27.アイテム生産のお時間です!
瑠璃色の風に帰還したらすぐに中庭へと向かいます。
ボクの飛行庭を出すためだね。
別に飛行庭の扉を出す場所が中庭じゃないとダメという事は無いと思うけど、ユーリさんが出したのも中庭だったし何となく中庭じゃないとダメなのかな? と思ってしまった訳でして。
ともかく、中庭へと移動して飛行庭の鍵を取り出し、ボクの飛行庭を召喚ですよ!
「リーン、そこでなにをやってるの?」
飛行庭を呼び出そうとしたら背後から声をかけられたよ。
この声はシリルさんですね。
もういきなり声をかけられても驚きませんよ!
「あ、シリルさん。こんにちはです」
「うん、こんにちは。それで、中庭でパートナーと遊ぶの?」
「いえ、パートナーとのスキンシップも大事ですが、今はこれを使おうと思ってたんだよ」
ボクはシリルさんに飛行庭の鍵を見せた。
シリルさんは飛行庭の鍵を見て、ため息を一つついてからこう告げてきた。
「開始2日目にしてハウジングに手を出すとは思わなかった。普通は色々と余裕ができてから手を出すコンテンツ」
「いえ、ボクにとっては優先事項だったんだよ。自分の家さえあればモフモフ達全員と遊べるのですから!」
「……ああ、パートナーの開放が目当て。なるほど、それならリーンにはうってつけかも」
「ですよね。そう言う訳なので、サクッと買っちゃいました」
「買うのは個人の趣味だし問題ない。ただ、ハウジングで見栄えのいい部屋を作ろうとするとお金が飛ぶよ? 初心者が手に入る金額とは2桁以上違う金額で」
「……まあ、家が殺風景なのは我慢ですよ。できれば作業用の机や椅子くらいはほしいところだけど」
「……それなら心当たりがある。少し待ってて」
それだけ言い残してシリルさんはギルドハウスに戻っていったよ。
『待て』って言われたし、シリルさんならそんなに経たずに戻ってくると思うから、ボクは噴水そばに設置されてたベンチに座って待つことに。
……そう言えばここの噴水って相変わらず温水が吹き出してるんだよね。
どういう仕組みなんだろう?
「お待たせ。とりあえず、ギルドの共有倉庫から机と椅子を持ってきた」
「お帰りなさい。……ギルドの共有倉庫って勝手に持ち出していいの?」
「あそこに入ってる家具だったら問題ない。一人が大量に持ち出すのは問題だけど、入出庫のログは残るからその心配もほとんどない。あと、ギルドの共有倉庫に入ってる家具は、ギルド所属のカーペンターが練習用に作ったものだから問題ない」
「そうなのですか。それじゃあ、ありがたく使わせてもらうね」
「そうして。それじゃあ、飛行庭に行こう」
「はい。……シリルさんも一緒に来るんですか?」
「そのつもりだけど、まずかった?」
「いえいえ、そんな事は。ただ、本当に何もないですよ?」
「何もない状態の飛行庭って言うのを見てみたいだけ。他のプレイヤーの飛行庭は何度も見てるけど、初期状態の飛行庭って見たことがないから」
「なるほどです。それでは飛行庭を出しますので少し待っていてください」
ボクは改めて飛行庭の鍵を取り出して家に通じる門を呼び出す。
何もないところにいきなり門が現れるのは、何度見ても驚くよね。
家に通じる門が開くと、ボクと一緒にシリルさんもボクの飛行庭に入ってきたよ。
「……そう言えば、他人の家に入るのって許可は必要ないのです?」
「こう言った庭系統の家に入るときは家主の了承があれば特に問題ない。無意識下でも許可が出てれば入れるようになってる」
「……なるほど。結構なハイテクですね」
「フルダイブ型VRゲームで思考制御って言うのは基本的な技術らしい。……それにしても、何もない飛行庭って開放感があっていいかも」
「ボクには殺風景なだけに見えますよ」
「私が知ってる飛行庭だと、色々飾り付けがされてるからどこを見ても青空って言うのは珍しい。太陽の光が降り注ぐのも心地いいし」
「逆に聞きますが、太陽の光が降り注がない飛行庭ってあるの?」
「ハウジングメニューから空の描写を変えられるはず。……ああ、でも、それも拡張機能だから最初は操作できなかったかも」
「……やっぱりそれも課金ですか」
「ゲーム内通貨でも開放できるよ? 確か10万Gだったと思う」
「どちらにしてもボクには手が届かないんだよ……」
「昼の飛行庭もいいけど、夕暮れ時や夜中の星空、朝焼けなんかも綺麗だからそのうちアンロックを考えるといいかも」
「……余裕ができたら考えますね。それじゃあ、家の中に案内します」
「わかった。お願い」
シリルさんと一緒にまだ何もない家の中に入りましたよ。
机と椅子をどこに置くか考えてなかったから、とりあえずリビングに案内します。
「ところで机と椅子はどこに置くの?」
「……正直、考えていなかったんだよ」
「なるほど。とりあえず机と椅子を渡すから受け取って」
「わかりました。……って、結構豪華そうな机と椅子ですけどもらっていいの?」
「構わないよ。同じものがギルド倉庫の中に30セット以上は入ってるから」
そう言うことなら問題ない、のかな?
とりあえず、もらった机と椅子はキッチンの近くに設置したよ。
見た目豪華なダイニングテーブルと椅子だったからね。
「これでとりあえず大丈夫そうだね。ありがとうございました」
「あまり気にしないで。ユーリやガイルも家を買った事を知れば色々と家具をくれると思うから」
「……そんなに甘えていいんでしょうか」
「好きでやってる事だから気にしないでいい。それにギルド所属のカーペンター達に話が伝わったら、家の中をまるごとリフォームされると思うし」
「……それはすごいですね」
狭いとは言え家まるごと一軒をリフォームとか大変そうなのですが。
「それで、リーンは家に戻って何をするつもりだったの? パートナーと遊ぶ?」
「いえ、それも魅力的ですが、今はまずアイテム作成だよ。薬草を採取していたのでポーションの補充と、パートナー達のご飯を作ってあげようと思いまして」
「なるほど。調合は私もできるし教えてあげる。料理も基本はできるからそっちも教えてあげる」
「ありがとうございます。でも、シリルさんにも用事があったんじゃ?」
「特に用事はないから安心して。家にいても暇だからログインしてただけ」
「わかりました。それでは指導をよろしくお願いします」
想定外だったけど、アイテム作成に指導者がついてくれたよ。
まずはポーション作成から始めるから調合からだね。
先ほど設置した机の上に調合用の道具セットを置いて調合作業を開始だよ。
まずは初心者HPポーションを作成しようとしたんだけど、早速シリルさんから待ったがかかった。
なんでも、初心者HPポーションと初級HPポーションでは素材が同じなのに回復量が違うんだって。
【調合】スキルのスキルレベルが3あれば初級HPポーションを作る事も可能だから、そっちを作るように指示されたよ。
スキル経験値的にもそっちの方が多いらししね。
HPポーションの調合過程は、
1.薬草をすりつぶす
2.すりつぶした薬草を水で煮込む
3.煮込み終わったら瓶詰めして出来上がり
の3工程だって。
難しいポーションを作る場合は工程も増えるけど、しばらくはこれだけで十分らしいよ。
それではポーション作りを開始だよ。
まずは薬草をすりつぶす事から開始です。
今持ってる調合セットだと一度に作れるポーションの数は5個までらしいから、薬草を5つ投入して棒ですりつぶします。
このとき、すりつぶした薬草が均等になるようにすりつぶすのがポイントらしいよ。
実際、ボクが最初にすりつぶしたときは、すりつぶし切れてなかった葉っぱがちらほらと残ってたから。
シリルさんの指摘を受けて再度すりつぶします。
今度は上手くすりつぶす事ができました。
次はすりつぶした薬草を水で煮込む作業ですよ。
このときに使用する水は何でもいいらしいけど、可能ならできるだけ混じりっけのない綺麗な水がいいそうです。
ボクが生活魔法を使えることは知っていたみたいで、生活魔法の一つ『クリエイトウォーター』で作り出した水を使うのが最初はお薦めなんだって。
シリルさんの指導に従い、鍋にクリエイトウォーターで水を入れます。
このときの分量だけど、クリエイトウォーター1回の水量でポーション1つ分らしい。
どう考えても水の量に比べてポーションの水量が違うけど、そう言うものらしいね。
ゲームなんだし、あまり深く突っこんじゃいけないところなんでしょう。
鍋に入れた水が沸騰したらすりつぶした薬草を投入。
そのままぐつぐつと煮込むこと数分、鍋の水が透き通るような緑色になったら火を消します。
後は、調合セットから無限に取り出せるポーション瓶に煮込んだ液体を注げば完成です。
鍋の水は大量にあったはずなのにポーションを5つ作ったら残りは消えてなくなってしまったよ。
ゲームとはいえ不思議だよね。
完成したポーションは『初級HPポーション』の品質が★2の品。
★2で一般品質らしいから可もなく不可もなくと言ったところだろうね。
でも、回復するHP量は初心者HPポーションの2倍の60ポイントも回復するんだよ!
上手く作れなくて★1になっても40ポイントは回復するらしいし、初心者HPポーションを作る意味はないみたい。
後は同じ工程を5回繰り返して初級HPポーションを25個完成させました。
スキルレベルも2上昇してレベル5になったし大満足だね!
その後は料理の仕方も教えてもらいました。
と言っても、こっちは普通に料理するだけでいいっぽいんだけどね。
ウサギ肉やウルフ肉から串焼き肉やステーキ、買ってきた野菜や果物からは野菜サラダや果物ジュースを作成したよ。
どれも★2の一般品だったけど、試食してみたらそこそこ美味しかったので満足。
やっぱりちゃんとした調味料や臭み消しのハーブがあると違うよね。
……リアルで料理なんて家ではしないから、シリルさんの指導の賜物なんだけどね。
ともかく、大量に料理をしたことでスキルレベルが6まで上がりましたし大変満足です!
「これで基本は一通り教えたけど。楽しかった?」
「そうですね……。これはこれで楽しかったと思います」
「ならよかった。VRの生産活動は自分で手を動かさなきゃいけない場合がほとんどだから、それが面倒で止める人も結構多い」
「……あー、それはわかる気がします。ボクも毎日コレばかりやってると飽きそうですし」
「冒険の合間に自分で使う分だけでも作れるなら立派なもの。大抵のプレイヤーは買ってすませるし」
「なるほどです。とりあえずボクは出来る限りは自力で何とかしますよ」
「わかった。わからない事があったら遠慮なく聞いて」
「うん、わかったよ。今後ともよろしくね、シリルさん」
「うん、よろしく。それじゃあ、私は帰るから。またね」
「はい、ありがとうございました」
ボクの家から出て行くシリルさんを見送った後は、パートナー達とスキンシップの時間ですよ!
シャンプーでのお手入れはリアル1週間に1回でも多いくらいだそうですし、今はモフモフを楽しみます!
勉強も終わってますし、夕飯の時間まではモフモフを堪能です!
いつもお読みいただきありがとうございます。
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作者のモチベーションアップにつながります。
誤字・脱字の指摘、感想等ありましたらよろしくお願いします。
~あとがきのあとがき~
こちらでも突っこみました生産回。
Unlimited Worldとは立ち位置がまったく異なるので、今後生産場面に触れるかはまったく考えてません。
作るとしてもパートナーのご飯と自分で使うポーションくらいですしね。





