95.おいしいおいしいカフェメニューです!
「そういえば、このお店ってなんのお店なのかな?」
アサカゼさんとお互いのシーズーを見せ合ったあと、テラス席に戻って率直な質問をしてみる。
よく考えたら、お店にきたのにメニューもなにも見てないんだよ。
「そうね、そこを説明していなかったわね。ここはパートナーと一緒に食事ができる喫茶店なのよ。食事だけじゃなくて、一緒に遊んだりすることもできるけどね」
「ほほう、そうなのですね。では、とりあえず食事にしましょうか」
「はい、かしこまりました。メニューを持ってくるわね」
アサカゼさんを待っている間、シズクちゃんを抱きかかえて待っています。
すると、足をなでるようなくすぐったい食感があったのでそちらを見ると、そこにはかわいいニャンコがいたんだよ。
「おお、ニャンちゃんですね。この子も誰かのパートナーですかね?」
「ああ、その子は私のパートナーよ」
この子は店員さんのパートナーさんのようです。
人なつっこいですし、かわいらしいですね。
「かわいい三毛猫ですね。種族はなんなのですか?」
「サポートミケって言う種族よ。成長させるともっと大きくなるんだけど、意図的に成長をさせていないのよ」
「なるほど。ボクのパートナーにもそういう子がいるのですよ」
「そうなの? パートナー枠を育てていない子で潰すのは、結構痛手になるんだけど……」
「かわいければ問題ないのです。コール、白玉」
育てていないもの同士ということで、ファーラビットの白玉を呼び出してみます。
呼び出されたことがない白玉ですが、華麗に着地を決めボクに顔をスリスリさせてきますね。
ういやつういやつ。
「ああ、ファーラビットね。成長させた子もかわいいと思うんだけど」
「うーん、ボクの子はノーマル種のファーラビットなんですよ。なので、キュアラビットとか特殊進化ができないんだよ」
「なるほどね。それじゃあ、進化させないのもわかるわ。それに、毛並みがふわふわで大事にされているのもわかるし」
「毛並みのお手入れは基本なんだよ」
店員のお姉さんと一緒になってパートナー談義に花を咲かせます。
いやー、ここまでわかってくれる人がいるなんてうれしいんだよ!
「ただいま。盛り上がってるみたいね」
「あ、店長。この子のファーラビット、すごいふわふわなんですよ!」
「……まあ、本当。初心者テイマーがファーラビットをそのままにしていることも珍しいけど、ここまでお手入れしていることも珍しいわ」
「ふふん、お手入れには自信があるんだよ」
なんて言ったって将来の夢はトリマーですからね。
いまから勉強できることはしているんだよ。
毎日のお手入れだって欠かしたことはないですから!
「……それにしても、初心者がよくここまでふわふわに仕上げられるわね。『瑠璃色の風』所属だって聞いたけど、ユーリちゃんからお手入れ方法を教わったの?」
「基本は学びましたけど、それ以外は自分で勉強したんだよ、将来の夢はペットのトリマーになることですからね」
「なるほどね。自己流でここまでできるとは、恐れ入ったわ」
「それよりもユーリさんの名前が出てきたけど、知り合いなのです?」
「え、ああ、古い知り合いよ。お互いに最前線にいた頃からのね」
ふむ、そうなのですか。
『瑠璃色の風』の皆さんも過去がよくわかりませんが、アサカゼさんも謎に包まれてるんだよ。
悪い人じゃなさそうなのでかまいませんが。
「さて、メニューを持ってきたけど、どうしましょうか」
「早速見せてもらうんだよ。……おお、いろいろとメニューがあるね。パートナー向けのメニューも豊富なんだよ」
「パートナー同伴を許可しているお店ですからね。それくらいはしないと」
「なるほどなんだよ」
ボクはメニューをざっと見て、気になったストロベリーパフェとイチゴミルクを頼んでみる。
シズクちゃんにはワイルドストロベリークッキーを、白玉にはスティックキャロットをそれぞれ注文してあげたよ。
注文したメニューは、奥にある収納スペースからとってくる仕組みのようで、すぐに持ってきてくれたよ。
「おお、このパフェ、甘くて美味しいんだよ!」
「オンオン!」
「プー!」
シズクちゃんと白玉も気に入ったようでなにより。
さっきの三毛猫も、気がついたら店員さんからクッキーをもらっていたんだよ。
「……そういえば、ここのお店って自由にパートナーを出していていいのかな?」
「ある程度の大きさまでならね。さすがに、店内で騎乗できるような大きさの子たちはご遠慮してもらっているわ」
残念だけど、当然だよね。
そうなると、アクアは呼べないんだよ。
「そういう子たちは、さっきの庭で呼ぶことになっているの」
「そうなのですか。店員さんもパートナーを出しているみたいなのですが、平気なのです?」
「このお店は、パートナーとのふれあい喫茶店のようなお店なの。いまの時間は空いているけど、夜になるとかなり混み合ってくるのよ」
そういえば、今日は土曜日ではありますが、まだ日中の微妙な時間でした。
お客さんもボク以外はまばらにしかいないので、あまり流行っていないのかと思いましたよ。
「そういうわけだから、もしよかったらまたきてね、リーンちゃん。お客様同士のパートナーで交流することもできるから」
「それは面白そうなんだよ! また今日の夜に遊びに来ますね!」
これは楽しみがひとつ増えたんだよ!
なんとしてでも遊びに来なくては!