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ドSな俺と、ドMなアイツ  作者: 下弦 鴉
第一章 彼の周りの不思議人物たち
9/117

9、妄想暴走中!?

 ……アレ?俺、生きてますね。……なんかもう、驚きを感じる気すらないんですけど。疲れたというか、リストラ直後のサラリーマンの気分って言うか……。

 せっかくの休日なのに、土曜はあいつらに邪魔されて、休みって言うより、地獄だったし。日曜は日曜で部活あったし、なんか大会に向けて、先生燃えちゃって……。スパルタって言うか、アレは……なんだったんだろ。言葉に出来ないや。

 で、休みが明ければ当然学校。そして、当然森野にも会わなくてはならない。でも、今のところアイツがいそうな気配がないんで、安心してます。

 「はぁ……定年退職って、こんな気分なのかな?」

 なんて呟いてたら……

 「うわっ!!?」

 「きゃっ!!あ、あの、すみません!」

 誰だろう?礼儀の正しい子だな。しかも、この作品には出てこなかった、純粋そうな感じの子だぞ。変なところが無さそうだ。

 ……でもさ、世の中って、甘くないんだよね。

 ……今の台詞!俺のじゃないよ!俺、そんな事はよく感じるけど、言った事はない!!ま、まさか!!

 ……皆様、この作品に、純情な子がでるとは思わないでくださいね。何せ、一応SMですから。

 やっぱりあの人だったみたいですね……。

 「……この展開は、朝、パンを走りながら走る女子高生が、偶然男性にぶつかってしまう。そして、それが運命の出会いだった的な展開になるのでしょうか?」

 え?何、この急展開?勝手にしゃべりだしたよ。もうとまらなそうだよ。

 「……いや、違いますね。きっと、落し物をした女子高生と、それを届けてくれた男性が偶然この町で再び会うって感じの方かもしれません。そうですよね?」

 「はあ……?」

 「あっ、それでもないですね。本屋で出会った二人の男女。そして、偶然手が重なる。そして、些細な会話から全てが始まるのよ。そっちじゃないですか?」

 「……ここ、本屋じゃないし、俺ら、高校生じゃないですよ」

 「……あ、その辺は気にしないでください。どうにでもなりますから」

 「そ、そういう問題なのか?」

 なんかよく分からないけど、この子も危なそうだぞ。危険なにおいがしてきた。

 「あれ?私のバッグ……」

 「これ?」

 「あっ……」

 拾ったバッグに、手が軽く触れたけど、何か問題でもあった?

 「こ、この展開は、やっぱりこうなるのね。朝道を急ぐ少女と、つまらなそうに毎日を過ごす少年。運命の出会いは、ふとした瞬間だった。急いでいた少女は、少年にぶつかってしまう。そして、落としたものを拾おうとした時、偶然手が触れ合う。そして、二人の運命は、変わっていく。って、展開ですよね?」

 ……反論する気力が、全然出てこないのは、何故?

 「きっと、これだわ!そして二人は結ばれて、幸せに暮らすのよ!」

 作家志望ですか?それとも、詩でも書きますか?

 「……でも、それじゃ試練が足りなさ過ぎるわ。……そうね、きっと両親がなかなか二人の交際を認めない、頑固な人なのよ。そして、二人は駆け落ちを決意するのよ。そして、新しい土地と、新しい家で、二人の愛は深まり、新しい生活が始まるの!きっとそうよ!」

 想像力は、森野にもひきを取らないな。そして、ちょっとMっ気もある。新しいヒロインとしては、いいんじゃないか?ウザくないし。

 ……でも、何であの瞬間だけで、これだけ盛り上がれるんだろ。かなり不思議なんですけど。

 てか、この間にも一人でブツブツ言いながら空想を広げられるって、ある意味スゴくね?

 「って、またやっちゃったわ!私、遅れそうだったのに!」

 「……あの―――」

 「……その展開は、きっとこれでしょ?本当はこの二人は以前にも会った事がある。だけど、少女は不慮の事故で記憶を失っている。だけど、その少年は、ずっと少女を思い続けていた。そして、運命の再会。失った記憶の変わりに、少年は新たな決意とともに、少女と茨の道を進んでいく。……ね、これ正解でしょ?」

 ……俺には、正解も不正解も分からないんですけど。てか、これ聞いてすぐ答えられるの、森野くらいしかいないんじゃね?

 「……ハンカチ落と―――」

 「ああ、そういう事。貸したままのハンカチ、それを返そうと思っているがなかなか返せない少年。しかし、ちょっとした神のいたずらで、またあの少女と偶然出会う事となる。これでしょ?」

 ……ここで一つ学んだ事。

 一、この人は偶然という言葉が好きな事。だって、いつも出てくるし。聞き飽きたし。

 一、知らない人は、無視!だって、これ以上ここにいたら、妄想がうつりそうだったんで。

 以上!!

 ともかく、「知らない人には、ついて行っちゃだめよぉ」原理で、身の危険を感じたら、その場をごまかして逃げる事が大切って事ッスね。

 「じゃ、俺も忙しいんで」

 「!分かった!!これが正解でしょ!!幸せな日々を過ごしていた二人は、ある日を境に会う事が出来なくなる。愛し合う二人は、運命に翻弄され、別々の道を歩む事を決意する。本当に運命に逆らう事は出来ないのか!?誰もがそう思った時、運命の女神は、優しく恋人達に笑いかける―――。これ!!これでしょ!!決まりだわ!!」

 よ、よくここまで空想が、てか、妄想が広がったな……。すごいぞ、この人。やっぱ、ヒロイン交代か?ま、俺は関係ねぇいからいいけど。主人公が変わっちゃったら、ちょっと寂しいじゃん。……寂しい、ですよね?

 「いいわ!いいわよ、これ!!愛し合う二人は、お姫様と、軍人。相容れる事の出来ない立場。それでも、二人の愛は冷める事を知らないの。余計に熱くなり、より固いものになっていくの。誰に反対されても、二人は愛し合い、運命に翻弄されながらも、幸せに生きていくの。うん、これなら、きっといけるわ!!」

 どこに行けるんだ?天国か?それとも地獄か?

 「愛し合う二人、それが、この世界で止められない熱いものなのよ!!」

 ……そういう台詞は、少年漫画の中で言えよ。ジャ○プ的なところとか。

 「そして、この世で一番美しいのも、その愛し合う二人!!」

 ……少年漫画かと思ったら、急激に少女漫画?何だ?マーガ○ットか?

 「そうよ、そうに決まってるわ!!私と、瀬川君みたいに!!」

 ふ〜ん。……って、アレ?何で俺の名前知ってんの?何故に知ってんの?

 「膨らんでいく愛のつぼみは、しぼむ事を知らないわ!」

 しぼんで欲しいんですけど!心からしぼんで欲しいんですけど!!

 「ねえぇ、そうでしょ?瀬川君」

 「……てか、君誰だよ。何で俺の名前、知ってんだよ」

 「だって、有名じゃない!どんなボケでも、必ずつっこんでくれるって!!」

 いつの間にぃぃぃーーー!!

 誰だ!?誰がこんな変な噂を広めた!?嬉しくないぞ!!かなり不愉快だぞ!!

 ……てか、今まで出てきた人って、自分をボケだと思ってでてきてたのか?

 いやいや、待て。落ち着け、慎吾。こいつは誰だ?妄想暴走中女だぞ?危ない人の分類に入る人だぞ?ゴミか、カスかって聞かれたら、どちらかと言えば、カスだぞ?そんな奴の言葉を鵜呑みにするのか、慎吾!?

 「……誰が言ってた、それ?」

 「ん?私が今さっき考えついたの。素敵でしょ?」

 全っっっ然、素敵じゃないんですけど!?どこがどう素敵!?どういう価値観してんの、アンタは!!

 「誰かに、広める気?」

 「広めるわよ。たくさん広めて、世界中に知ってもらうの。そして、私と瀬川君は、ハリウッドスターになるの!!」

 どうやってですかぁーーーーーーーーーーー!!

 それだけで、ハリウッドスターになれると思うのか、この妄想女!!そんなに甘くないんだよ、この世の中はっ!!……ってこれさっき作者が言ってた言葉じゃねぇかぁ!!本当だったよ、世の中、甘くない事!!

 てか、それだけの事で、外国にいける事が、マジすごいぞ!!

 「つかさ、君の名前は?」

 「私?私は、眞蒙奏子(まもう そうこ)よ」

 「……」

 な、名前の中に妄想って入ってるぅーーー!!漢字も違うし、ちょっとカッコよくなってるけど、確かに妄想って入ってる!!すごいぞ!!すごいぞ、親!!子供が、こういう風になってしまう事を、予見したんだな!!そうだろ!?

 「……あ、チャイム」

 え?チャイム??

 ……ヤバァーーーい!!朝練始まっちゃった!!先生に怒られる!!


 どうして、俺の一日の始まりは、こうも落ち着いて始まらないのでしょうか?答えが分かった方、是非、是非こちらの宛先までおねがいしまぁす。

 あ、お電話でもいいですよ。

 言いますから、メモしてくださいね。

 373-3291-0456304 です。

 もう一回、言いますよ?

 373-3291-0456304 《みなさん みにくい あほころそうよ》 ですよ。

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