96、困った彼らに希望なし!?
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい」
ひたすら半泣きで謝り続ける舘山と、
「どうしようどうしようどうしようどうしようどうしようそうしよう!……どうしよう」
途中でひらめいたはずなのに、また悩む影……小橋。
「瀬川もなんか考えろよ」
「来た道戻ればいいんじゃねって何回言わせた?」
「私を愛しているって何回言ってくれますか?」
「お前は話が変な方向に向かうから少し黙ってろ!」
隣に座っている森野改め、馬鹿の頭をはたく。
とりあえず、今の状況を整理してみると、こうなる。
1、斎賀に言われたとおり、作者の作った秘密の抜け穴でやってきた舘山。だけど、その道がどこにあるのかをすっかり忘れてしまった。
2、小橋も森野も試練を済ませ道を進んでいったら、いつの間にかココにたどり着いていたらしい。道は戻れるようになってはいるけれど、出口にたどり着ける保証はない。
以上!!
「俺ら一生このままかな……」
「本当に!?」
「何でお前は嬉しそうなんだ!!」
「い、いじめはダメですぅ!!」
くそぅ、面倒臭いのが二匹……。
「とりあえずさぁ、あれ呼ぶべ」
「なぜになまる必要が?」
「うるせぇな、黙ってろ影薄」
「影薄じゃない!まだ認めない!」
「あれってなぁに?」
「アレはあれだ」
「説明になっていないと思うんですけど……」
「それは心で感じないからだ」
「心で感じればいいのね、ダーリンのあ―――いだっ!!」
「だから、お前はしゃべるな!話が進まねぇから」
「心で感じれるものといえば、お前の悪意くらいだけど……」
「悪かったな」
「心で感じれるものは……怖いです」
うん、きっとだれだってそうだろうね。
「そ」
「香ちゃんに冷たくしないで!冷たくするなら私だけ―――あだっ!」
「黙ってろつったろが!!」
「暴力はんたーい」
「そ、そうですよ!」
小橋の棒読みを鵜呑みにしないで、純情ちゃん。
「とりあえず、あれを呼ぶべし」
「だからさ、あれって何?」
「影薄には一生分からないだろうな」
「何その差別!」
「作者ー!いるんだろー!出てこーい!!」
「思いっきりあれの正体言ってるし……」
「紐なしバンジー……」
「ごめんなさいごめんなさい二度と口出しいたしません」
「うむ、それでよし」
「まるで魔王だわ……」
小さな呟きも、こんだけ静かだとうるさいくらい聞えるからね。
泣かれると面倒だから口に出しては言えないけどな!
「作者ー!ヘボで馬鹿でマヌケな作者ー!!」
「返事ないわねぇ」
「……サボってんのかな?」
「作者さんの悪口言っちゃダメですよぅ!」
「これぐらい言わねぇと、奴は出てこねぇからな」
「私は喜んで反応するのに……」
確かぁに、お前は出てくるだろうな……。
「……まぁ、確かに」
おぉ、影薄もそう思ったか。
「作者さん可哀相……」
アイツに哀れみなどいらないぞ。
「作者ー!数学が【ピー】だったさく……あれ?」
(言うなやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!)
「よし、やっと来たな」
「おぉー!流石はダーリン!!」
「数学が【ピー】ってマジか……」
「……作者さん……」
(なにさ!なんなのさ、揃いも揃ってその冷たいまなざしは!!)
「別に」
「な、なんでもないよ」
「気にするなや」
「お気の毒に……」
(帰るけど?帰っちゃうけどそれでもいいの!?)
「帰る前に、狩燐とかに渡してたアレよこせ」
(それが人に物を頼む態度!?)
「お前は人じゃねぇからな」
「鴉ね」
「まぁ、……確かに」
「で、でも中身は人です……」
(そうだよ!見た目鳥でも中身人間だよ!)
「俺はお前を人だと認めたくない!」
(えぇ!?)
「あぁ、私にもそのお言葉をぉ!」
「話それるから黙れって何度言わせんだアホ!!」
「アホじゃないわ!ちょっと複雑な心を持った女の子よ!」
「だから黙っとけや!てか複雑な心ってなんだ!」
「ダーリンとどうやって駆け落ちしようかとか、ダーリンとどうやってデートしようとか、ダーリンとどうやって幸せな家庭を作っていこうとか……」
「変な事考えてんじゃねぇよ!そしてダーリンって呼ぶのやめろ!!」
「あ、あのぅ……」
「嫌よ!これが私の生きる糧なのに!」
「他にもいろいろと生きる糧があっただろうが!」
「お2人さぁん……」
「でも、ダーリンと一緒の時が一番幸せよ!」
「お前といるとストレスが溜まっていくのが分かるんだよ!」
「話がどんどんとぉ……」
「大丈夫!ダーリンの髪は私が守る!」
「はあ!?守られたくねぇし!てか守られなくても平気だから!」
「それていっているんですがぁ……」
「心配しないで、マイダーリン!ずっと、ずっと傍に居るから!」
「傍にいて欲しくねぇよ!鬱陶しいよ!」
「すみませぇん……」
「それでもいい!いずれ私の大切さが分かるから!」
「分かりたくもねぇし、分かる訳がねぇよ!」
「いい加減に……しろやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「ひぃっ」
ブチ切れ小橋に、大泣き寸前の舘山。
「人に話しをそらすなって言うておぅて、おのれで話そらしてどないすんや瀬川!」
「あ、ゴメン……」
「ワレもや、森野!時に静かにしていなけりゃならへん時がああるんやで!たまには大人しくしてらんなぁのか!?」
「ご、ごめんね……」
そして、ツッコませてくれ。なぜ大阪弁なんだ!?
「ねんし、ほな大人しくしとるねんうに!一言でぇもしゃべったら紐なしバンジージャンプもっかいやからな!」
……やけに小橋と大阪弁が合っている気がするのは、何故でしょうか……。
(2人が静かになったところで、あえて言おう!もうあの力はないと!)
「はぁ!?」
舘山以外はみんな揃って叫んだ。
(いやぁ、アレもアレで、結構魔力的なもの使うわけですよ。で、疲れたわけですよ。そして、そう言う訳だからおやすみ)
「お、おやすみ」
「おやすみなさい……」
「……永眠させてやろうかぁぁぁぁぁぁぁ!」
「ま、待て瀬川!餅つけ!」
「餅なんてついてられっか!」
「さっきのはミスだ!餅……じゃなくて落ち着け!!」
お前もなぁ小橋!つか、いつの間にかブチ切れモード終わってんの!
(脱出はお好きにー。この部屋のどっかに抜け道あるはずだよ、確かね)
「どこら辺か覚えてないの?」
(眠くて眠くて、考えてると寝ちゃいそうだからね)
「目印とかはねぇのか?」
(あー、なんかあったようなぁ……)
「思い出せ作者。ダメでもアホでも思い出すことくらい出来る」
(ボロクソ言うね、相手がどんな状態でも……)
「め、メモとか、そういうのはないんですか?」
(あー!メモ!メモか!……はい、これ。じゃ、あとは頑張ってね)
そう言い残して、作者は消えて、代わりにヒラリヒラリと紙が赤い絨毯の上に落ちる。
「これがメモか……っておい……」
「どうしたの、ダーリン?」
「何々?俺にも見せてくれよー」
「わ、私も見たいですぅ」
つーわけで、ベットに腰掛けてた3人が集結し、俺が拾った紙を覗いて一言。
「これは……」
「どっからどうみても……」
「ナゾかけですかねぇ……」
「だよなぁ……」
そう、あの馬鹿が残したのは、抜け道を示すナゾ(っぽい)ものだったのだ!
ちなみに、それにはこう書かれていた。
目印は花に従い、野原の向こう。
一番星が唄う夜空の向こう。
風がいななく廃墟の向こう。
太陽と月が出会い、離れた愛しき者の声に従いて集えば光の下によみがえる。
「あれ?ダーリン」
「んだよ。てかダーリンて呼ぶな」
「不毛な争いが始まる前に言っておこう。いい加減にしとけよ」
「言われなくても分かっているわ。ちょっと惜しいけど……」
「で、なんだよ」
「裏に、まだ続いてるみたいよ?」
「何?」
「……『ダイナマイトが仕掛けられてるみたいだから、気をつけてねぇん♪』」
舘山が見事な棒読みで読み上げる。
「これは笑うべき?」
「これは作者を殺すべきか?」
「これは泣くべきか?」
「これは、どうすべきでしょうか?」
とりあえず、言える事はココにいる3人にも分かったようで。
「ありえなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁい!!」
見事な絶叫が大阪城を駆け巡ったという……。
はい、まさかのダイナマイトォ!
彼らは爆発するものに好まれるようで……。