68、ほのぼのなのか!?
う〜ん、ほのぼのした感じのものを書こうとしたら、結果、こういう風になってしまいました。
ほのぼの、してないなぁ……。
暇だ。今こそ、暇だ。真実の暇だ。意味分かんないけど、暇だ。ともかく、暇だ。
「……暇だぁ……」
夏休みの宿題は終わったし、部屋の掃除は(自分で言うのもなんだけど)完璧だし、家でやる事はすべて終わらせたし。あ゛〜、暇っ!
クソジジイは仕事にやっと戻ったし、母さんはまた『セール』という言葉に負けてどこか言ったし、弟とか妹とか、兄とか姉とか、そういうのいないから、暇だ。ああ、一人っ子だという事を、今だけ呪うよ。だぁ〜、暇っ!
「どっか遊びに行こうかなぁ……」
でもなぁ、こんな暑い日に出かけたくないし、面倒臭いし、怪我治ったけど歩くと痛いしなぁ。……おい、そこ。弱虫とか言うなよ。真面目に痛いんだからな。はぁ〜、暇っ!
ピーーーーーーッポン!
……何か、変なチャイムの音が聞こえたような……。
ピーーーンポーンッ!
……普通のチャイムっぽいけど、なんか長くね?
ピンポーン!
……普通すぎてつまらんな。誰だ。
「森野ですけどぉ」
……無視決定だな。
「夏鈴だよ。夏藍もいるよ」
……無視すると泣きそうだな。
「小橋だぜぇ」
無視だな。
「開けてよぉ、いるのは分かってるんだぞぉ、ダーリン」
誰が開けるか。居留守してやる、居留守。
「お邪魔しますよ」
いや、鍵かけてあるから、入れねぇよ。……って、夏藍が言ったのか?なら、何かと間違えたはずだ。
「親友の俺だけでも入れてくれよぉ」
誰がお前の親友だ。お前はまだ、友達のレベルだぞ。てか、一人だけ抜け駆けしようってのか。
よし、小橋以外、入れてやるか。あ、でも、森野は入れたくねぇなぁ。
「……」
「ダーリン―――だっ!」
ドアの間近に立ってたようで、見事に激突。打ち所が悪かったようで、倒れたけど、森野なら大丈夫だよな、うんうん。……俺のせいじゃねぇぞ?アイツがいけないんだ、アイツが。
「慎吾にぃだぁ」
「シンドリーだぁ」
シンドリーって誰だよ。てか、いい加減、俺の名前を覚えようぜ。
「遊びに来たの」
「足見に来たの」
……どっちが真実?
「あ〜……、お母さんは?」
「せーるって言うところに行ったぁ」
「ばーげんって言うところに行ったぁ」
……どっちが事実!?
「違うよ、夏藍ちゃん。せーるだよ」
「そうだっけ?せーらーだっけ?」
違うから、セールだよ、セール。
「よう、瀬川。足の具合は―――」
「あ゛〜、ともかく、上がれ」
「お邪魔しまぁす!」
「おしゃれしまぁす!」
おしゃれはしなくていいぞ、夏藍。
「お〜い」
さて、麦茶でも出してやるか。
「おい、無視か?」
……せんべいあったかな?
「聞えてますか?」
……あ、饅頭があったか。
「無視なんですか!?」
そうだ、アイスの方が喜びそうだな。
「スルーしてるよね!?」
よし、そうしよう。
「その扉を閉めないでぇ!!」
「……あれ?小橋。お前もいたのか」
「気づいてただろ」
「何に?」
「俺の存在―――閉めるなって!」
「……ちっ」
「おい!今舌打ちしたべ!」
どこの方言だよ。
「……ぺっ」
「つばを吐くな!―――閉めるなっての!」
「うるせぇな。お前は呼んでねぇんだよ」
「あの子達と、この伸びてる人だって、呼ばれてねぇだろ!?」
「お前は呼ばないと来ちゃいけねぇんだよ」
「なんだよそれ!」
「世界の法則」
「そんな法則、俺が打ち砕いて―――閉めるなぁ!!」
ちっ、また失敗か。
「なんだそのあからさまに悔しそうな顔は!俺を家に入れたくないってか!」
「そうだよ」
「即答かよ!迷う事無く答えるな、おい!―――って、閉めるな!!」
「んだよ、お前に用ねぇんだ。帰れ」
「いや、俺はお前のみ―――閉めるなってば!」
「んだよ、しつこいぞ、ストーカー」
「俺はストーカーじゃないから!ストーカーこっちだから!」
「お前も十分ストーカーだ。すみまっせぇぇぇん!!変な人が襲ってきます!!」
「ちょ、お前―――!」
「でも、足怪我してるから逃げられないよぉぉぉ!!誰かぁ、たすけ―――」
「変な事叫ぶな!!ご近所さんに、迷惑だ!!」
「ふごふふふ」
口を塞ぐな。息が出来ない。
「てか、そんな見事な棒読みで、助けに来る人なんか―――!!」
「どうした!?」
……いましたねぇ。あ、この人お隣さんです。名も無き、お隣さんです。
「どうしたんだい?何があったんだい!?」
「いえ、あ〜、劇の練習なんですぅ。気にしないでください」
「そうか。じゃあな」
「……」
「……来たじゃん」
「お前が誤解を招くような事をするからだろ!!」
「慎吾にぃ、のどかわいたぁ」
「はいはい」
「わっちもぉ」
「……はいはい」
「俺もぉ」
「さあ、こんな変態さん見てないで、中に入ろうか」
「変態さんとは何だ!」
「うるせぇな。黙れ、影薄」
「影薄言うな!そこらへんの奴よりは、多く出番があるぞ!!」
「……」
「無言で閉めるな!せめて何か言え!!」
「消えろ。じゃ」
「消えろって何だよ!じゃって何だよ!」
「そのままそのとおりだ」
「意味わからねぇから!ともかく―――閉めるなぁぁぁ!!」
「五月蝿い!ご近所に迷惑だろうがっ!!」
とりあえず、鼻狙いでグーパンチ。一回、人の鼻へし折ってみたかったんだぁ♪HAHAHA。
「鼻が……鼻がぁぁぁぁ」
「……じゃ」
小橋はほっといても、生き残るよな。地獄からも帰ってきそうだもん。
*
「おいしぃ」
「おいかわぁ」
おいかわって魚だよ?それを分かって言ってるのか、夏藍よ。
とりあえず、リビングで遊んでた双子ちゃんに、アイスをあげた。チョコとストロベリーの。えっと、確か、チョコ持ってるのが夏鈴で、ストロベリー持ってるのが夏藍。
「おいしねぇ、夏藍ちゃん」
「おかしいねぇ、夏鈴ちゃん」
何がおかしいの?何が面白いの!?
「慎吾にぃは、たべないのぉ?」
「のぉ?」
「俺はいい」
もう食べたし。一日にそんな何個もアイスはいらん。和食だったら、いつでもどうぞ。
「これ食べ終わったら、あそぼ」
「明日」
……今日遊ぶんなじゃなくて、明日遊ぶのか?ただ単に、夏藍の間違いなのか?
「今日遊ぶんだよ」
「キョタ遊ぶんだよ」
キョタって何?植物?人?地球外生物?てか、『今日』がどうなったら、キョタになるの!?
「……」
それにしても、幸せそうに食べるなぁ。
「……ねぇ、誰かお庭にいるよ?」
「……兵隊さん?」
庭に兵隊って、何の特訓中!?てか、瀬川家に兵隊来たら、一大事だから!!
……ん?ちょっと待てよ。兵隊さんと間違いそうなのって……あいつか?
「……やっぱりか」
庭にいたのは予想通り、まあオマケ付だけど、影薄がいた。しかも、森野と変な事やってる。
「何やってるのかな?」
「何死体のかな?」
おい、不吉な事言うな、夏藍。まだ死んでねぇから、生きてるから、あの馬鹿達。
えっと、状況を説明すると、じゃんけんしてるのはいいんだけど、かなり白熱してる。あいこが何回も続いているようで、目が血走ってるし。てか、拳に力を入れすぎだ。
「危ない人?」
「ハブない人?」
ハブない人って何?『ハブ持ってない人』の略?ハブない人って。てか、普通にハブは持ってないから。持たないから。
「ねぇ、危ない人?」
「ねぇ、胡坐かき?」
胡坐かき?胡坐かきたいのか?ならご自由にどうぞ。
「危ない人達だから、無視してな」
「でも、気になるよ」
「でも、木になるよ」
何が!?あいつらが木になるの!?
「……じゃあ、和室に行こう。あそこは庭が見えないからさ」
「うん!」
「うぬ!」
だから、うぬはないだろ?どこの偉そうな大名?
で、双子達を和室に非難させてから、庭に近い、一番大きなガラス窓を開ける。
「あいこでしょ!」
「あいこでしょ!!」
……どんだけやってたんだろ。庭の草がしおれてる……。
「おい、そこの馬鹿共。人様の庭で、何やってんだよ」
「ダーリン!」
「瀬川!」
「……」
決着、ついたな。
「あっ!買った!買ったわ!!」
何を!?何を買ったんだよ!勝ったの間違いだろ!!
「何!?この俺がまけただと!?」
お前も発音違うから。まけたじゃなくて、負けただろ?分かりにくい間違いすんな。
「ところでダーリン」
「ダーリンじゃない」
「いいじゃない、恋人同士なんだから」
「小橋、こいつどこかで頭売ったか?」
「売ってないわ!せめて、撃ったと間違えて!」
「両方違うだろ、バカップル」
「お前に馬鹿と呼ばれたくない。しかも、俺はこいつの彼氏じゃないぞ、影薄」
「貴方に言われても、嬉しくないのよ、影薄ラー君?」
「俺はそんな不名誉な―――」
「さあ、ダーリン。誓いのキスを」
「うるせぇな、てか、なんだよ誓いのキスって」
「じゃあ、普通のキスでいいわ」
「お前にする事は、何もねぇ」
「え!?」
「何故にそうあからさまに驚く」
「てか、人の話を聞けよ、お前ら!!」
「黙れ、影薄。お前と話すような事はないんだよ!」
「五月蝿いわ、薄ラー。貴方とは話してないの!」
「揃いも揃って毒舌か、コラ!!」
「悪いか、こら」
「悪かったわね、こら」
「てか、話の内容、何?」
「……」
「……」
「何故に黙る!?」
「……いや、そのぉ……」
「なんていうか、……な?」
「俺に聞くな」
「……」
「……」
「用がないなら、さっさと帰れ。そして、二度と俺の前に姿を表すな!」
「それは嫌!」
「俺もヤダ!」
「消えろ」
「嫌よ」
「失せろ」
「俺だけ違う!?」
「ともかく、消えねぇと」
「何?」
「何してくれるの?」
「ミンチにして、人間ハンバーグ作ってみる?」
「……帰ろっか、影薄君」
「……影薄君じゃないけど、帰るか毒舌女」
「待てよ」
「ごまんなさい!」
「ごめんください!」
2人とも言葉が違う!ごめんなさいだろ、ごめんなさい!夏藍に影響されたか!?
ともかく、邪魔な二人は追い払えたんだ、よしとするかな。
*
「……ありゃりゃぁ〜」
これまた幸せそうに寝てるなぁ。微笑ましいよ、この平和さが。
「ぬふふ〜〜〜」
「くふふ〜〜〜」
……何か怪しい言葉を発しているような気がするけど、起こすのは可哀相だよな。そだ、風ひくといけねぇから、タオルケットでも掛けてやらねぇと。
「ふぁあ〜〜」
俺も、寝ようかな?ああ〜、ねみぃ……。
「ただいまぁ、慎ちゃん」
あら?返事がないわね?どうしたのかしら?
あら、読者の皆さん、こんにちは。あの、慎ちゃん、どこに行ったか知りません?……和室、ですか。涼村さんの所の夏鈴ちゃんと夏藍ちゃんと一緒なんですか?
「……まあ」
幸せそうに寝てるわねぇ。母さんも混ざりたいわぁ。タオルケットに包まった双子ちゃんと、寄り添うように寝てる慎ちゃん。微笑ましいわねぇ。慎ちゃんは一人っ子だから、妹達が出来たみたいねぇ、うふふ。
「そっとしておいてあげましょうか」
慎ちゃんにもタオルケットを掛けて、私は夕飯の献立をたてる事にしますわ。
暑い日に暇だと、なんかうつになりそうになりませんか?
まあ、どうでもいいんですけど……。