34.ガイルさんからの新築祝いです!
沙樹ちゃんの家でinfini fantaisieについて色々調べたり、ロビンと一緒に遊んだりして帰ってきました。
VRのモフモフ達もいいですけど、リアルのモフモフもやっぱりいいよね!
さて、晩ご飯を食べたら寝る支度をすませてゲームにログインです。
開始場所はいつも通り瑠璃色の風の休憩室から。
IFの世界に降り立つと今日も諸先輩方が既に来ていらっしゃいますよ。
「お、リーン。ログインしたようだな」
「あ、ガイルさん。こんばんは」
ガイルさんも休憩室にいたみたいだよ。
さて、ユーリさんはどこにいるかな?
「ガイルさん、ユーリさんはいないのかな?」
「ユーリか? 確か、フレンドに会いに行くって言ってたぞ」
「ありゃ、おでかけ中か。それは残念だよ」
おでかけ中なら仕方が無いよね。
シズクちゃんのスキルの事を聞くのはまた今度にしよう。
「ユーリに何か用か? 俺でわかることなら教えるが」
「パートナーのことだからユーリさんに聞きたかったんだよ」
「なるほどな。確かにそれはユーリに聞いた方がいい」
「だよね。だから、そっちはまた今度にするよ」
別に急いで決めなくちゃ行けない事でも無いし、今度会えたときでいいよね。
早く決めなくちゃ逃げるものでもないし。
「ところでリーン、これから暇か?」
「これからパートナー達のお世話をしなくちゃいけないかな」
「ふむ、つまり自分の家に行くんだな。それなら好都合だ」
「ボクの家に用事?」
「昨日、新築祝いを渡すって言ってあったろ? それを連れていくんだよ」
「連れていくってどういうこと?」
「それは本人と直接話した方がいいな。おーい、ハイネの爺さん。こいつが新しく家を買ったリーンだ」
ガイルさんが呼んだのは、背の低いお爺ちゃん。
多分だけど、ドワーフって種族だよね。
「おお、ガイル。そいつか、新人なのにハウジングに手を出した、珍しい娘というのは」
「ああ、そうだ。リーン、この人はハイネ。瑠璃色の風の工芸士……簡単に言うと木工職人だ」
「ハイネ=ピジョンブラッドだ。ハイネでいいぞ。それから、敬語は無しで構わん。わしも苦手なのでな」
「わかったよ、ハイネさん。リーンだよ、よろしくね」
「ああ、よろしく頼む。……さて、ガイルから話は聞いているか?」
「ん? 何も聞いてないよ?」
話ってなんだろうね?
「ガイル……」
「いいだろ? サプライズの方が面白いってもんだ」
「……まったく、この男は。リーン、今日の用事はお前さんの家をリフォームすることだな」
「え、リフォーム? 建て替えるの?」
「ああ、家自体も入れ替えるな。まあ、お前さんは俺とハイネの爺さんに着いてくればいいから」
「一応、ボクの家なんだよ?」
「あまり気にすんな。せっかくの飛行庭だ、綺麗に飾った方がいいだろう」
「まあ、そうかもだけど。お金もあまりないよ?」
「そっちも気にせんでいい。わしとガイルからのプレゼントという事で格安で引き受けよう」
「格安ってどのくらい?」
「そうじゃの……始めて3日目じゃったか。それなら懐具合はまだまだ寂しかろう。全部ひっくるめて1万Gでどうじゃ?」
うーん、1万Gと言うのが高いか安いかよくわからないよ。
そもそも、昔やったことのあるMMOも2ヶ月経たないうちに止めちゃったから、ハウジング自体初めてなんだよね。
「ガイルさん、1万Gって安いの?」
「うん? ああ、安いぞ。家1軒分まるごと家具を揃えようと思ったら、その数十倍はかかるからな」
「……それはボクがもらい過ぎな気がするよ」
「はっはっは、若いもんが気にするな。他人の家を仕立てるのはわしの趣味じゃて、付き合ってくれればそれでいい」
うーん、どうもこれは断ることができなさそうだよ。
……もらってばかりだけど、大人しく受け取ろう。
「それじゃあ、お願いします」
「うむ、それでいい。さて、それでは早速お主の家に行くぞ」
「そうだな。リフォームしようと思ったら時間もかかるからな。ここに入口を出しても構わないぞ」
「休憩室に門があったら邪魔じゃないかな?」
「端っこの方に出しておけば邪魔にならんじゃろう。それに家の中に入れば、外から入れないように入口を消すことも出来るからのう」
「そうなんだ、知らなかったよ」
「普通は始めて2日目でハウジングに手を出すものではないからのう。……あそこの壁際なら出しっぱなしでも邪魔にならん。あそこに門を出すのじゃよ」
「うん、わかったよ」
ハイネさんに指定された壁際に、ボクの飛行庭に続く門を呼び出す。
鍵を差し込んだらいきなり門が現れる演出はまだ慣れないね。
「うん、開いたよ。それでは、どうぞ」
「うむ、お邪魔するぞい」
「邪魔するぜ」
ガイルさんとハイネさんを連れて入った庭は、やっぱり遮るもののない青空の下にぽつんと小さな家が建っているだけの庭だよ。
ボクがこっちに入ったことに気がついたのか、シズクちゃんが飛びついてきたよ。
うん、今日もシズクちゃんは可愛い!
「ほほう。話は聞いていたが、本当にライトニングシーズーじゃな。こうして見ると、ライトニングシーズーもめんこいのう」
「ハイネさんもペットを飼ってるの?」
「リアルの方でシュナウザー犬をな。なかなか賢くて可愛いぞい」
「そうなんだ。シュナウザーか、どんな犬なの?」
「そうじゃのう。今度、写真を見せてやろう。今はまず庭と家のリフォームじゃ」
「うん、約束だよ! それで、リフォームってどうやるの?」
「そうじゃの、まずはガイル、あれを渡せ」
「はいよ。リーン、これは俺が昔使ってた家だ。もう使うことはないからやるよ」
ガイルさんが取り出したのは、スノードームみたいな玉の中に入った2階建てのログハウス風の家、のミニチュア?
くれるって言うので受け取ったらアイテム名が『2階建てログハウス』ってなってたよ。
「そいつは『家』アイテムって言ってな。庭に建っている家を入れ替えるアイテムだ。ハウジングメニューに『家の交換』ってのがあるから、そこから今渡した2階建てログハウスを選んでみろ」
「ハウジングメニューからだね。じゃあ、家の中に入らないと……」
「ハウジングメニューの操作なら、その門の隣の端末からでも操作できるぞい。それに、自分の家ならば普通にメニューにも『ハウジング』の項目が追加されているはずじゃて」
……そうなんだ。
確かに、出入り口の門の横には家の中にあったのと同じ形の操作端末があるね。
それからメニューはっと……うん、確かにメインメニューの中にも『ハウジング』の項目があったよ。
それじゃあ、メインメニューからハウジングを開いて、その中の家の交換を選択っと。
「今現在が『小さな家』ってなってるよ?」
「そいつは全ての庭に着いてくるデフォルトの家だよ。交換したらアイテムになるから心配すんな」
「わかったよ。それじゃあ『2階建てログハウス』を選択っと」
家の交換操作をしたら、配置されていた小さな家が消えて2階建てのログハウスが現れたよ!
インベントリを確認したら、『2階建てログハウス』がなくなっていて、代わりに『小さな家』が入っているね。
「まずは家の設置は完了だな。リーン、庭についてだが何か希望があるか?」
庭の希望か……
そうだね……
「ドッグランがほしいよ。後は、今度フクロウを捕まえてくるから止まり木みたいな物もほしいね」
「ふむ、ドッグランに止まり木か。せっかくじゃし、普通に木も植えるとしよう」
「え、庭って木も植えられるの?」
「できるぞ。ハイネの爺さんも家具としての木は何本か持ってるだろう?」
「もっておるぞい。最近は作っていなかったから在庫は少ないが、明日にでも追加で持ってくることにしよう」
「そうしてくれ。それで、ドッグランは作れるか?」
「そちらも問題ない。じゃが、この後、ユーリも新築祝いを持ってくるのであろう? それならばいっそ家の横手から裏側にかけて、公園のように整備してしまおうと思うがどうじゃ?」
「いいな、それ。それならパートナー達も自由に遊べるだろ。リーン、それで構わないか?」
「ボクは構わないけど……本当にいいの?」
「かまわん。年寄りの趣味じゃ。むしろ頼ってもらった方がありがたいわい」
「それじゃあ、お願いするね」
「そいじゃ家の外は決まりだな。まずは外からやるか?」
「いや、外は明日以降じゃ。時間もかかるし、まずは家の中を仕上げるぞい。……ああ、でもその前に、家の配置をもっと門よりにした方が良さそうじゃの」
「わかった。リーン、さっきのハウジングメニューに『家の配置』ってメニューがあるからそれを出してくれ」
「わかったよ。……3D映像みたいなのが出てきたけど、どうすればいいの?」
「その映像は庭の配置を表してるんだ。家の部分をつかんで動かせるから、そうだな、爺さんの指示に従って家の場所をずらしてくれ」
「わかったよ。ハイネさん、どれくらい動かせばいいの?」
「そうじゃのう……まずは庭の中央付近まで家をずらしてみてくれるか?」
「わかった。……こんな感じ?」
「うむ、少し見てこよう」
ハイネさんは家の方に駆けていって、ぐるっと一周して戻ってきたよ。
「うむ、もう少し家を奥側の方がいいじゃろう。少しずらしてもらえるか?」
「わかったよ。……これくらいでいい?」
「うむ、もう一度見てくる」
ボクが家をずらして、ハイネさんが家の周りを見てくる。
そんな事を数回繰り返して家の配置が決まったよ。
「家の場所はこれでいいな。次は家の内装じゃ。行くぞい」
ハイネさんは元気なおじいちゃんだね。
ボクの家のことなのに、ボクよりも積極的だよ。
ガイルさんも楽しそうに見てるだけだし、いつもの事なんだろうね。
ああ、ハイネさん待ってほしいんだよ!
いつもお読みいただきありがとうございます。
「面白かった」「これからも頑張れ」など思っていただけましたらブクマや評価をお願いします。
作者のモチベーションアップにつながります。
誤字・脱字の指摘、感想等ありましたらよろしくお願いします。
~あとがきのあとがき~
ハウジング楽しいですよね?
作者もハウジングを始めたらそれだけで数日潰した経験が何度もあります。
……ええ、この1話だけで終わらせる予定だったハウジング話が伸びた事への言い訳ですよ。
あと、リーンちゃん、ドッグランがほしいって言ってますが、そもそも全体を自由に走り回れるのにドッグランって必要ですかね?
そこら辺、気付いていないあたりとからしいと言えばらしいのですが。





