変に意識してしまって集中など出来るはずがなかった。
「人体要因と環境要因だ」
「保健の勉強してどうするんですか。中間テストには保健はないですよ」
「ごもっとも」
しかし、真意を知って欲しかった翔にとっては残念、としかいいようがなかったが。
すはと、桜花は今更ながらに気づきたようで、一言。
「環境要因とは何のことですか?」
と、訊いてきた。
桜花は入学早々のテストで首席を収めている。頭の賢い桜花には少し引っかかったようだ。
「色々だ、色々」
決して悟られまい、と翔も必死にはぐらかした。
しばらく真意を探すようにしまっと見つめていた桜花だったが、やがて諦めたのかノートに目を落とした。
「響谷くんは卑怯です」
ポツリと紡がれたその言葉にグッと心臓にナイフが突き刺されたような痛みに襲われる。
如何に何の感情も持たない同士とはいえ来るものは来る。
「言葉が痛い……」
「私のことを何も覚えてないし、分かってもくれない……」
「え?何だって?」
「何でもありません。解法の独り言です」
更に声のトーンが落ち、心做しか冷たくなったのでこれ以上の問答は避けようと決める。
翔は自分のノートを見て、こっそりと桜花のノートと見比べた。わざと同じ教科にしているのはそのためだ。
翔の得意教科は数学だが、その数学さえも桜花と比べてしまえばその差は歴然だった。
初めての試験ではコケたが、次に同じミスをする訳にはいかない。
そのためには目の前にいる学年首席に教えを乞うのが1番手っ取り早いのだが。
「集中しますから許してください」
「分かればよろしいです」
「分からないので教えてください」
「はい、どこですか。……え?」
言葉の中に違和感なく詰め込んだ。
半ば流し聞きしていたであろう桜花もこれには反応が遅れた。
「教えるのはいいですが、まず教科書を広げましょうか」
「はい……」
ノートしか広げていなかった。
どうしようもない自分に、少し恥ずかしくなる。
そこでふと、今更ながらにどうして桜花と向かい合って勉強しているか、という疑問が浮かんだ。
「双葉」
「……はい?」
少し悲しそうな声色。
翔は気付くことなく言葉を続けた。
「どうして僕達はこうして向かい合って勉強しているんだ?」
「どうしてって……。響谷くんが勉強しなくて成績が酷かったせいじゃないんですか?」
「おい、ちょっと待て。僕の成績はそこまで酷くない。双葉の成績が良すぎて僕のが見劣りしているだけで決してダメな部類には入ってない」
「そうですか。ではどうしてでしょうね」
「自室戻るか?僕は構わないが双葉はいつも一人で勉強しているだろ?」
翔も勉強は一人でやっているがここではあえて言わなかった。
「響谷くんは私が部屋に戻ったらここでちゃんと勉強するんですか?」
「保証はできないな」
「だから誇らしげに言わないでください」
「多分しないと思う。けど僕のことよりも双葉の方を優先してやりたいから」
「私はここで結構です。どこでも勉強はできます」
食い気味に桜花が宣言する。
翔は気圧され、おぉ、そうかと返すしかなかった。
「それに、さっき教えてくれってせがまれましたし」
「せがむまではいってない。頼んだんだ」
「どっちでもいいです。さぁ、保護者がいない時こそチャンスです」
「どういう意味だ」
桜花ははっと口を押えた。
どうやら勝手に口から出てきた言葉だったらしい。翔は深く問いかけることはしなかったが、後々の忘れた頃にからかってやろうと決めた。
一緒に住むことになった以上家族みたいなものだ、と割り切るのは流石に難しいが、徐々に距離を縮めて行ければいいと思っている翔は少し信頼され始めているのかな、と淡い期待を寄せた。
「何の教科ですか。社会科なら教えることは無いですよ?」
「社会科以外を少々……」
「全部ですか」
呆れもせず、落胆もしていないようだったが、何故か少し傷ついた。
「苦手はさっさと潰しておきたい」
「いい心構えです。でも、ちゃんと座ってください」
背筋を張り、足を地に付けて理想的な姿勢で座る。それを見た桜花は呆気に取られた顔をしたあと、クスクスと笑った。
ちゃんと言うことを聞くのが面白かったらしい。ここらも初めと比べると随分と変わったなと翔が感じる部分。
「なら、1番早い数学からやりますか」
「お願いします」
「このままでいいですか?それともそちらに行って教えた方がいいですか?」
聞きそびれてました、と桜花。
翔はどっちでもいいと思ったが、それを言っていい顔をされた思い出はないので少し考えた。
前者を選ぶと移動はしなくて楽だが、紙をいちいちクルクル回すのは大変だろう。
後者を選んだ場合、距離が近くなるのは明白。つまり、翔はどちらを選んでも詰みということを導き出した。
「場合によってでいいよ」
「分かり……ました」
曖昧な分かりましたにすまない思いと交わって苦笑が漏れる。
すると、足に柔らかい感覚が伝わってきた。
「始めますよ」
「あ、はい」
桜花の足が当たっていることは言えなかった。桜花の授業が始まってしまったのもあるが、何よりも桜花が先程までとは違い少し嬉しそうにしていたからだ。
このお話はある程度進んだ状態の二人です。次のお話から本編、まさに一番初めの出会いから始まります。
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