97、Sの怒りはどこへいく!?
今回はちょっと短めです。
「あの馬鹿作者め、今度会ったらあの羽全部むしりとってやる……」
「まあまあ、お姫様。そうお怒りにならずに……」
「怒ってねぇよ、イライラしてるだけだ。てか姫様って呼ぶな」
「それって同じ意味だと思うけど、そのイライラを私にぶつけてくれると嬉しいなぁ……」
「気のせいだ。てか、引っ付いてくんな」
「それよりも、この暗号みたいなもの解かなくていいんですか?」
「解かなきゃならねぇんだけどさ、このイライラと馬鹿をどうにかしてくれねぇか?」
右に馬鹿、左に影薄。共に近い。近い、近すぎるんだよ!
「えっと、森野さん達。瀬川君が迷惑そうだから……ね?」
「大丈夫だよ、うん」
「そうよ、うん」
「何がどう大丈夫なんだよ。てかいい加減に離れろや」
「今この瞬間にこうしてないと、二度とこういうチャンスがないと思うんだよな」
「こういう危機的状況の時にこそ、ラブラブしなくっちゃ♪」
「……無視するんだ、俺。大丈夫だ、やれば出来る、出来るさきっと!」
てな訳で、馬鹿共は放置決定。気にしてたら話が一向に進まんし。
「んで、なんだっけ?」
「何ってなんでしょうか……」
「あのー、あれだ。暗号みたいなのなんて書いてあったんだっけ」
ちなみにあのメモは、今舘山が保管中。俺が持ってると八つ当たりしたくなるし、小橋が持ってると影薄い存在じゃなくなってつまらないし、森野が持つといろいろと面倒だからだ。
「最初は『目印は花に従い、野原の向こう』です」
「目印は花って訳か?」
「そうかも、しれません……」
うーんと唸るのは俺と舘山だけ。馬鹿と影薄は、
「ちょっと影薄、私のダーリンから離れなさいよ」
「はあ?お前のじゃねぇだろ」
「あんたのものでもないわ!」
「俺は瀬川は親友という名誉ある資格がある!」
「私だって傍にいていい資格があるもん!」
「お前は狩燐にでも引っ付いてろよ。アイツもSだし!」
「可愛げがないからダメなの!」
なんて馬鹿な会話をしている訳で、……うん。
……まあ、はっきり言えばウザいですね。
「あのぅ、瀬川さん」
まさかのさん呼び!?
「さんじゃなくて、君か呼び捨てが嬉しいがなんだ?」
「えと、あの、うぅ……」
泣かないでくれー!!今ここでこのタイミングで泣かないで!てか、どこに泣きたくなる要素があった!?
「瀬川、お前……」
「な、なんだよ……」
「香ちゃんがタイプだったの!酷いわ、私を差し置いて!」
「はあ!?」
「酷い!酷いわ!酷すぎる!!私という恋人がいながら―――あだっ」
「……うるせぇ」
とりあえず、鉄拳下して黙らせとく。
「瀬川に逆らうべからずか……」
「なんか、言ったか?」
「いえ!何も申してございません、女王陛下!!」
「ならいい。……だがしかし、俺は女王陛下じゃねぇからな」
「あの、せ、瀬川君?」
俺のスカートの裾をちょっと握って、舘山はある場所を指差す。
「んだよ」
「目印の花って、アレ?」
その指の先には、壁。花なんてない。野原すらない。ただの壁である。
「アレが何だ?」
「あの、壁紙花の模様だから、そのね……」
「つまり、目印はアレかもしれないと?」
こくこくと頷く。
左右の馬鹿を引きずるように、俺らはその壁の前に立つ。それは淡いピンクの地に、綺麗な花が描かれたものだった。
……今更ながら気付いたけど、ここの壁以外はみんなただの白い壁紙だった。
「気付かなかった俺はなんなんだ……」
小橋が面白そうに指で壁の花をなぞる。
「これ、道標みたいに花が繋がってるな」
「先端はぁ……ここかな?」
いつの間にか俺から離れた馬鹿二匹が、壁に描かれた花を追い、立ち止まる。
「ねね、香ちゃん。『目印は花に従い』の続きってなんだっけ?」
なぜかはしゃぐ森野に、舘山が答える。
「『野原の向こう』です」
「『野原の向こう』ってことは………………………………といやぁっ!!」
「えぇ!?」
俺と舘山の声が重なる。
いや、誰だっていきなり壁に殴りいれる人見たら驚くだろうさ。
「おぉー!珍しく毒舌女が役に立った!」
「私はやれば出来る子なのよ!どこかの影薄と違ってね!」
「んだと!?」
「誰もアンタの事だなんて言ってないわ!」
「不毛な争いはやめような。てか、なんでお前らはそんなに仲が悪いんだよ」
「瀬川君瀬川君!見てみて!」
なあ舘山よ、いい加減スカート握るのやめてくれない?そして引っ張るのやめてくれない?
んで、無邪気な舘山が指差す先には、
「……スイッチ?」
がありましたとさ。それも夜空の中に。
「綺麗ねぇ……」
絵で書かれたにしては綺麗過ぎる夜空に浮かぶのは、小さな黄色いスイッチ。押すなと言われても押したくなるような、あぁ、押してしまいたい……。
てか、押していいですよね?……はい、そうですよね、押すべきですよね。
「よぉし、ポチッといこー」
ゴゴゴゴゴ………………
何かが動く音がして、
「原爆?」
「なんでだ!」
森野の馬鹿な発言に軽くつっこんで、ふと思った。
この仕掛け、作者が作ったんだよな……。だったら、ものすごく嫌な予感がす―――
ガパッ!
「る!?」
突然、足元に大穴が開きましたとさ♪
「マジかよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」
「キィヤッホーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーイ!」
「ひぃやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」
楽しんでいる森野の神経が疑わしい!んでもって小橋よ、女みたいな悲鳴あげんな!
てか、どんだけ落ちていくんだよおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ……!