96.夜の草原の目覚めですよ!
改めましてこんばんは、リーンですよ。
夜になりましたので、早速『草原の目覚め』に突撃したいと思います!
ああ、日課のポーション作り等は昼間に済ませておきましたよ。
「あら、リーン。そんなに慌ててどこに行くの?」
「おや、サーシャ。こんなところで会うとは」
ギルドハウスを出て行こうとしたところで、サーシャと会ったのですよ。
サーシャはボクとは逆に、ギルドハウスに戻ってくるところでしたが。
「私は用事を終えて戻ってきたところよ。リーンはどこに行くの?」
「ドライフラウにある『草原の目覚め』に行くのですよ!」
「ああ、あそこね。リーンなら気に入りそうだわ」
サーシャは納得したように、うんうんと頷いています。
「サーシャもいったことがあるんです?」
「私は話しに聞いただけね。パートナーと一緒に遊べる喫茶店ということしか知らないわ」
ほほう、それはいいことを聞いたんだよ!
「よし、それならサーシャも一緒に行くんだよ!」
「……どうして、それなら、になるのかしらね」
「別にいいじゃないですか。このあと予定があるのです?」
「特にないわね。……まあ、リーンと一緒なら退屈しないだろうし、いいか」
よし、サーシャの同行も決まったし、早速出発なんだよ!
気合いを入れてドライフラウに転移したら、すぐに『草原の目覚め』へと向かう。
お店に着くと、昼間にはほとんどいなかったお客さんなのですが、いまはいっぱいいたんだよ!
「はあ、やっぱり人気のお店なのね」
「サーシャは知っていたのです?」
「ユーリさんから聞いたことがあったのよ。ギルド『草原の朝』がやっているお店で、パートナー関連のことなら大抵のことは揃うお店だって」
「そうなのですね。さて、ここにいても始まらないのですよ。早くお店に入りましょう」
「そうね。そうしましょう」
お店の中に入ると、店員さんが案内してくれましたよ。
テラス席は満席だったようなので、店内のボックス席になりました。
「リーンはなにを頼むのかしら?」
「昼間はストロベリーパフェとイチゴミルクだったのです。今度はバナナパフェにするのですよ」
「……あなたもパフェが好きね。私はパンケーキにするわ」
注文も決まったので、店員さんを呼びます。
現実と違って作り置きを持ってきてくれるだけなので、すぐに頼んだものが出てくるのがいいですね。
「うん、バナナパフェも美味しいのです!」
「パンケーキも美味しいわ。シズクにはそのドライフルーツだけ?」
「ワイルドストロベリーのドライフルーツですよ。シズクちゃんも喜んで食べてくれるので、オッケーなのです」
ワンパターンのようにも思えますが、大好物の決まっているパートナーたちには大好物を使った料理を与えたほうがいいらしいのです。
なので、シズクちゃんにはワイルドストロベリーのお料理なんだよ。
「あら、リーンちゃん。本当にきてくれたのね」
「あ、アサカゼさん。遊びに来たんだよ」
店の奥から店長のアサカゼさんがやってきた。
軽く会釈をして、挨拶なんだよ。
「どう、結構人気でしょ? そっちの子はお友達?」
「はい、ボクの友達でサーシャです。サーシャ、この人はここの店長でアサカゼさんですよ」
「ここの店長ってことはギルドマスターね。初めまして、サーシャです」
「はい、初めまして。サーシャさんは従魔系の職業じゃないのかしら?」
「ええと、サマナーではあるんですけど、ここで出せるような小型のパートナーはほとんどいなくて」
「そうなのね。それなら、あとで庭のほうに行ってみるといいわ。あっちで遊んでいるお客様も多いから」
おお、ここにいるお客さんですべてではないのですね。
そちらにもあとで顔を出してみましょう。
「……店長、いま、その子のことリーンちゃんて呼んでました?」
「ええ、そうよ。それがどうかしたの?」
『草原の目覚め』の店員さんがアサカゼさんに声をかけてきたんだよ。
ボクのことを確認しているってことは、ボクに用事があるのかな?
「ひょっとして、最初に四大魔法パートナーの派生条件を発見したあのリーンさんですか!?」
「どのリーンかは知らないけど、多分そのリーンであってると思うんだよ。ユエさんに教えたのはボクだし」
「ふぁぁッ!? 失礼しました! 私、『草原の朝』のミーミルっていいます。リーンさんには、一度会ってお礼をしたくて」
「お礼? 特にお礼されるようなことはしてないんだよ?」
ボクのしたことなんて、シズクちゃんをボクの好きなように育てたらたまたま派生進化させたことぐらいだからね。
それでお礼を言われるのもおかしな話なんだよ。
「そんなことないですよ。リーンさんが四大魔法パートナーの派生条件を見つけてくれたおかげで、四大魔法パートナーを育てるプレイヤーが一気に増えました。いままでは瞬間火力ばかり注目されていたのに、最近では支援能力や高MPによる削り役など様々な役割が期待されています。それに……」
「はいはい、ストップ。それくらいにしておきなさい、ミーミル。これ以上はリーンちゃんに迷惑がかかるわよ」
「……あ、わかりました。ともかく、リーンさんのおかげで四大魔法パートナーが見直されたんです。……その結果、たくさんのシーズーやペルシャ猫が遊びに来てくれますし」
主な感謝理由は最後の言葉に集約されてる気がするんだよ。
でも、たくさんのシーズーに囲まれるのは悪くないね。
「それではこれで失礼します。ありがとございました」
ミーミルさんは、一言挨拶をしたら立ち去っていったんだよ。
ただ、いまの騒動で、お客さんの視線がこっちに集まっていて居心地がちょっと悪いかな。
「……料理を食べ終わったら庭のほうに移動しましょうか。私もとっておきの子たちを紹介するわ」
「それは楽しみなんだよ! サーシャ急ぐのですよ!」
「はいはい。あ、リーン、そんなに急いでアイスを食べたら……」
はぅっ!?
頭がキーンってなったんだよ!
VRだからって、こんなところまで再現しなくてもいいじゃない!