65.ゴブリンのボス戦です!
壊れた女神像があった広場から先に進んでいくと、また開けた場所に出たよ。
その中に入ると今通ってきた道が閉ざされた。
どうやらここがボス戦の場所のようだね。
「さて、いよいよボス戦ね」
「ボス戦はいいけど、ここのボスってどんなの?」
「ボスの名前はゴブリンリーダー、まあ、その名前通りゴブリン達のリーダーね」
「そうなんだね。つまりそいつを倒せばクリアなんだよね?」
「そういうことよ。……さて、ボスがお出ましのようよ」
森の奥から現れたのは、一体の巨大なゴブリン。
こいつがゴブリンリーダーなんだね。
確かに、リーダーって言うだけあって大きくて強そうなんだよ。
「さて、ゴブリンリーダーはHPバーが2本。とりあえず1本目までは普通に戦えるから、そこまでは一気に削りましょう」
「わかったんだよ。サンダーボルトは使っても大丈夫?」
「後半戦で使う分を残しておいてくれれば大丈夫よ。ブレンも余裕があったらサンダーブレスを使ってもらって構わないわ」
「わかったわ。状況を見て使わせてもらうわね」
「そうして頂戴。スズカは隙を見て攻撃をよろしく。確か、全周囲攻撃も使ってくるって話だから、それには注意して」
「わかりました」
「さて、それじゃあ、始めましょう」
セルシアの挑発スキルから戦闘が開始されたんだよ。
最初のうちは様子見という事で、ライトニングジャベリンとか下級魔法で攻撃しておく。
スズカやサーシャもあまり大技は繰り出さないで細かく攻めている感じだね。
プリムとスズランも加わって、ゴブリンリーダーを攻撃してる。
でも、ボスだけあってHPの減り方はかなりゆっくりだね。
それでも戦闘開始から数分経ち、十分に敵の注意がセルシアに向かったことを確認したら、一気に攻めさせてもらうんだよ!
「シズクちゃん、サンダーボルト!」
「ブレン、サンダーブレスよ」
サンダーボルトとサンダーブレスによって一気に体力を削られたゴブリンリーダーは、一度態勢を崩したけどすぐに立て直して森の中へと逃げていった。
「さて、ここからが第2ラウンドよ。しばらくはザコのゴブリンが襲ってくるからそれの相手になるわ」
「ゴブリンリーダーは出てこないのかな」
「聞いた話だと、ゴブリンを30匹倒したら再登場するらしいわね。それまではゴブリンの相手よ」
「わかったわ。ブレン、MPは温存しておいて」
「シズクちゃんもサンダーボルトは温存だよ」
少し経つと周囲からゴブリン達が襲ってきた。
一度に出てくる数はそこまで多くないけど、バラバラの方向から攻めてくるから面倒なんだよ。
「私一人じゃ全方位は対応できないわ。後方から来る連中はリーンの従魔に任せていいかしら?」
「わかったんだよ。シズクちゃん、プリム、スズラン。あっちから来るゴブリンを倒すんだよ!」
ボクのパートナー達に後方から来るゴブリンの相手をしてもらう。
襲ってくるのは普通のゴブリンだからシズクちゃんのライトニングジャベリンを一発当てて、プリムかスズランが攻撃すればすぐに倒せるね。
それでも時々ダメージをもらうから、ダメージが積み重なってきたら回復してあげないと。
それに、ボクの反対方向のゴブリンを一手に引き受けているセルシアにもダメージが入ってるから、そちらも回復してあげないといけない。
ヒーラーって忙しいんだよ。
「さて、そろそろゴブリンリーダーが戻ってくる頃ね。ゴブリンリーダーが戻ってきてもザコは湧き続けるらしいわ。そちらの対処はリーンにお願いしても大丈夫かしら?」
「これくらいなら多分大丈夫なんだよ」
「そう、よかったわ。それじゃあ、リーンと従魔でザコの相手をお願い。私達はゴブリンリーダーを倒すわ」
「了解。ブレン、全力でいくわよ!」
「はい、任せてください!」
セルシアの宣言通り、ゴブリンリーダーがまた森の中から出てきたよ。
でも、今度は一体だけじゃなくて弓持ちのゴブリンアーチャーを従えて来てるね。
「サーシャ、ゴブリンアーチャーを遠距離攻撃で倒せるかしら?」
「多分大丈夫だと思うわ。ただ、一撃じゃ難しいと思うからブレンにも手伝わせてもいい?」
「その程度なら大丈夫よ。アーチャーはこの一回しか出ないはずだし、ブレンも使って一気に倒してしまって」
「了解。ブレン、そういうわけだからまずはアーチャーを倒すわよ!」
「クギュゥ!」
サーシャとブレンはゴブリンアーチャーを倒しに向かうみたいだね。
その間、セルシアはゴブリンリーダーを惹きつけて、スズカが攻撃するみたい。
ボクは、後方や側面から攻撃してくるゴブリン達の相手で忙しいんだよ!
「あーもう! なかなかゴブリンの数が減っていかないんだよ!」
「増えないだけマシよ! このダンジョンで一番きついのは、ボス戦で物量差がある事なんだからね!」
「わかったんだよ。シズクちゃん、あそこの集団にサンダーボルト!」
「ワォン!!」
都合よく固まって出てきてくれたゴブリンの集団に対し、シズクちゃんのサンダーボルトが炸裂する。
ただのザコゴブリンならこの一発で十分に倒せるんだよ。
「シズクちゃん、あっちとそっちにはライトニングジャベリン!」
「ワフゥ!」
「スズラン、そこのゴブリンにとどめをさして!」
「ニャオン!」
「プリムは、そこが終わったらあっちのゴブリンに攻撃だよ!」
「プー!」
「リーン! 悪いけど回復をお願い!」
「わかったんだよ、ヒール!」
パートナー達に指示を出しながらセルシアのHPも回復する。
本当に目が回りそうなんだよ!
そんな慌ただしい戦闘がしばらく続き、ゴブリンリーダーのHPも大分減ってきた。
後一押しで倒せそうだね。
「リーン、サーシャ! サンダーボルトとサンダーブレスをお願い!」
「わかったんだよ! シズクちゃん、ゴブリンリーダーにサンダーガードブレイクからサンダーボルト!」
「ブレン、シズクのサンダーボルトが終わったらサンダーブレスよ!」
シズクちゃんのサンダーガードブレイクからサンダーボルトが決まり、さらにサンダーブレスが追い打ちをかける。
最後はちょっとオーバーキル気味になったけど、無事にゴブリンリーダーを倒せたんだよ!
ゴブリンリーダーが倒されると、残っていたゴブリン達も森の中へと逃げていった。
「やった! これで勝利だね!」
「そのようね。皆、お疲れ様」
「ええ、お疲れ様」
「お疲れ様でした」
「お疲れ様だよ。……指示を出すのは本当に疲れたんだよ」
「……ねえ、そのことなんだけど、もう少し大雑把な指示でも従魔なら大丈夫なんじゃないかしら?」
「そうなのかな? 普段から指示をしてるからよくわからないんだよね」
「それなら大丈夫よ。倒したい敵や守ってもらいたい事を伝えれば、指示に沿って動いてくれるわ」
「……そうだったんだね。知らなかったんだよ」
「まあ、細かく指示を出した方がきちんと動いてくれるから便利なんだけどね」
「テイマーやサマナーって大変なんですね」
「そこは慣れよ、慣れ。慣れてくれば大分緩和されるわ」
「ボクは慣れそうにないんだよ……」
「まあいいじゃない。戦い方は人それぞれよ。そんな事より、報酬を確認しましょう」
ああ、報酬の事を忘れてたんだよ。
さて、どんなアイテムが手に入っているのかな?
「私はゴブリンの短剣ですね。普通の短剣よりもちょっと攻撃力が高い、のかな?」
「私はゴブリンの杖ね。……タンクの私が持ってても仕方がない武器ね」
「私もゴブリンの杖よ。でも、今使ってる日傘の方が魔法攻撃力が高いのよね」
「やっぱりこのダンジョンは報酬が微妙ね。リーンは何が手に入ったの?」
「えーと。ゴブリンの卵」
「……リーン、あなたって本当に運がいいわね」
「でもボクはゴブリンはいらないんだよ」
「それなら持ち帰ってユーリさんに相談ね。ユーリさんならいい使い道を知ってるでしょうから」
「そうだね。そういえば転職石って手に入った?」
「転職石はダンジョンから出たときにもらえるわ。……もっとも、このダンジョンをクリアしたときにもらえるのは1個か2個なんだけどね」
「……少ないんだね。皆は転職石をいくつ集めなくちゃいけないの?」
「私は3個よ」
「私は2個ですね」
「私は6つね。レゾナンスサマナーは必要個数が多くて困るわ。リーンはいくつなの?」
「ボクは5個なんだよ」
「……となると周回する必要があるわね」
「そうだけど、2人はすぐに転職できるんじゃないのかな?」
「ああ、転職石はこの先の転職でも使うらしいから、貯めておいて損はないのよ。だからこそ買うとそれなりの値段になるんだけどね」
「それなら周回に付き合ってもらえるかしら。私とリーンだけじゃ大変そうだし」
「わかってるわ。スズカは大丈夫?」
「私も大丈夫ですよ。とりあえず、ダンジョンから脱出しましょう」
「そうね。そうしましょうか」
ボスを倒した後、出現したワープゲートを使って脱出したよ。
脱出したらシステムメッセージが表示されて転職石が3個手に入ったみたい。
「うん? 転職石が3つ手に入ったみたいなんだよ?」
「あら、そうなの? ガイルさんから聞いた話だと、多くても2つしか手に入らないって聞いてたけど……」
「そこも戻って確認すればいいんじゃないかしら。それにたくさん手に入る分には困らないわけだし」
「それもそうね。一旦、ギルドハウスまで引き上げましょうか」
「そうですね。戻りましょう」
「そうだね。ボクも疲れたんだよ」
こうしてボク達の初めてのダンジョン攻略は終わったんだよ。
でも、このゴブリンの卵、どうしよう。
いつもお読みいただきありがとうございます。
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作者のモチベーションアップにつながります。
毎回の誤字報告本当に助かっています。
感想もありましたらよろしくお願いします。
~あとがきのあとがき~
また卵を手に入れてますが、作者の意図したものではなくサイコロの神様の気まぐれです。
ついでにいうと、転職石の数もサイコロの神様のせいです。
なんだよ、1d100で2連続クリティカルって……





