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春の春菜の二年坂  作者: とめきち
2/20

ー舞妓ちゃんー壱ー

序が、短かったので、連続して投稿します。

春の春菜の二年坂


 長い夏休みが終わった、学校の放課後。

 京都府立八坂高校の校舎内には、さまざまなうわさが飛び交っていました。

 市内でも有数の進学校、ここ東山八坂高校の二年は、三階の教室。

「透吾ぼんが行方不明やてェ?」

 教室のすみで、帰り支度をしていると、聞こえてきたのは、そんな声でした。

「聞いた聞いた!大文字の晩から、見たモンがおらへんって話や~。」

「どないなっとんにゃ、嵯峨野終舞は、あの晩、透吾ぼんが壊滅させたんやろ?」

「なんやそれ?」

「ほれ、暴走族の、影丸の~。」

「ああ、透吾ぼんに喧嘩売って来とったやつかあ?」

「そうそう、そやのに透吾ぼんがいなくなったんや。」

「わからんなー、どねぇになっとんにゃ。」

 東山から烏丸にかけて、無類の強さを誇る片岡透吾と言う少年は、もはや現役でありながら伝説にならんとしています。

 大文字の晩にいったい何が起こったのか、知っているのは透吾ぼんのそばにいた数名の少年少女だけでした。

 ウチも、その内の一人。


 倉橋みどり、十七歳。


 別の一角からは、こんな声も聞こえてきます。

『友美ちゃん、なんで交通事故なんかに遭ったんやろ?』

『あんなええ子が、こんなに早よぉ亡くなってしまうやなんて…』

『もうもう、ウチには信じられへん。』

『神様は、ええひとから先に連れて行かはんにゃなあ。』

『ほんまに、あんなええ子は、ほかに居ぃひんかったのに。』


 同級生の神崎友美ちゃんは、透吾ぼんの筒井筒で、恋人で…


 実は、透吾ぼんは、大文字から二週間後には、ウチが見つけました。

 そのときにはもうぼろぼろで、自分でごはんも食べられない状態で…

 ウチは、バイト先のコンビニの前から、うちのアパートに連れて帰ったのでした。

 そらもう、おかあちゃんはびっくりしはるし、着るものはないし、大慌て。

 それでも、あんまりぼろぼろやよってに、姉小路の透吾ぼんの家には、連絡でけへんし。

 とりあえず、透吾ぼんが自分を取り戻すまで、世話をすることにしたのです。

 時間が経つにつれ、透吾ぼんは平静を取り戻し、十日もたっったころ、姉小路の実家に帰っていきました。


 そやけど、そのすぐ後、またいなくなってしまいました。


 それから何日かたって、まだ行方は知れません。


「透吾ぼん、どこに居てはんにゃろなぁ。」

 ウチの隣の席にいてはる、洋子ちゃんに声をかけました。

 白河通りをちょっと入ったところにある、バイクやさんの娘です。

「あ?たぶん、上七軒あたりのお茶屋にでも、シケ込んではるんとちがう?」

「はあ…難儀やわあ。」

 突然、なんの前触れもなく、洋子ちゃんは目からぼろぼろと涙をこぼしていました。

「ど、どないしたん、洋子ちゃん。」

「え?あ・あれ?勝手に涙が…涙が…」

 洋子ちゃんは、未だに友美ちゃんを亡くしたことを、納得できていないのでした。

「いづみちゃんは、まだ出てこぉへんしなあ、どないしてはんにゃろ…」

「あの子は、小学校からのつきあいやもん、ショックが大きすぎるんやわ。そう言うウチも、なかなか立ち直れへん。」

「そら、ウチもやけど、ウチはお父さんを亡くしてるから…」

「ああ、そうやな。そやし、ウチとこはお母ちゃん亡くしてるけど、小さかったしなあ。」

「それはしょうがないよ。」


「あーあー、あんたもやんかさァ。」


 ウチも、無意識に涙が出ていました。

「あ、あは…おんなじやんなァ。」

 悲しみが、時間と共に薄れていくと言うのは、ウソだと思います…

 ウチは、ハンカチで涙をぬぐいながら窓の外に目を向けました。



 これは、そんな中におこったお話。


 舞台はウチのバイト先から始まります。


 季節はめぐり、もう十一月の声を聞いていました。

 ウチは、ぐりぐりメガネに、はねたお下げで、コンビニのバイトに出ていました。

 ホンマにウチの目ェは、シャレにならんくらいド近眼で、おまけに乱視。

 レンズの厚さは一センチもあって、そらもう重い重い。

 せいだい猫っ毛で、ぴんぴんはねる髪の毛は、ほっとくと鳥の巣になってしまうよって、二本のおさげにするのですが、これも「お前あっちゃいけ、わしゃこっち行く。」って言う具合で。

 身長が一四三センチ。

 体重が三二キロ。

 ちびでやせっぽち。

 胸もない。

 私服で立ってはったら、小学生に間違われる。

 性格は引っ込み思案で、ビビリ。

 一途で、真面目。

 自意識過剰。


 趣味は、模試荒らし。


 特に、全国模試は大好き!ヒトケタにはいったこともあります。

 なんや、支離滅裂やけど、それはおいおいわかることやし、今しばらくのおつきあいをお願いします。

「みどりちゃーん、でんわー。」

「あ・はーい。」

 いっや~、届かん届かん、自分の背ェが、どんだけ低いか、身ィに染みる瞬間。

 表のガラスを磨いていたウチは、ふいの電話に呼び出されました。

 その電話の相手は、母親の同僚でした。

 母一人子一人の、二人暮らし。

 母は、四条河原町の湯豆腐屋さんで、仲居として働いていました。


「事故?だれがどす?」


『ですから、お母さんどす。』


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