あいさつ 〜素直な気持ち〜
あいさつは大切です。
小中学生の頃、親や先生から何度もそう言われてきました。
あの頃は私も友人も素直に話を聞いて、登校時には、すれ違う人は誰にでも「おはようございます」と言っていました。ただ、なぜだか下校中に「お帰り」と言われると、恥ずかしくて返事ができなかったのを覚えています。今は「ただいま」と言えるようになりました。
あいさつをするとき、素直な自分になれる気がします。
通学のために自宅から駅まで歩いていると、同じ電車に乗るであろうサラリーマンや学生、集団登校中の小学生に会います。小学生はたまにあいさつをしてくれます。私からあいさつをしていてはきりがないのでしませんが、あいさつをされれば返します。よそ見をしながら歩いてぶつかってくるような子供がいれば「気をつけて」と言います。これは私の朝の目標でもあります。子供から見て大人と思われる人間になりたいのです。
反対に、サラリーマンや学生とあいさつをすることはまずありません。知らない人にもあいさつをする、と言う素直な感情はここにはありません。もちろん、あいさつをされて嫌な気分になることはないでしょうが、不思議な人と思われたくないというのが本音です。人の目を気にして不安になっている心境です。
しかし、世の中にはすてきな人もいるものです。
いつもの時間に登校中、一人のおばあさんが前方から歩いてきました。畑から摘んできたばかりの色々な花を抱えていました。
おばあさんは、私より十メートルほど前を歩いていた男性にあいさつをしたようでした。しかしその男性は少し驚いたようなそぶりを見せました。
私は音楽を聴きながら歩いていました。車の音が聞こえるくらいの比較的小さな音にしていますが、普通は声をかけても聞こえないと思うでしょう。しかし、おばあさんは私と目が合うと、「おはようございます」と言ってくれたのです。わたしも「おはようございます」と返しました。なんだか、その日一日元気になれるような気がしました。
あのときのおばあさんの姿は今もしっかりと残っています。
特に、真っ黒な優しい瞳が印象的でした。例えるなら子犬のつぶらな瞳。いくつになっても少女のような心を持った人なのだと、私は勝手ながら思っています。
あいさつをすることで、ぐっと相手との距離が縮んだり、好印象を与えたりします。あいさつの気持ちよさを再認識させてくれる出来事でした。