94.草原の目覚めです!
「いらっしゃいませ! おひとりですか?」
「ひとりと一匹なんだよ!」
「わかりました。こちらへどうぞ」
店員さんに案内されて、お店のテラスにある席へとやってきました。
うん、眺めがよくていい感じの場所なんだよ。
「当店のご利用は初めてですか?」
「初めてなんだよ。高台のところで街を眺めてたら、ここのお店の人? にこのチラシをもらって」
「少々拝見しますね……ああ、これは」
ボクがもらったチラシを見たお姉さんは、なにか納得したような顔をしてるんだよ。
このチラシになにかあったのかな?
「少々お待ちください。店長を呼んで参りますので」
「うん? わかったんだよ」
よくわからないけど、店長さんがお相手をしてくれるらしい。
少し待っていたら、お店の奥からひとりのお姉さんがやってきた。
そのお姉さんは……。
「あ、さっきのチラシをくれたお姉さん」
「覚えててくれたのね。ご来店、ありがとうございます」
「いえいえ、興味があったからきてみたんだよ」
あのお姉さんが店長さんだったんだね。
でも、どうして、チラシを見ただけで店長さんの知り合いだってわかったんだろうね?
「あ、その顔はどうして私が呼ばれたかわからないって顔ね」
「そうなんだよ。チラシを見せただけで、ほかにはなにもしてないんだよ」
「そのチラシは店員ごとに別々な作りなの。だから、チラシを見れば誰がここを紹介したかわかる仕組みなのよ」
そうなんだね。
でも、その必要ってあるのかな?
「そういえば、名前を教えてなかったわね。私はアサカゼ=タチバナ。このお店の店長兼ギルド『草原の朝』のマスターよ」
「ギルドマスターさんだったのですね。ボクはリーン=プレイバードですよ。この子はシズクちゃんです」
「ワフン」
シズクちゃんもちゃんとご挨拶ができて偉いですね。
さて、アサカゼさんですが、ボクたちの名前を聞いてなにか悩み始めましたね。
なにかあったのかな?
「……リーン=プレイバードって、最初に四大魔法パートナーの派生進化を見つけたあのリーンちゃんかしら?」
ふむ、なんだかすごい人っぽい言い方なんだよ。
「そんなすごいことをした覚えはないけど、ライトニングシーズーを派生進化させたのはボクですよ。ユエさんからワイルドストロベリーをもらえてたからですけどね」
「ああ、やっぱりそうなのね! 会えてうれしいわ!」
おおう、なんだか一気にテンションが上がりましたね。
一体何があったのでしょうか?
「私も昔、四大魔法パートナーの謎にチャレンジして解明できなかったひとりだからとってもうれしかったのよ。ちょっと待っててね、コール、シノノメ」
アサカゼさんが呼び出したのはシーズーですね。
でも、シズクちゃんとはちょっと雰囲気が違うんだよ。
なんというか、輝かしさを感じる感じですかね、よくわかりませんけど。
「この子はシノノメ。種族はサンフレアシーズーを進化させていくと現れるクラウンフレアシーズーね」
「おお、そうなのですね。なんだか、シズクちゃんとは違う感じがしたのですよ」
「四大魔法パートナーって進化させても普段の見た目はあまり変わらないのよね。戦闘態勢になると、それぞれの特徴が出てくるのだけど」
「そうなのですね。ちょっと興味があるんだよ」
ほかの進化系も興味はありますが、シーズーばかり増やしても困るんだよね。
なので、我慢していたのですが、こんなところで別の進化系に出会えるとは!
「そう? シズクちゃんはなにに進化しているの?」
「シズクちゃんはルナブレスシーズーなんだよ。戦闘態勢になると、青白い翼が広がるんですよ!」
「そうなのね! クラウンフレアシーズーは燃えるような赤い翼が六枚広がるのよ。うちの庭なら戦闘態勢になっても問題ないし、そこで見せ合いましょうか」
「賛成だよ!」
アサカゼさんのすすめで場所を移動したボクたちは、ギルドハウスの庭でお互いの戦闘態勢を見せ合うことに。
シズクちゃんの涼しげな翼もいいけど、シノノメの情熱的な翼もいいですね!
「うーん、やっぱり生で見てみると違うわね! ルナ系統のシーズーは見たことがなかったからうれしいわ!」
「そうなんだね。ボクは、自分以外にシーズーを育てている人を知らなかったから始めて見たんだよ」
「なるほどね。確かに、いまだと四大魔法パートナーって初心者には人気ないものね……」
「やっぱり人気がないのですね……こんなにかわいいのに」
「かわいいのは間違いないんだけど、戦闘能力がとがりすぎてて大変なのよね。その点、グリフォンやドラゴンは安心なのよ」
やっぱり人気はそこなのですね!
ボクもグリフォンを買いましたけど、安定して強いですからね!
でもやっぱり相棒はシズクちゃんです、そこは譲りませんよ!