123話 学術都市
リオこと私たちが今回訪れたのは学術都市なる場所です。
この世界における魔法学の権威とも言える大学がここには存在します。附属として初等部から、中等部、高等部もこの都市にあり、一貫した教育がそのレベルの高さを生むようです。町造りも学園を中心として成り立っています。
私たちはオンカラ商会の紹介で、その内の一つの研究室を訪れていました。
「これがこの町にあった渡世の宝玉だ。女神教の教会を取り壊す際に、作業員が回収したものがこの研究室にまで回ってきたもので」
「拝見します」
室長が差し出した青い宝石を私は手に取って見つめます。中に魔法陣が刻まれた、私たちにとって馴染みが深い渡世の宝玉そのものです。
「それで君たちも渡世の宝玉を持っているって話を聞いたんだけど……」
「はい、ユウカ出してもらえますか?」
「あ、うん。ちょっと待ってね」
代表して管理しているユウカがこれまでに手に入れた渡世の宝玉五個を取り出して室長に渡します。
「おおっ、宝玉が五個も!? 最初は三個だと話は窺っていたのですが……」
「それから新たに二つ手に入れた分ですね」
「なるほど、そういうことですか」
オンカラ商会は随分前からアポを取っていたようで、私たちが独裁都市で手に入れた分と仲間のパーティーが手に入れた分の二つは勘定に入ってなかったようです。仲間が手に入れた分はここにたどり着く前に、オンカラ商会を伝って私たちに届けられたため、帰還派がこれまでに手に入れた宝玉は全てがここにあります。
「宝玉を一箇所に集めると…………やっぱり!! 中の魔法陣の輝きが増して……! この仕組みを解明すれば新たな魔法理論の構築も可能に…………うおおおっ! テンション上がって来たぁぁぁっ!!」
室長が吠えるように叫びます。
「申し訳ありません、話をしてもいいですか?」
このままでは進まないので私は水を差します。
「……あ、すいません。研究者として未知を既知に出来る機会につい……」
「お気になさらず。では確認です。私たちの持つ渡世の宝玉五つを研究のため貸し出します。そして研究が終われば、元からあなたたちが持っていた一つも含めて六つを返してもらうと……この条件で構わないでしょうか?」
「ああ、もちろんさ!」
室長が勢いよく頷いて、これでこの町の渡世の宝玉を手に入れる算段が付きました。
宝玉を貸し出して待つだけ。これまで苦労してきたことを考えると何とも簡単なものです。
「ただ、ちょっと研究に時間がかかりそうだけど……」
「どれくらいでしょうか?」
「そうだねえ…………かっ飛ばして不眠不休で研究して…………二週間くらいは見積もってもらえると」
「分かりました。では一ヶ月待ちます」
「え……? いいのかい?」
「大丈夫です」
「……恩に着るよ!! おおっ、君は女神だ!!」
室長に過剰に感謝されます。
もちろん本音としては急かしたいところです。誰かが奪いに来る可能性を警戒するために、私たちは宝玉を預けている間もこの地に留まる予定です。
その間に駐留派と復活派が各地で宝玉集めを進めていくでしょう。それを考えると足踏みしている余裕はありません。
しかし、急いては事を仕損じるです。ここまでハイペースで宝玉を集めてきた私たちには、一旦休憩が必要だと独自に判断しました。
というのも。
「二人もそれでいいですね?」
同行者の二人、ユウカとサトルさんに確認を取ると。
「私は構わないよ。ね、サトル君」
「…………」
「サトル君、聞いてる?」
「え、あ、すまん……何の話だ?」
「だから渡世の宝玉の研究に一ヶ月かかるって話。その間私たちもこの地を離れられないけどいいかな、ってリオが」
「…………うん、まあいいんじゃないか」
「そう……」
「…………」
「…………」
ぎくしゃくしたやり取りをする二人。
少し前……正確には独裁都市を出発した日、それも私とユウカとホミ姫が談笑しているところに独房から帰ってきたときから、サトルさんの様子がおかしくなっていました。
軟禁状態のピンチからユウカが救ったことで、二人の仲も急接近したと傍目には見えていたのですが……一体何があったのか。
親友、ユウカは既に問いつめて特に何もしていないと言質は取ったので、問題はおそらくサトルさんにあると踏んではいますが……。
ちょうどいいのでこの一ヶ月の間にどうにか解決したいところです。
「しかし一ヶ月の間ただ待たせるのも悪いよな……あ、そうだ!」
そのとき室長が何か思いついたようにポンと手を打ちます。
「どうしましたか?」
「君たち、魔法学に興味は無いかい!? もし良ければだけど、待っている間学園に体験入学出来るように取り計らってみるよ!!」




