邂逅
「…ということだ。とりあえず2、3年生は解散。1年生は悪いが少し残ってくれ。」
茜色だった空ははもうすっかり暗くなっている。俺は残っている1年生をざっと見た。
20人くらいだろうか、1年生がこんなにいたことに全く気づかなかった。そしてその輪の中に当然だが例の佐々木もいる。
そして監督である奥田から「明日から上級生と共に本格的に練習に参加できることと、その説明のため練習前に新入部員用のミーティングがあること」を言い渡された。結局、山縣が言っていた特待生に関することについては何も言及されずじまい。なんで連絡しないのかと。疑問に思いつつも、俺は早々に家路に着いた。
家路といえば、この高校には寮がない。だからみんな電車やバスなどで通っている。中には片道2時間ほどかけて来る人もいるんだとか。まぁ、自分は電車通学で片道30分かからないくらいだからわりかし楽な方ではある。
家に着くと、飯と風呂をさっさと済ませてストレッチに入る。トレーナーさんに今日教えて貰ったばっかりのストレッチだから多分疲れは取れるだろう…。
ー次の日ー
ふぁ〜、寝みぃ…。7時発は流石に早ぇ…。
朝にめちゃくちゃ弱い俺は眠い目をこすりながら駅のホームに着いた。しかし次の瞬間、衝撃のあまり目が覚めてしまった。あろうことかそこに佐々木がいたのである。俺は目を疑って何回も目をこすった。決して眠気のためではない。
あの坊主頭に近い短髪、間違いない、佐々木だ。そいつがどんな奴かは当然知りたい。だから俺は思い切って佐々木に歩み寄って話しかけた。
「なぁ、野球部の佐々木君だよな?」
改めてみると佐々木は意外と背が小さい、といってもガタイは決して悪くない。むしろ筋肉質なのがジャージの上からでもわかる。
「そうだけど、」とこちらを切れ長の目で睨みつけてこう言い放った。
「君とは多分合わないと思うよ」
衝撃の一言だった。おいおいおいおい、初対面の人にいきなりなんてこと言うんだ、しかもチームメイトだぞ…。と困惑した。
呆然と立ち尽くす俺に、佐々木はじゃあねと告げ、別の乗り場へ去っていく。
なんだよ、アイツ。いけ好かねぇ野郎だぜ…。ため息をついて俺は電車に乗った。
佐々木との邂逅と彼の第一印象は最悪なものになった。