真紅の勲章
「まぁ、ここにいる7人、そしてグラウンドにいる新入生の凄さっていうのは練習を一緒に重ねればよーくわかると思う。」
そう言って吉田はなにやら紙袋から物を取り出す。
「これを今から配る。非常に大事なものだから無くすなよ。」
と真紅のバッジのような物をみんなに渡す。みんな訝しげにそれを手に取る。
吉田はえっへん、と大きく咳払いをし
「これは『紅勲』といってな成績優秀者やスポーツに長けた人に与えられる勲章みたいなものだ。制服に校章として付けるから無くさず入学式に持ってこい。そしてこれを付けている人も皆『紅勲』と呼ばれる。まぁ、その辺は入学したら分かるから、とにかく無くさないでくれ。」
そして吉田部長は バンッ!と机を叩き、
「そして君たち野球部での『紅勲』の役割は…」
俺たちは何を言われるのかと、ぐっと固唾を飲む。
「本校野球部の甲子園出場に貢献すること。それだけ!!」
甲子園、高校球児にとって夢の舞台である。その言葉を聞いてみんなの目が輝く。
「そのために、自分らで練習メニューを決めたり、先輩の練習に入ったり、同学年や来年来るであろう後輩の指導をしたりと君たちを中心に自由にやってよい。元々うちは自主性を元に練習してるからな。そこは心配しなくていい。今からグラウンドに行けばわかる。」
時計をチラリと見て、吉田は
「いかん、時間を少しすぎた。ではでは、『紅勲』の諸君、グラウンドに行こう。」
時計は9時半を過ぎたところだった。
グラウンドまでは1年生は基本走りで行くらしいが今回は特別にバスでグラウンドに。
練習着に身を包んだ俺達がグラウンドに到着すると他の新入生は補強運動を終えてキャッチボールに入るところだった。
「ちょうど良かった。今からストレッチを済ませてキャッチボールをしてほしいんだが、山縣と佐々木、上田と有田、渡邉と吉永の組み合わせでやってほしい。」
おい、俺はどうなるんだよ?
「平瀬君はちょっと待っててくれ。」
そして心配する俺に
「良い相手だからな、安心しろ。」
と吉田ほ耳打ちした。
ストレッチを終えて少しすると
「おーい、白石君!ミットを持ってちょっと来てくれ!!」
と選手を呼び出した。
すると、はーいと威勢のいい返事と共にぽっちゃりとしてよく日に焼けたキャッチャーが出てきた。
「平瀬君、この子が例の130m打球を飛ばす子だよ。」
吉田部長はそう俺に囁いて颯爽と去っていった。
ま、まじか…。この白石って人がそうなのか…。確かに身長や腕の筋肉を見る限り、確かにただのぽっちゃりでは無さそうだな。どのくらいの実力なんだろう?元九州選抜としての血が騒ぐ。
それじゃあ、早速…
お手並み拝見と行こうか…!!