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Prolog
「人間を最も早く死へ突き落とすのはずばり、好奇心だ」
そう仰々しく俺に語った黒い男は、どういうわけだか俺と同じ顔形をしていた。本人曰く「面白いから」とかなんとか。正直こっちは自分と似ているどころか全く同じ顔とご対面している訳なので落ち着かない。
「好奇心によって少し“宇宙的恐怖”と遭遇した人々を俺は知っている。戸惑い、狂乱し、訳がわからなくなって、親どころか友達すら認識できなくなった人々。ある人は友達を怪物だと勘違いした末に殺してしまった。ある人は被害妄想により自ら命を絶った。ある人は全てを放棄した」
耳を塞ぎたくなるような内容だ。それをどうだ、目の前の男はそれを嬉々として、恍惚の表情で語っている。やめろ、そんな話を俺の前で、俺の顔で、俺の声で、おおよそ内容と似つかわしくない表情を浮かべて、話すな。
俺の抗議もどこ吹く風で、男は話を続ける。
「でも、たまぁに、ごく希にそんな宇宙的恐怖に遭遇しても平気で、しかもそんな奴らを出し抜くような人間もいる。 ――――ああ、これだから人間は面白くて、愛おしい」