精鋭の集結
「あのー、ちょっと迷っちゃってですね、エントランスってどこですか?」
おそるおそる場所をたずねる。
紙袋を携えている部長はこちらを見つめ
「紙の裏を見んかい、場所が書いてあるやろ?」
「ホントや!」
赤紙があることにパニックって全くもって気づかなかった。
「ちゃんと見らんかい、バカ野郎。お前さんみたいに不注意じゃない奴らはもう揃ってる頃だろうから…もう、ついてこいっ。」
言葉はなかなかに酷いが顔は笑っている。実に陽気で皮肉の効いた部長さんだ。
そんな部長に連れられて、「エントランス」に着いた。広々としていて雰囲気が良い。そして5,6人野球部と思われる人がいる。
そしてその中になんと山縣と佐々木がいた。
「すまんのう、道に迷った不届き者がおって少し遅れてしまった。」
不届き者とは失礼な…。山縣と佐々木含め、みんなが苦笑しながら俺を見つめる。
「まぁよい。取り敢えずここだと説明するのに都合が悪いのでな、場所を移そう。」
こうして、パソコン室のような場所で話が始まった。
「まず、今からする話は悪い話ではない。安心して聞いてくれ。」
そう言いながら吉田は選手1人1人を見つめ
「最高の7人が集結したのう。」
と噛み締めるように言った。
「君たちには野球部の中心になってもらう。しかし、ここにいる7人はまずお互いを知らない。だから自己紹介してもらおう。じゃあ早速、君から順にいこうか。」
とトップバッターに佐々木を指名。となると、反対側の席にいる俺の自己紹介は最後になるな。しかもその前は山縣。やりづれぇな…。
「えー、佐々木柊です。ポジションはキャッチャーです。よろしくお願いします。」
ぺこりと一礼する。
自己紹介ってこんなもんでいいのかと思いきや、
「佐々木君、流石に説明が少ないぞ。他にも実績とかあるやろうに。」
と部長が笑いながらヤジを飛ばす。
佐々木は
「そうですね、キャッチャーとして全中でチームのベスト4に貢献しました。」
全中とは中学軟式野球の全国大会のことである。
「全国ベスト4か、凄いなぁ。OK、こんな感じで次行こうか。」
この後、佐々木の元チームメイトで全中ベスト4に貢献したという、小柄ながらも華やかな雰囲気のある「有田 輝」とキャプテンシー溢れるパワフルな「渡邉 兆」
硬式クラブ出身で九州大会にて1番打者を務めたという守備職人の「上田 未來」、同じく硬式出身で3番センターを務め走攻守揃った「吉永 飛鳥」。
錚々たるメンバーである。
かくして実力のある5人が紹介を終え、山縣の番に。
「山縣 響です。ピッチャーとして一応、中学日本代表にも選ばれました。よろしくお願いします。」
自然と大きな拍手がおこる。そりゃそうだ日本代表だもの。ただ、こうなってしまうと尚更やりづらい。今度は自分の番だ。
「えっと、平瀬 楓真です。元々はピッチャーでしたがさっきの山縣君とチームメイトだったので外野手とリリーフをやってました。控えながら九州選抜にも選ばれました。よろしくお願いします。」
パチパチパチパチ…小さいながらも、拍手は起こった。
こうして無事に7人の自己紹介が終わった。