63.ゴブリン退治開始です!
「ここが『ゴブリン族の集落』開始位置かー。今まで気にしたことがなかったけど、中が見えないんだよ」
「そこもインスタンスダンジョンの不思議の一つよね。中に入らないと、どういう風になってるかわからないっていうのは」
「そうなんですね。『ゴブリン族の集落』は大丈夫なんですか?」
「『ゴブリン族の集落』については前にガイルさんから聞いてるわ。出てくるモンスターはほとんどゴブリン族のみ。ダンジョンではあるけど、道なりに進んでいくしかなくて、分かれ道も鍵を手に入れる都合上、全部回らなくちゃいけないそうよ」
「それは手間がかかりそうね。ショートカットって出来ないのかしら」
「ショートカットはないそうよ。そういう意味でも初心者向けなんですって」
「はあ、楽できそうにないわね。ブレン」
「グルルル」
サーシャは相変わらずブレンとのコンビでの攻略だね。
そんなサーシャにセルシアが近寄っていったよ。
「それよりも、布陣はボスの時と同じでいいの?」
「ああ、私の召喚獣はブレン以外まだあまり育ってないのよ。だから、私はブレンだけ呼んで、残りはリーンに任せてるわ」
「そういうことならいいけど。本当はリーンを追い抜かすような召喚獣を持ってたりしない?」
「残念ながら私が持ってる残りの召喚獣は『ヒーリングラビット』と『ディフェンスドッグ』くらいよ。強力なパートナーを手に入れようにも、課金枠が足りなくてそんな強いパートナーは入手できなくてね」
「なるほどね。……来月になったらどうなるかわからないと」
「そういうことかしら。でも、しばらくはブレン一本で育てていくつもりよ」
「なるほどね。リーンとは違うわけだ」
「あら、リーンはリーンで正統派なテイマーだと思うわよ? 状況に応じて仲間を変えて戦えるんですもの」
「一点突破か対応能力かってところかしら」
「そんな感じよね。……さて、あちらも突入準備が出来たみたいだし行きましょう」
「そうね、そうしましょ」
……うん、よくわからないけど、あちらも準備は整ったみたいだね。
ボクの方もシズクちゃん、プリム、スズランの布陣で準備万端ですよ!
「待たせたわね。準備も良さそうだし始めるとしましょう」
「そうね。まずは1回クリアしてみないとどんな感じかわからないものね」
「クリア前提なんですね、サーシャさん」
「あら、クリアだけなら大丈夫だと思うわよ。ここのダンジョンのレベルは16だもの。私達はレベル20以上あるわけだし、不意打ちや数で負けたりしなければ大丈夫よ」
「そういうことね。リーンも回復は程々で大丈夫なはずだから、攻撃に参加していいわよ」
「わかったよ。様子を見て攻撃も行うんだよ」
「その調子ね。それでは入るわよ」
あたりが見えなくなっていた草むらの中に入ると、一瞬転移したような感覚を覚えた後、森の小道の中に立ってたんだよ。
……エリア名が『ゴブリン族の集落』になってるから、ここが目的のダンジョンみたいだね。
「どうやらここが目的地みたいね」
「まさか転送されるなんてね……」
「ちょっと驚きましたね」
「まったくだよ。もう少し優しくてもいいと思うんだよ」
森の入口で文句を言うが、それで何かが改善されるわけもない。
とりあえず、パートナーも含めて全員いる事を確認したら、奥の方へと出発ですよ。
このダンジョンは森の小道を歩いて行くように作られたみたいだね。
道をそれて木々の中に入っていこうとしても、見えない壁にぶつかって奥にいけないよ。
「そういえばセルシア。ここのダンジョンについて聞いてるって言ってたけど、どんな仕掛けがあるの?」
「うーん、仕掛けらしい仕掛けはほとんどないのよね。このダンジョンだと罠の類いもないらしいし、道は全て行かないとダメらしいし。……ああ、あえて言うなら、各戦闘で伝令役のゴブリンがいて負けそうになったら逃げ出すんだけど、そいつを逃がしてしまったら次の戦闘の時に最初からゴブリン達が臨戦態勢で待ち構えているって事かしら」
「つまり撃ち漏らしがないように倒していけばいいって事ね」
「そうなるわね。基本的に、私が盾役として敵の退路を塞いでおくから、『ゴブリンスカウト』から倒してもらえると助かるわね」
「了解。二人も聞いてたわね?」
「『ゴブリンスカウト』から倒せばいいんだね」
「わかりました。気をつけてやってみます」
「まあ、あまり気負わない程度にね。……さて、最初のターゲットが見えてきたよ」
森の広場みたいになってるところにゴブリン達の集団がいたよ。
全部で……8体かな。
「敵は8体。うち、『ゴブリンスカウト』は3体ね」
「あの大きなナイフだけを身につけてる奴が『ゴブリンスカウト』だね」
「……危険になると逃げ出すというけど、どんな感じで逃げるのかしらね?」
「確かに、気になりますね」
「それじゃあ、最初は斥候を2体だけ倒して様子を見てみましょうか。リーン、うまく斥候2体だけ倒す事ってできる?」
「うーんと、シズクちゃん、いける? ……うん、大丈夫みたいだよ」
「それじゃあ、先制攻撃で斥候を2体処理。その間に私は敵の裏側に回って退路を塞ぐわ」
「任せたわよ。ブレンはブレス攻撃は使わないで戦ってね」
「グルゥ」
「……よし、それじゃあ作戦開始よ!」
「シズクちゃん、ライトニングジャベリン!」
戦闘開始と同時にシズクちゃんから雷の槍がゴブリンスカウトの1体に突き刺さる。
ゴブリンスカウトは、それ1発で絶命して消えていったよ。
敵が浮き足立ってる間に、セルシアは敵の背後に回って逃がさないように挟み込む。
そしてクールタイムが明けたら、シズクちゃんのライトニングジャベリン2回目で2体目のゴブリンスカウトを倒したんだよ。
そこまで経って、ようやく行動を開始したゴブリン達だったけど、セルシアの挑発を受けて注意は全てセルシアが引き受けてくれてる。
ボク達アタッカー陣は、セルシアの残り体力に気を使いながらゴブリン達を1体ずつ倒していく簡単なお仕事だったよ。
敵の中で一番体力が高そうだったゴブリンファイターでもブレンにかかれば1撃で倒せてしまってたからね。
それで、ゴブリンスカウトの動きだったんだけど、仲間が半分以上やられたら逃げだそうとしたんだよ。
もちろん、シズクちゃんが魔法で牽制して動きを止めて、スズランがとどめを刺したけど、事前に注意を払っておかないと逃げられたかもね。
「……さて、初回の戦闘はこんなものよね。感想はあるかしら」
「特にないわね。これなら先制攻撃が出来る限り苦労することはなさそう」
「そうですね。無理をしなければいけると思います」
「うんうん。この辺なら大丈夫だと思うよ。あとは、もっと強い敵がでるようになってからが問題かも」
「……まあ、そんなところでしょうね。それじゃあ、次の小部屋まで一気に行くわよ」
その後はしばらく小部屋を見つけるごとに、適宜倒していってトントン拍子に奥へと進んでいった。
試しに、先制攻撃でサンダーボルトを撃った事もあったんだけど、1発でゴブリンが全員倒せちゃったんだよ。
その結果を受けて、サンダーボルトはボス戦まで禁止となりました。
さて、いくつかの小部屋を潰してきたしそろそろ中盤戦だと思いたい。
この次の小部屋で待ち構えているのは何かなー。
「む……、今まで見たことのないゴブリンがいるよ」
「ええ、確認したわ。ホブゴブリン、普通のゴブリンよりも攻撃力も体力も高い強敵ね」
やっぱり強敵なんだね。
さて、次の一手はどうしようか。
いつもお読みいただきありがとうございます。
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~あとがきのあとがき~
このダンジョンは格下という事でサクサク進みます。
ゴブリンばかりで手に入るアイテムもあまりおいしくないですからね。
このダンジョンは、もっともレベルが低い転職石の入手場所として有名です。
逆をいうとクリア報酬の転職石くらいしかおいしいアイテムがほぼないという……





