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てんこもり ~帰宅部、異世界を征く  作者: Podos
第二章

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第72話 学院一年目 ~誓い


 二日が過ぎた昼過ぎ、俺は自宅でせっせと準備を整えていた。

 料理に酒、それらを居間に運んで並べていく。


 リスリアの一件で、評議会は大騒ぎとなった。

 ただの雇われである俺たちは早々に退場させられ、エルフィミアは当事者の一人として質問に追われ、協力を求められた。《幽棲の隠宅トレファス・マスニイト》への鍵は学院長に渡しているが、無しでも侵入できる彼女の能力は何かと助けになるのだろう。

 それが落ち着くまで祖母の捜索は中止である。


「来たぞー」


 準備が整った頃、マーカントを先頭に『破邪の戦斧』が入ってきた。

 いきなり助っ人に駆り出したお礼として、彼らを自宅へ招待していた。酒場でも良かったのだが、俺も彼らも、そうした気分になれなかったのだ。

 それと冒険者としての謝礼は、評議会からきっちりと支払われたそうだ。あれほど短時間の仕事にしては破格だったらしい。間違いなく、口止め料込みだ。


「おお、テーブルに椅子まである。前より家っぽいぞ」

「前から家だ。さ、適当に座ってくれ」


 しゃちほこばった挨拶もなく、慰労会は始まった。

 皆は好き勝手に酒を注ぎ、料理をよそっていく。

 料理はすべて買ってきた。一人暮らしも長いので多少はやるようになったが、基本は未だに外食である。


「冷てぇ!」


 マーカントが美味そうにエールを煽った。

 酒などの飲み物は、大きめの盥に入れて冷やしてある。

 氷結魔法の使い手は氷を生産できるため、夏の間は地味に食いっぱぐれがない。受験のときの高級宿くらいになると、酒や水は冷えた状態で出てくることが多いという。ちなみにリードヴァルトにいたときは、俺が氷を生産していた。

 今年は母やメレディが嘆いているだろう。氷結魔法の使い手はそれほどいないからな。


 冷たい酒を楽しみ、熱い肉を頬張りながら雑談していると、自然、話題はこの前の出来事に移っていった。

 皆に乞われたので、俺は後回しにしていた詳細を話していく。


 議長は俺たちがエサルドと推測しても、おいそれと信用しなかった。それが(ひるがえ)ったのは、エサルドが優秀だったためだ。魔法ギルドには彼の残した研究資料が残っており、照らし合わせた結果、少なくとも研究していたのはエサルドと断定された。

 それでもまだ、リスリアが死者である確証はない。

 だからぎりぎりで俺たちに、正しくはエルフィミアに確認を取った。彼女の『基礎鑑定』ではまともに読めなかったようだが、アンデッドと疑ってみれば、『穢れし抱擁』や『災禍の慟哭』など、不穏なスキルに気付く。充分な証拠である。

 後は、評議員に披露した添付資料と同じだった。

 エサルドは死者の蘇生に失敗。そうなったとき、あの素材がどう働くか。


 すべてを聞き終えると、皆は思い思いの考えに沈む。

 ほどなく、マーカントは酒を煽り、口を開く。


「レヴァナントか。アンデッドならアンデッドらしくしろってんだよ」

「初見だったのか?」


 揃って『破邪の戦斧』が頷く。


「人に似たアンデッド――そう聞いていましたが、あれは想像を越えてましたね」

「だよな。まあ、上の方のアンデッドは滅多に見かけねえが」

「遭遇してもレイスやスペクター辺りですね。中位種以上のアンデッドは、あまり人間種の領域に寄ってこないんですよ。最たる例は『百罪の狂皇』ですか」


『百罪の狂皇』ヤーディー。

 ヴェリアテスに破れた、シャルキス帝国最後の皇帝だ。

 史上最悪の皇帝と言われ、相次ぐ裏切りで敗走、とある山岳で惨殺される。しかし、アンデッドとして復活を遂げると、帝国民もろとも裏切り者を虐殺。彼らを傀儡とし、山岳地帯に死者の国を作り上げた。現在もハーゼル統一王国西方に存在し、冒険者ですら近寄ろうとしない魔境となっている。


「生まれた土地って、居心地良いのかしら?」

「ありそうな話ですね」


 ヴァレリーの何気ない呟きに、ダニルは同意を示す。

 迷宮のように土地ごと放棄されないかぎり、人間の領域は壊滅しても復興される。

 強力なアンデッドが発生する下地は少なく、レヴァナントのような強力なアンデッドは滅多に発生しなかった。本格的に調べようとしたら、それこそ死者の国に行かないと難しいだろう。


「そういや疑問だったんだが、聖撃の斧はあれほど強力だったのか?」


 リスリアは指先が触れただけで、全身が灰となった。

 上位のアンデッドを浄化するのは、並みの力じゃない。

 俺の疑問にマーカントは首を横に振る。


「特効なんだけどな、あんなのは初めてだったぞ。よく分からん」

「それ、何となくですけど――」


 ヴァレリーが口を開き、悩みつつも言葉を継ぐ。


「死を、消滅を受け入れたから、ではないでしょうか」

「んな馬鹿な。アンデッドだぞ?」

「じゃあそれ以外、なにがあるっていうのよ」


 問い返され、マーカントは言葉に詰まってしまう。

 二人のやり取りに、リスリアを思い返す。

 ふと、その姿がゴーレムと重なった。

 まるで、中身の無いロボット。あれもまた、ゴーレムの一種なのだろうか。

 そしてエサルドが命令を与えなかった、もしくは与える間もなく死んだとしたら――。

 創造主が消え、役割も目的もない。

 空っぽのレヴァナントが誕生するのかもしれない。


 視線を街へ向ける。

 あれがどういう性質にせよ、評議会は今も大騒ぎだろう。

 評議員の一人がアンデッド、しかも四十年以上の年月を勤め上げた最古参だった。評議会の統治が根底から覆される事態である。

 何より、残された資料は極めて厄介だった。

 エサルドがプロストの魔石を奪ったか、犯人と繋がっていたのは明白であり、公爵の訴えが正しかったと証明されてしまったのだ。資料が外に漏れれば、皇帝派と公爵派の確執はさらに激しさを増し、セレンが戦場になってもおかしくない。もしリスリアが生者だとしても、臨時評議会は招集されただろう。


 少し身の危険も感じるが――たぶん大丈夫だ。

 議長は情報が漏洩するのを覚悟で、評議員に公表した。それはリスリアと資料を闇に葬れば、追及の手立てがないと判断したからだ。今にして思えば、リスリアを逃さぬ為の準備もしていたのだろう。

 何にせよ、すべてが消え去れば、俺や『破邪の戦斧』が(こわ)(だか)に訴えても証拠がない。公爵派が乗ってきたところで、また門前払いだ。


「どうするのかね、お偉いさんたちは」


 同じようなことを考えていたようだ。

 マーカントが骨付き肉に(かぶ)りつきながら、ぼそりと呟く。

 ダニルは少し目つきを変えたが、何も言わずにグラスを傾けた。


「どうもしないさ。粛々と処理して終わりだ。それより、セレンの周辺はどうだった? 一通り回ったんだろ」


 俺は話題を変えた。

 マーカントは指先で骨を弄び、「そうだなぁ」と考える。


「あまり変わらんな、ここと。雑魚は多いが報酬が安い」

「それよりも治安の悪さですよ。(へき)(えき)しました」


 ダニルがこぼすと、皆は一様に頷いた。


「そうだった、そうだった。オーク討伐が盗賊退治になったりな」

「街でも、ずいぶん絡まれたしね」


 ヴァレリーもうんざりした口調で同意する。

 Cランクともなればちょっかい出す者も少ないが、知らなければ通じない。特にヴァレリーは大変だったろうな。あれだし。


「年々、難民が増えていると聞いたが、セレン周辺は荒れているんだろうか」


 俺の問いにマーカントは首を捻る。


「どうだろうな、西の方は落ち着いてたぞ」

「フィルサッチ侯は有力者ですからね。周囲に敵がいないんでしょう」


 西か。『深閑の剣』が旅立ってから、そろそろ四ヶ月だ。

 もうメズ・リエスに到着しただろうか。無事に兄弟と和解できれば良いが。

 元気に殴り合うハーフリングを想像していると、オゼが玄関に目を向けた。


「お客のようです」


 外に意識を集中させれば、よく知る気配だった。

 うちに来る集団なんて、こいつらかあいつらだよな。

 すぐに、騒々しい声が聞こえてきた。

 そしていきなり扉が開き、新たな客が乱入する。


「飯、食わせろー!」


 唱和しながら飛び込んできたのは、テッドとジェマ。

 それに続き、「お邪魔します」とネイルズも入ってくる。

 しかし想定外の光景だったのか、テッドたちはその場で固まってしまった。

 目の前には四人の大人。それも明らかに冒険者だ。


「お、裏庭で遊んでたやつらか」


 その中でも大柄なマーカントに声を掛けられ、さらに硬くなる。


「お兄ちゃん、またノックもしないで――あ、お客様!?」

「何、誰か来てるの?」


 リリーが遅れて登場し、一緒に顔を出したのはエルフィミアだった。

 珍しい組み合わせだな。

 テッドたちの硬直がどうにか解け、しどろもどろになりながら言い訳する。


「いや、その……良い匂いがしたから、つい……」

「野良犬か、お前らは」


 呆れる俺に、テッドたちは縮こまった。

『破邪の戦斧』は大食らいが多い。今も調理場では追加の肉を煮たり、スープを温め直している。大方、それを嗅ぎつけたんだろう。


「エルフの嬢ちゃんは良いとして、こいつらは何なんだ?」

「喧嘩友だちってところかね。依頼の帰りに――いや、受験のときに知り合ったのか」


 友だちという言葉にマーカントは嬉しそうに反応したが、不意に表情を変える。


「ちょっと待て――依頼?」

「あ、話してなかったか。僕は冒険者ギルドに登録した。お前たちの後輩だ」

「マジか、いつからだよ」

「三ヶ月ほど前。今はEランクだ」

「出発した直後じゃねえか。何だよ水くせえな、言えば手伝ってやったのに。それにお前がEランク? 冗談だろ」


 ヴァレリーも釈然としない様子で何度も頷く。


「そうよね。普通なら順調だけど、アルター様の実力なら最低でもCランクですよ」

「まったく同感です」

「嫌がらせ……?」


 オゼ、惜しい。理由は真逆だった。


「無理を言わんでくれ。学業と両立させるのは大変なんだぞ」


 実際は学業と関係ないところで忙しかったりもする。

 そして(せわ)しない一週間の同行者は、何をするでもなくテッドたちの後ろに佇んでいた。

 マーカントたちはそれに気付き、目配せして立ち上がる。


「よし、小僧ども。俺たちが稽古をつけてやろう」

「え、俺たちは飯を……」

「俺に一本入れたら、好きな物を好きなだけ食わせてやる」


 途端、テッドとジェマの目の色が変わる。

 すっ飛んでいく二人に、ネイルズとリリーも一礼して後を追った。

 あいつらも加わると――足りるか?

 残りの食糧を頭の中で並べていると、エルフィミアは裏庭の方を視線を向け、申し訳なさそうに口を開いた。


「邪魔だった?」

「ん――ああ、構わん。あいつらが聞いて良い話じゃないからな。それより仲良さそうだったな、リリーと」

「話したのは、さっきが初めてだけどね。ほら、学院長が自慢してたでしょ。彼女のこと。それで気になったの」

「良い子だろ」

「ええ」


 微笑を浮かべ、エルフィミアは頷く。

 その姿は、どこか寂しげに見えた。

 もし祖母が行方不明にならなければ、現在は今ではなかった。

 リリーを通し、為しえなかった未来を見たのかもしれない。


 エルフィミアを席に着かせ、紅茶を差し出した。

 それを一口飲み、彼女は切り出す。


「最初に言っておく。お祖母様に会えたわ」

「そうか。どこにいた?」

「見えない屋敷、《幽棲の隠宅トレファス・マスニイト》と言った方が良いかしら。一階の奥……でね」


 崩落の先――いや、埋まっていたんだな。


「間違いなく本人なんだな?」

「ええ、お祖父様の日記に書いてあったとおりの服装だった。それに紋章の指輪もしてたし」


 淡々と応えるエルフィミア。

 言葉にしがたい状態だったはず。

 それでも、彼女の表情からは陰りが消えていた。


 エルフィミアは紅茶を一口飲むと、その後の(てん)(まつ)を語り出す。

 一時は混乱しかけた評議会も、議長の指揮で落ち着きを取り戻したそうだ。当事者の一人であるエルフィミアは、経緯の説明や祖母の確認などに駆り出されていたという。そうした諸々が終わったのは、今朝のことらしい。


「禁薬に指定されたわ」

「エサルドの薬か。当然の処置だ。あんなものが知れ渡ったら国が崩壊する」


 アンデッド特有の性質を持たず、生前と変わらぬ姿。

 そんなレヴァナントを生み出す薬は、家族や恋人を失った者にとって禁忌だ。


「名称は禁薬エサルドになるそうよ。表だっては呼ばれないけどね」

「妻の死を否定した代償が禁薬の名前か」


 少しだけ、エサルドに同情する。


「それと、評議会は今回の件を無かったことにするみたい。リスリア・サイジートは病死。エサルドも歴史から消されるわ」

「優秀な錬金術師だったようだし、功績も多いだろうな。評議会は大変だ」


 順調に処理してるようだ。

 この分なら、こちらに火の粉が飛ぶ心配はないな。混乱したままであれば、セレンからの逃走も視野に入れねばならなかった。


 俺たちは言葉を切り、お茶に手を伸ばす。

 しばらくの沈黙。

 エルフィミアは紅茶に視線を落とし、呟いた。


「ねえ、何があったと思う?」

「さあな」


 結果論だが、リスリアがあれほど簡単に消滅を受け入れるのなら、もっと情報を引き出すべきだった。そうすれば四十六年前に何が起き、誰が関与していたかはっきりしたはずだ。

 軽い金属の音に目を向ければ、エルフィミアが古びたネックレスを握っていた。


「お祖母様は、身体が弱かったそうなの。冒険者として活動できたのは、ある魔道具のおかげだとお祖父様の日記に書かれていた。生命活動そのものを補助するんだって」

「そのネックレスか」

「分かるでしょ?」


 無言で頷く。

 それは、ただのネックレスだった。

 死者蘇生の素材の一つは、神聖属性の魔石。

 生命活動を補助する魔道具、そんな代物は神聖属性に決まってる。

 生前のリスリアは、病気だったのだと思う。おそらくは遺伝子疾患。いくらエサルドが優秀でも、遺伝子を理解していなければ治せない。いや、理解しても無理だ。遺伝子治療と普通の治療は、まったくの別物である。

 エサルドは二重の意味で、ネックレスを必要としていたのだろう。

 魔道具で延命できればそれで良し、無理なら素材に使う。エサルドほどの錬金術師なら、魔道具を素材として代用する手段を知っていてもおかしくない。


 セルテレスは(おび)き出されたのか。

 魔道具を運ばせるためだけに。

 それができそうな人物は、一人しかいなかった。

 人間という異物の中で生きる同種。

 たとえ半分でも、その繋がりは強い。


 エルフィミアは、薄々気付いていたはずだ。

 だから優秀な錬金術師が関わっていると知ったとき、確証がないのにエサルドと言い切った。初めから疑っていたのだ。

 どんな気分だったろうな、十歳の少女が敵地に赴くのは。

 相当な覚悟、そしてそれ以上の恐怖があったに違いない。


 俺は天井を振り仰ぐ。

 すべては断片的な情報からの推測。しかも穴だらけだ。

 評議員ヤルズ・アラスター。

 あいつなら真実を知っているだろう。

 リスリアが外した指輪は、神聖耐性の魔道具だった。あの常識外れのアンデッドが身を守るため、わざわざ買うとは思えない。誰かに与えられたのだ。

 話は――無理か。

 俺たち、そして評議員は、愛しいリスリアを消滅させた。素直に口を割るはずがない。それに相手は元Aランクの魔法使い。老いたとはいえ、上級魔法を操る上位者の一人だ。対応を誤れば、多くの死者が出るだろう。


「ところで、お前はどうする。祖母と一緒に帰るのか?」


 彼女は祖母を探すために、セレンまでやってきた。

 不完全燃焼でも、目的は果たしている。

 壊れたネックレスを握りしめ、エルフィミアは小さく首を振った。


「学院生を続ける。世間には、あんたみたいな化け物がいるんだもの。自分の未熟さを痛感したわ」

「光栄だけどな、僕だって未熟だぞ。どれも一流には敵わない」

「なに贅沢言ってんの。あれは一流どころか英雄の器よ?」


 エルフィミアは、呆れ顔を浮かべた。


「それにね、周りには本当の目的を話さずセレンまで来たの。どんな事情でも途中で投げ出せば、父や祖母の顔に泥を塗ってしまうわ」

「そうか。宮廷魔術師も大して貴族と変わらんな」


 どんな立場でも世間体は付きまとうか。

 魔物に転生していたら、見える世界はまるで違ったんだろうな。

 馬鹿なことを考えていると、エルフィミアは紅茶を飲み干し、立ち上がった。


「帰るわ」

「そうか」


 俺が座ったままでいると、不機嫌そうに見下ろしてきた。


「見送りは?」

「はいよ、仰せのままに」


 扉を開け、外まで送り出す。

 二人で路地へ出ると、風が街を吹き抜けた。

 金色の髪が揺れる。

 祖母も、こんな髪だったのかね。

 会うことのなかったセルテレス。

 セレンを旅立つときは、こうして見送ろう。


 俺の視線に気付いたのか、不意にエルフィミアは背を向けた。

 そのまま口を閉ざし、立ち尽くす。

 無言の時が流れ、エルフィミアは呟いた。


「私一人だったら、お祖母様に会えなかったと思う」

「でかい借りがあったからな」

「釣り合わないわ。だから――」


 エルフィミアは振り返り、強い眼差しを俺へ向ける。


「だから一度だけ――あなたのために命を捨てる」


 返答に詰まり、ただ見返す。


「冗談……ではなさそうだな。軽々しく誓う言葉ではないぞ」

「それだけの価値があるのよ。私には」


 そう言って、エルフィミアは硬い表情を崩した。


「また、学院で会いましょう」


 軽く手を振り、エルフィミアは立ち去っていく。

 俺はそれを、静かに見送った。


 これで彼女の旅は、ようやく終わった。

 俺がいなくとも違う形で辿り着いただろう。

 足りなかったのは、答えを掴む覚悟だけだった。

 俺は後押し。所詮、脇役だ。


 しかし――命を捨てる、ね。

 そんな日が来ないと良いがな。


 再び風が吹き、秋の気配と喧騒を運ぶ。

 あっちは自分の欲に命を掛けているようだ。


「おらどうした、ガキども! そんなんじゃ飯は食わせんぞ!」


 覗いてみれば、テッドとジェマ、ネイルズが三人掛かりでマーカントに挑んでいた。

 どうやら、まだ一撃も入っていないようだ。

 路地に佇み、それを眺める。

 そんな姿にテッドが気付き、声を張り上げた。


「アルター、手伝ってくれ!」

「はッ!? ま、待て! それは反則だろ!?」


 観戦していたヴァレリーが、良い笑顔で木剣を放ってきた。


「お前、何して――うおッ!?」


 柵を跳び越え、一息に斬り込む。

 焦るマーカントに、四人の子供が群がっていった。


 そういや、夏休みも終わりだな。

 エルフィミアに引っ張り回されたり、こいつらとつるんだり……。

 休みをまるで満喫してないが――ま、これはこれで面白かった。




 これにて二章の前半は終了です。

 お読み下さった方、評価、ブックマークして下さった方、ありがとうございました。

 これから数ヶ月の間、書き溜め期間に入ります。気長にお待ちください。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 最初は文字が詰まってて視力弱者の僕には見づらかったんだけど、気づけば1行間を上げる改行が増えて見やすくなってることに気づいた。 話の進むスピードが絶妙で最高 主人公とその周りの人達との触れ…
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