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117話 結婚式12 竜闘士 VS 聖騎士 3


「食らえ!! 『聖なる全振りホーリーオール』!!」


 ナキナは限界まで体をひねり蓄えた体のバネを一気に解放。

 剣がこちらまで聞こえるほどの風切り音を発しながら振られ、その軌跡に形成された先ほどまでとは比べものにならないほどの大きさの光が俺たちを押し潰さんと迫る。




 その巨大な光にこれまで待ちの姿勢だったユウカは一転。


「『竜の拳ドラゴンナックル』!!」


 竜の力を宿した拳を突きだしながら臆することなく光に飛び込む。

 力では竜闘士の方が上。とはいえ相手の大技に対して、こちらのスキルの出力は普通でちょうど拮抗する。


「くっ……!」


 ユウカは痛みに耐えている。スキルで相殺しているとはいえ、相手の攻撃に腕を突っ込んでいるのだ。何もダメージが無いということは無いだろう。


「だ……らぁぁぁっ!!!」


 それでもユウカは気迫を絞り、拳を振り切って光を両断。割れた光が俺とホミの左右の地面を削り轟音を発する。




「っ……破られたか!」

「今だっ!!」


 ナキナが驚いている間に、ユウカは全速力で接近する。

 大技を打った直後で隙が出来ている様子のナキナは、俺たちを攻撃することでユウカの接近を封じることが出来ない。


 大チャンスと見えたが、しかしユウカも拮抗した際にスピードが落ちたのが痛く、距離を詰め切ることが出来ない。

 これだとユウカが拳を届かせる前にナキナが体勢を整えて俺たちを攻撃するだろう。そうなると防御に戻らないといけなく振り出しだ。


「甘かったな」


 俺と同じ想定に至ったのだろう。ナキナがフッと小馬鹿にするように笑って。




「ううん、ここまで接近すれば十分!! 『竜の尾ドラゴンテール』!!」




 ユウカは不敵に笑うと、まだナキナとの距離があるのに右手を振りかぶった。俺が初めて見るそのスキルはどうやらエネルギー状の鞭を発生させるようで、半円軌道を描いた鞭の先端がナキナにグルグルと巻き付く。


「何を……」

「いっけえぇぇぇぇっ!!」


 そのままユウカは鞭を後方に向かって振り上げると、その動きに従い竜闘士の膂力によってナキナが空中高くに放り出された。




 遠距離でも近距離でも駄目なら中距離。ユウカの接近の狙いは鞭の届く範囲にナキナを捉えることだったようだ。

 宙にいるナキナはなすがままなあたり、聖騎士はどうやら空を飛ぶようなスキルは持っていないようだ。

 ならば絶好の的である……かというと、そうではないようだ。


「考えたな……だが、みすみすやられたりはしない」


 ナキナは鍛えられた体幹によって空中で姿勢を立て直す。投げられた勢いで飛んでいるのは変わらないものの、あの状態なら攻撃も防御も十分に行えそうだ。

 となるとユウカが『竜の潜行ドラゴンダイブ』を当てに行こうとしても、ナキナは俺とホミを攻撃して防御を強制することが出来る。

 この問題を解決しない限り俺たちの勝利はない。




 だからこそユウカは俺に提案をして、ナキナを後方に放り投げたのだ。




「なるほどな」

 ユウカの意図が読めた。


 ナキナが飛ぶ方向の先にいる俺。魅了スキルは効果範囲こそ周囲5mだが、光の柱と表現出来るように上空にはかなり長い射程がある。そしてナキナは空中のため満足に動くことが出来ない。


 つまり。


「今のナキナは魅了スキルを避けることが出来ない……!!」


 ユウカは提案通り見事魅了スキルをかける隙を作って見せたのだ。




 当たれば一撃必殺の魅了スキルが百発百中で絶体絶命のナキナ。飛んでる勢いからしてあと少しで俺の上空を通過する。俺はそのタイミングで魅了スキルを発動するだけでいい。

 だが、一つだけ心配事があるのも確かだ。


「『聖なる一振りホーリーワン』!!」


 ナキナが空中で剣を振るいソニックブームを俺目掛けて放つ。不安定な空中なのに見事な照準だ。


 ユウカが後方に放り投げたため、位置関係として俺たちとユウカの間にナキナがいることになる。しかも魅了スキルの範囲に入りそうなほど俺に近くから攻撃出来るというわけだ。ナキナは当然絶好の攻撃機会を逃さなかった。


 ナキナの攻撃が迫る。回避行動を取るべき……だが、そんなことをしていたら魅了スキルを発動する余裕も無くなる。

 だったらどうすればいいのか。




「簡単だ。ユウカを信じればいい」




 あれだけ忌み嫌っていたその言葉なのに不思議とすっと出て来る。


 ユウカの俺なら察せるという無茶振りに応えてやったんだ。

 だったら今度はユウカが応える番だ。


「…………」

 決めたからには俺はもう動じない。

 光からは目を切って、ナキナが上空を通るタイミングを計ることだけに集中する。






「サトルさん……」

 集中するサトルは隣でホミが名前を呼んでいることも気付いていない。


 ナキナの攻撃が迫る中、危険なのはホミも一緒だ。


 魅了スキルに関与しないホミはこの場から逃げ出してもいい。


 だがそうやって逃げ出すのは負けを認めるようで……意地だけでその場に留まる。




 そして無防備に立つ二人に光が届こうとする――その直前。




「『竜の咆哮ドラゴンシャウト』!!」




 ユウカの発した衝撃波がピンポイントでナキナの攻撃を打ち落とした。




「くっ……ここまでか」

 ナキナは次の攻撃体勢に入りながらも、既に負けを自覚しており。


 そのときサトルから5mの範囲に到達した。




「魅了スキル、発動!」


 サトルはスキルの発動を宣言。




 ピンク色の光の柱が宙のナキナを捉え――その瞬間勝敗は決した。


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