102.交流会後です!
「そろそろお時間です。今日は講習会に参加いただきありがとうございました」
長かったような短かったような、グルーミング講習会も終了のお時間のようですね。
ボクもいままで知らなかったパートナーとふれあえて満足できたんだよ。
ただ、教えてもらった生息地が揃ってもっと先の地域なのは気になりますね。
ボクもレベルを上げて、先に進めるようにするべきなのかな?
「リーンちゃん、サーシャちゃん、お疲れ様。これで講習会と交流会は終了よ」
「お誘いいただきありがとうです。おかげで、もっと先のエリアのパートナー情報を知ることができましたよ」
「私もありがとうございました。このあと、自分のパートナーの好きなグルーミングアイテムを買わせてもらいますね」
「あら、ありがとう。リーンちゃんはどうするの?」
「ボクも足りないものがないかチェックしてみるんだよ。モフモフを愛するものとしては、グルーミングの道具は欠かせませんからね!」
「わかったわ。それじゃあ、グルーミングアイテムを売っている売り場まで……」
アサカゼさんがボクたちを案内しようとしたとき、『草原の目覚め』の店員さんがやってきてアサカゼさんに耳打ちしていったんだよ。
そうしたら、案内しようとしていたアサカゼさんが立ち止まって、改めてボクたちを見てきましたね。
「ごめんなさい。グルーミングアイテムの売り場なんだけど、いま相当混み合っているらしいから、もうちょっと待ってもらってもいいかしら?」
「ボクはかまわないのですよ。明日もお休みですし。サーシャは?」
「私もかまわないです。でも、そんなに混み合っているんですか?」
「どうやら、今日の講習会に参加した人がほとんど追加のグルーミングアイテムを購入しに行ったみたいなのよね。在庫は潤沢に持っているから、品切れの恐れはないんだけど……」
ふむ、在庫はいっぱいあるのですね。
そうなると、ひとつ気になることがあるのですよ。
「アサカゼさん、グルーミングアイテムって先の街の住人から買っているのですよね? それで在庫切れを起こさない量をストックしているのって、お金は大丈夫なのですか?」
「そっちの心配はいらないわ。これでも伊達に長年『草原の目覚め』を経営してきたわけじゃないからね。資金は潤沢よ」
それならよかったのです。
パートナーたちと遊べるお店がなくなってしまうのは寂しいですからね。
「時間を潰さなくちゃいけないわけだけど、どうしましょう? 私のパートナーを見せてあげましょうか?」
「それがいいのです! ね、サーシャ?」
「そうですね。リーンとユーリさんのパートナーくらいしかみたことがないので参考になると思います」
「そうだと嬉しいわね。ただ、私はテイマーだからどれくらい参考になるかわからないけどね」
そうなのですね。
やっぱり、高レベルになるとテイマーとサマナーの戦い方も変わってくるのでしょうか。
「まずは戦闘の主力からね。コール、ストライプ、ルナフェル、プライ」
アサカゼさんが呼び出したのは、体高が二メートルはありそうなワンコに立派な翼を持った猛禽類、それから鋭い爪を持ったチーターなのですよ。
「基本の構成はこの子たちね。まず、ストライプが盾役として注意を引きつけ、空からルナフェルが攻撃、地上はプライが担当よ。回復や補助は私が務めるわ」
なるほど、よく考えられた構成なのです。
「やっぱり、突き詰めていくと、テイマーやサマナー自身はサポート役に回るほうがいいのでしょうか?」
サーシャもいいところを聞きますね。
ボクの場合、すでにサポート役ですが!
「そうね……テイマーやサマナーはある程度のレベルになってくると、パートナーの戦闘力のほうがプレイヤーよりも高くなってくるわ。そのときに、完全サポート型に転向するか、それでも戦闘スタイルを変えないか、好みの分かれるところね」
どちらがいいというわけではないのですね。
ちょっと意外なのです。
「ちなみに、テイマーでサポート役に転向したプレイヤーの中でも有名だったのが私で、自身も攻撃タイプだったのを変えなかった中で有名だったのはユーリよ」
おお、ここでユーリさんの名前を聞くとは驚きです。
でも、いまはサポートもできるようになってますよね、ユーリさん。
「この話はかなり古い話なんだけどね。……っと、話がそれたわね。テイマーにせよサマナーにせよ、基本は頑丈な盾役が一、安定した地上タイプのアタッカーが一、その他遊撃や空中タイプ魔法タイプなどのアタッカーが一という組み合わせが基本よ」
「なるほどなんだよ。ボクは五匹呼べるから、そのときの気分に応じて呼んじゃうけど、基本はそうなんですね」
「私は逆に二匹までしか呼べないから慎重にならないといけないわね。今のところはドラゴンのブレンが盾役も兼任しているけど……」
「ドラゴンの頑丈さならある程度は通用するけど、そのうち専任の盾役が必要になるわね。さっき、ハウンドドッグを連れていたみたいだし、その子を育てればいいんじゃないかしら」
「わかりました。その方針で育ててみます」
「先輩らしいことができてよかったわ。それじゃあ、次はかわいい系を見せてあげましょうか。リターン、ストライプ、ルナフェル、プライ。コール、モンブラン、シンギング、ジュエル」
先ほどまでいたパートナーたちが送り返されて、新しい子たちが呼び出されました。
今度はリスに小鳥、それから額に小さな石をつけた……なんでしょうね、モモンガ? みたいな小動物です。
「見てもらえばわかると思うけれど、モンブランはリス系統、シンギングは小鳥系統、ジュエルはカーバンクル系統のパートナーよ。こう見えてもレベル170だから戦うとあなたたちより強いわよ」
うわー、見た目とは裏腹に恐ろしい子たちだったんだよ!
PvPのときなどで相手の油断を誘えるんだとか。
ボクにはあまり関係のない話ですね!
そのあとも、いろいろなパートナーを見せてもらうことができましたよ。
定番のドラゴンとかグリフォンもいましたし、ペガサスとかユニコーンなんていうファンタジーな子もいました。
ちょっと意外だったのは、レッサーパンダとかアライグマとかアルパカとかファンタジーっぽくない子もいることですかね。
このような子たちは、進化しても見た目はほとんど変わらないらしいのです。
そして、販売コーナーが空いてきたと連絡をもらったので、グルーミングアイテムを買い出しに出発です。
サーシャはあれこれいろいろと買いそろえてましたね。
ボクですか?
足りないものがないか探しましたが、ここで取り扱っているものはすべて持っていましたよ。
どれだけ奮発してくれたんでしょうかね、斬魔さん。
買い物も終わり、あとは帰るだけとなったとき、アサカゼさんから提案を受けたのです。
「リーンちゃん。もしよければ、『草原の目覚め』で少し働いてみない?」