37.意外と大事なスキル取得とスキルカスタマイズです!
またも5,000文字越え。
実に済まぬ……
ユーリさんの意外な交友関係と、有名人とのいきなりな邂逅に驚いてるリーンですよ。
まさか、ユーリさんがあのサイトの管理人の方とフレンドだったとは。
でも、そんな有名人がボクになんの用なのかな?
「あなたがユーリの言っていた新人さんよね。最近じゃ珍しくライトニングシーズーから始めたっていう」
「むぅ、やっぱりライトニングシーズーは珍しいのですか。こんなに可愛いのに」
「そうね、可愛いのは認めるけど、テイマーやサマナーにとって一番大変なスタート直後が大変なの。ライトニングシーズーだと、サンダーボルトしか使えなくて、他のモンスターをテイムするには不向きだから」
「……確かにそれは認めますよ。ほとんどのモンスターが一撃ですので」
「まあ、そう言う訳だからスタート直後のパートナーとしては不向きなのよ。二体目以降の火力役としてはそこそこ便利なんだけどね」
苦笑しながらユエさんがそう教えてくれます。
確かに、そう言われると二体目以降の方がぴったりですよね。
シズクちゃんは可愛いので後悔してませんが!
「ユーリと会って話をしてた時、あなたの話が出てきたの。そうしたら興味が出てきて、今日連れてきてもらったのよ」
「まあ、そう言う訳ね。ちょっとしたサプライズにはなったでしょう?」
「十分に驚いたよ。それにしてもユーリさんとユエさんって、どんな関係なのですか?」
「ああ、それ。昔、私が最前線にいた頃によく組んでいたパーティメンバーの一人って感じかしら。その中でも、今でも交流が続いているフレンドね」
「そうだね。ユーリとは名前も似てるし気があったから、今でも時々会って話をする間柄かな。でも、昔はユーリも最前線組だったけど、ユーリは攻略の前線から身を引いたからね。……最近は私も忙しいから前線組じゃなくなってるけど」
「そうだったのですか。ユーリさんもすごい先輩だとは思ってましたが、そんなにすごいプレイヤーだったのですね」
「あれ? ユーリに聞いてないの? こう見えて結構すごい二つ名を持っているのよ?」
「二つ名ですか?」
「ユエ、余計な事は言わないの! リーンちゃんもあまり気にしないでね。最近だと、二つ名に匹敵するような功績は残してないんだから」
「でも、プレイヤーの間でついた二つ名なんてそんな簡単にはなくならないよ? 実際、掲示板界隈では今でも名前が出てるし」
「あの、二つ名って何ですか?」
「えっとね、プレイヤーがつけたその人のあだ名みたいなものかな? 私の場合は【従魔博士】なんて呼ばれてるよ」
「……私は【幻想姫】ね。幻想種をメインに連れ歩いていたからついた二つ名よ」
「そうだったんですね。知りませんでした」
「掲示板とかで調べないとなかなか知らないものだからね。あまり気にすることはないよ」
「はい、でも、一応覚えておきます」
「……私としては忘れてほしいんだけど。そう言えば庭を改装してるのかしら。家がログハウスになってるし、現在進行形で庭の裏手から木が生えたりしてるけど」
「昨日、ガイルさんが来てハイネさんにリフォームをお願いしたんですよ。そうしたらこうなりました」
「なるほどね。ハイネ爺の悪い癖が出たのね」
「あっちの方は忙しそうだし、こっちで話をしましょうか」
「……その前に、私はハイネ爺にリーンちゃんへのプレゼントを渡してくるわ。ハイネ爺の事だから、私が渡すプレゼントのことも考えて庭の整備をしてると思うし」
「わかったよ。ハイネさんは家の裏側の方にいると思うよ」
「でしょうね。今まさに木が生えていっているもの。それじゃ、すぐに戻るけど行ってくるわね」
「行ってらっしゃい」
ユーリさんが立ち去った後はユエさんと二人になったよ。
……うん、何となく気まずい。
「リーンさん、このゲームは楽しい?」
「……え? 楽しいですよ。たくさんのモフモフに囲まれて暮らせるなんて最高です!」
「ユーリに聞いたとおりモフモフしたパートナーが好きなんだね」
「はい、それはもう。とっても大好きですよ」
「そっか。それなら今後も頑張ってパートナー達を集めないとね」
「はい! 今の目標はベルの森のフォレストキャットとナイトオウルを仲間にすることです!」
「……ああ、あの2体ね。ベルの森から先は結構大変だけど、レベルを上げてれば何とかなると思うからそっちも頑張ってね」
「はい、わかりました。頑張っていきますね」
「うんうん、その意気込みだよ。ところで、私とフレンド登録しない? リーンさんって面白そうだから、今後も色々と話がしてみたいかも」
ユエさんからフレンドに誘われるなんて思ってもみなかったよ!
「ボクでよかったら是非登録してほしいんだよ!」
「うん、それじゃあ、申請を送るね。……はい、完了できました」
「これからよろしくお願いします、ユエさん」
「もっと砕けた言葉でいいよ。私もリーンちゃんって呼ばせてもらうけどいいよね」
「ええと……うん、大丈夫だよ。よろしくね」
「うん、よろしく」
「あら、こっちはなかなかいい雰囲気になってるわね。早速、似たもの同士、意気投合したのかしら?」
ハイネさんに会いにいっていたユーリさんがいつの間にか戻ってきていたよ。
意気投合って、まだフレンド登録しただけなのに。
「まだボク達はフレンド登録しただけだよ」
「それ自体が珍しいのよね。ユエは滅多にフレンド登録はしないからね」
「もう、ユーリちゃん。事実だけどこの場で言う事も無いじゃない」
「まあ、大したことじゃないでしょ。そう言えば、ガイルから私に聞きたいことがあるって聞いたけど、何を聞きたいのかしら?」
「ああ、そうだった。ユーリさん、シズクがレベル10になって新しいスキルの取得と、雷魔法のスキルカスタマイズができるようになったらしいけど、これって何?」
「ああ、レベル10になったのね。おめでとう。新しいスキルの取得は、その名前の通り新しいスキルを取得する事ね。パートナーのステータスから、空白になっているスキル欄を選んで、そこを操作することで覚えられるわ。ただ、取得出来るスキルはいくつかのスキルの中から1つしか選べないから注意ね。このスキル選択は、現在課金アイテムでしかやり直しが利かないし、やり直せる期間も決まってるから要注意ね」
「なるほど、注意して選ぶね」
早速、シズクちゃんのステータスを表示させ、空白になってるスキルを選択。
すると、新しいスキル名が2つ浮かび上がったよ。
「ライトニングシーズーの最初の追加スキルは【マジックオーバーアタックⅠ】と【消費魔力軽減Ⅰ】かな。効果についても説明してあげようか?」
おお、ユエさんが教えてくれるのか。
トッププレイヤーの解説とか是非に聞きたいよね。
「お願いします。教えてほしいな」
「うん、わかった。【マジックオーバーアタックⅠ】はMPを過剰に使用して魔法の威力を高めるスキルなの。最終的には、魔法攻撃の威力は150%まで上昇するかな」
「それはすごいですね! では【消費魔力軽減Ⅰ】はどのような効果かな?」
「そっちは普通に魔法やスキルを使う時に消費するMPを軽減するスキルだね。【マジックオーバーアタック】と【消費魔力軽減】は今後もスキルレベルが上がるけど、最初に覚えた方しか覚えられないから要注意だね」
「そうなんだ。ちなみに、どっちのスキルを覚える人が多いの?」
「圧倒的に【マジックオーバーアタック】よ。ライトニングシーズーの最大の利点は一撃の攻撃力だから、そっちを重視する人が一般的ね」
うーん、【マジックオーバーアタック】か……
それって今でも悪い燃費をさらに悪くするって事だよね。
多分、威力の上昇率を考えると燃費がよくなると思うけど
「ちなみに【消費魔力軽減】を覚えたら何か不都合があるの?」
「あえて言うなら【マジックオーバーアタック】が覚えられなくなることかな。いざというとき、必殺の一撃が使えないのは困るからね」
おお、必殺の一撃とはロマンがある響きだよ。
でも、それだけだと弱いよね。
【消費魔力軽減Ⅰ】でも25%のMP消費を軽減してくれるみたいだし。
「それからスキルカスタマイズってなにかな?」
「スキルカスタマイズは、その名前の通り、スキルの方向性を決めることができるシステムなの。【雷魔法】を選択すると、カスタマイズ項目が出てくると思うけど、ライトニングシーズーの最初のカスタマイズ項目は、【雷魔法攻撃力強化Ⅰ】と【下級魔法取得Ⅰ】かな。」
「それぞれ、魅力的な響きなんだよ……これもどっちをとる人が多いのかな?」
「こっちも断然【雷魔法攻撃力強化】だよ。ライトニングシーズーは攻撃力が第一だからね」
「【下級魔法取得】はあまり覚えないんです?」
「【雷魔法攻撃力強化】が有効すぎるからね。最大まで強化したら、攻撃力30%まで強化できるから。対して【下級魔法取得】はその名前通り、雷魔法の下級魔法を覚えるだけなんだよね。ライトニングアローとかライトニングバレットとか、そう言う下級魔法を覚えられるけど、燃費がよくて威力が低い魔法を使えるようになるだけで、肝心の最大攻撃力は上がらないからね」
なるほど、そう言うことですか。
それなら、ボクがシズクちゃんの成長方針を決めるなら、これしかないじゃないですか!
「解説ありがとうございました。ボクは【消費魔力軽減Ⅰ】と【下級魔法取得Ⅰ】を覚えますね」
「……育て方は個人の判断だからあまり口を挟みたくないけど、どうして不人気な方を2つとも選んだの?」
「まず、【下級魔法取得Ⅰ】は今後もシズクちゃんをメインアタッカーとして使う上で、オーバーキル気味で燃費の悪いサンダーボルトだけでは厳しいと判断しました。【消費魔力軽減Ⅰ】も戦闘中に息切れを起こさないための対策です」
「そこまで考えてるなら止めないけど、ライトニングシーズーみたいな火力特化型パートナー達は瞬間火力を追い求めた方が便利だよ?」
「心配はごもっともですが、シズクちゃんには今後も相棒として頑張ってもらいたいのです。なので、瞬間火力が上がる人気の選択ではなく、こちらの方を選びますね」
「わかったよ。それじゃ、何か困った事があったら私やユーリに相談してね。出来る事なら力になるから」
「うん、その時はお願いしますね」
話し合いも終わったので、サクッと【消費魔力軽減Ⅰ】と【下級魔法取得Ⅰ】を覚えます。
【下級魔法取得Ⅰ】で覚えたのはライトニングアローとライトニングマインですか。
ライトイングアローは、雷の矢を飛ばす基本的なスキルだね。
ライトニングマインは、地面に見えない雷属性の地雷を設置して触れた敵を感電させて、ダメージとバッドステータス『感電』にするんだね。
感電状態自体はライトニングアローでもなることがあるけど、かなり確率は低いみたいだよ。
早速試射をしたいところだけど、的もないし、ハイネさんが作業中だからいなくなることもできないよね。
「それにしてもリーンちゃんって変わってるよね。不人気だって言われた方のスキルを躊躇なく選べるんだから」
「他の人に必要性がなくても、ボクには必要だからね」
「うん。そう言う考え、私も好きだな。……ああ、そうだ。ライトニングシーズーがいると聞いてお土産を持ってきてたの。受け取ってもらえるかな?」
ユエさんが取り出してきたのは、小粒なイチゴのようなもの。
鑑定すると『ワイルドストロベリー』って出たよ!
シズクちゃんの大好物だね!!
「ありがとうユエさん! ワイルドストロベリーが手に入らなくて困ってたんだよ!」
「ワイルドストロベリーは第3エリアまで進まないと手に入らないからね。とりあえず100個ほど集めてきたからどうぞ」
「100個も……本当にありがとうございます!」
「どういたしまして。喜んでもらえてよかったよ」
「ああ、でも。こうなると、ワイルドストロベリーを安定して入手する方法がほしいんだよ」
「それなら農業に手を出すって方法もあるけど……」
「農業ですか? どうすればいいの?」
「庭は持っているみたいだから、ハウジングメニューの『施設拡張』で畑を作れるよ。庭の広さにもよるけど、この飛行庭なら12面くらいは畑を用意できるんじゃないかな?」
「なるほど。では早速……」
「その前に、農業を行うなら、【農業】スキルは必須になってくるよ。既存の野菜や果物を種や苗に変換する『種苗作成』とかのスキルは必須になってくるし、それに農業はほぼ毎日手入れが必要だから、仮に12面手に入れたらその維持管理と収穫に種植えだけでも3時間くらいはかかっちゃうし」
……ワイルドストロベリー量産計画は、始まる前から頓挫したんだよ。
そんなところに救いの手を差し伸べてくれたのは、ユーリさんだったよ。
「リーンちゃん、ガイルから聞いたけど、確か『アントの卵』を入手してたわよね? だったらそれを孵化させて、ワーカーアントに進化させてから【農業】スキルを覚えさせれば大丈夫よ」
おお、使い道がないと思っていたアントの卵にそんな使い道があったとは!
……でも、アリなんだよね。
いつもお読みいただきありがとうございます。
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作者のモチベーションアップにつながります。
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~あとがきのあとがき~
火力特化型のはずが使い勝手のいい下級魔法も覚え始めたシズクちゃん。
MP回復上昇も含めれば、かなり長時間の運用にも耐えられるようになりました。
なお、INTはバカ高いので下級魔法であってもそれなり以上の火力は出る模様。
でも普通は火力強化系スキルをとって一撃必殺を狙うのが基本なんだよなぁ。





