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ドSな俺と、ドMなアイツ  作者: 下弦 鴉
第二章 愉快な夏休みの過ごし方
65/117

64、仕組まれたカード!?



細切れで読みにくかったらゴメンなさい……。誤字脱字が多くて読みにくかったら、ゴメンなさい……。


そして、遂に……。

 「……」

 「……」

 こんなに怖くない肝試し、初めてってくらいに怖くない。でも、あの臆病者は怯えてそうだな。

 俺達、青色のルートは、資料室から始まる。行った事ねぇけど、紙(地図?)に書いてある。で、そのあとは、ダンスホール、厨房、客間、大広間になってる。最後が大広間ってことは、そこで下弦は待ってるってことだろう。

 「それにしても……」

 怖いというか、逆に微笑ましいんだけど。狩燐坊ちゃまとその仲間達のために、健気に働いている使用人達が、微笑ましすぎるんだけど。今目の前にいるのって、なまはげだし。

 「邪魔、どいてくんね?」

 「あ、すみません。どうぞお通りくださいませ」

 てな感じにすんなり通してくれるし、ペコペコ頭下げられるし。肝試しなのに、全然試されてねぇよ。平和すぎて欠伸が出るよ。ふぁあぁ……。

 「……そっちじゃないよ」

 「ん?」

 「こっち……」

 今思った。このお化けたちより(今目の前にいるのは、吸血鬼もどき。全然怖くない、てか、可愛い)、暗い森野の方が怖い。だって、大人しすぎるだろ、これ。

 「……開けるぞ」

 「……」

 「返事してけろ」

 「……うん」

 よし。で、俺らは初めて資料室に足を踏み入れた。



 「この手を放さないでよ、この手を放さないでよ!」

 「五月蝿いなぁ、黙れ」

 「嫌だ!話してないと、なんか呪われそうじゃん!」

 「なんでだ」

 「なんとなくで」

 「……」

 「黙らないでぇぇぇぇぇ!!」

 ……ホント貧乏くじ引いた。全然怖くねぇのにしがみついてくるし、叫び声あげるし、独り言がやけにでかいし。あ゛〜、俺の鼓膜が悲鳴を上げているぅ〜。

 あ、俺ら赤のルートは、展示室から始まる。展示室って何ってか?それはアレだ、……あとがきへ続く!

 で、あとは、親父の部屋、空き部屋、屋根裏部屋、大広間。最後が大広間って、ベタだな。

 「先行くなよぅ、おいてくなよぅ」

 「五月蝿い、さっさと歩け。じゃねぇとおいてくぞ」

 「すみません!」

 ……なんか、もう疲れてきた。



 「……思ったより、怖くないね」

 「フフ、そうね」

 最初は結構怯えてたサチコだけど、今はちょっと意気揚々と歩いてる。私よりも歩調が軽いわ。

 「ね、最初の部屋ってどこ?」

 「……フフ、当ててご覧なさい」

 「わかんないわよ!」

 「フフ、前向いて歩かないと」

 「はいは―――ひゃ!!」

 後ろ向きで歩いていたサチコが前に向き直ると、目の前には包帯グルグル巻きの人。フフ、使用人さんも大変ね。

 「……どこか、怪我でも?」

 「あ、いえ、大丈夫です、はい」

 なんか、しどろもどろね。まあ、いいけどね。

 「フフ、先進むわよ」

 「はぁい」

 私達緑のルートが行くのは、展望室、狩燐のお母様の部屋、待合室、食料庫、大広間。だから最初の展望室に行くために、階段を登っているところ。

 その後3人くらい、重軽傷者の人に会ったけど、サチコがちょっとびっくりしただけで、無事に済んだ。あとは、部屋へ行けばいいだけ。



 『星空に向かって、魂の叫びを!!ジャンルは問わないよ。あ、2人ともやってね♪』

 魂の叫びって、どこのバンドの抱負だよ。てか、星空付ければカッコよくなったとか思うなよ、あのヘボ作者め。

 「叫ぶんだと」

 「……」

 「返事」

 「……分かった」

 「おし、叫ぶぞ」

 ……大きく深呼吸、ピッチャー第一球投げました!!……じゃなくて、叫びます!!

 「ハゲてねぇぇぇぇぇえぇぇぇぇぇぇぇぇえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」

 「ごめんなさいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ……ハァハァ」

 息切らしてる!?てか、久しぶりにちゃんとした森野の声聞いた気がする。

 「なんか、スッキリしたな」

 「うん」

 お、森野もなんか明るくなったし、カード消えて、次の部屋へ行けるみたいだし、よしとするか!



 「ぎゃあぁぁぁぁぁ!」

 「何叫んでんだ」

 「だって、だってさ、なんか、叫び声が……」

 「お前が自分で叫んだ奴じゃねぇの?」

 「あ、そか」

 ……こいつのせいで、全然先に進めねぇよ。どうにかしてくれよ、神様。



 「……長かったね、階段」

 「フフ、いい運動になったわ」

 「で、カードってこれだよね」

 「フフ、そうみたいね。なんて書かれてる?」

 「『1分間息止めてみよぉ♪』だって」

 「フフ、楽勝ね」

 「え!?すごくない!?普通だったら、苦しいでしょ!?」

 「フフ、世界の女王様の実力、なめないで」

 「ははぁ……」

 これならすぐに、先に進めそうだわ。



 「やっと、やっとついた……」

 「なんだよもう!散々脅かしやがって!!」

 お前が勝手に怯えてただけだろ。あ゛〜、どうせなら、葛野木か斎賀がよかったぁ。ホントは瀬川とがやりやすいけど、森野を何とかするためだ、仕方ねぇか。

 「てか、趣味悪っ!!」

 「俺に向けて言ってんなら、お前はここにおいて行く」

 「それだけはやめて!」

 「で、カードはっと……あったあった。なになに?『渾身の一撃を、相手にかませ♪』」

 「なっ!?」

 「じゃ、大人しくな」

 「チョ、チョ、待て……まってぇ!!」

 時既に遅し。俺の渾身の一撃、蹴りは見事に影薄の腹に命中しました。

 カード消えたし、影薄背負って先進むかな。



 「キレイだねぇ」

 「フフ、ちゃんと手入れしてある証拠ね」

 展望室から狩燐のお母様の部屋は近く、すぐに着くことが出来た……けど。

 「広いねぇ」

 「フフ、カードを探さなきゃね」

 「……明かり、点けちゃダメ?」

 「フフ、つけたら下弦の痛いお仕置きが待ってるんでしょ?」

 「蝋燭で我慢しろって、これだけじゃん、ムードがあるの」

 蝋燭は、みんなと別れてから、直接下弦に渡されたもの。みんなも持っているのかしらね。

 「フフ、ないわね」

 「……暗いぃ」

 「フフ、我慢なさい」

 「はぁい……あ」

 「フフ、何?」

 「あった!」

 「フフ、早いわね。なんて書いてあるの?」

 「『千の○になってを熱唱しよう♪』……だって」

 「フフ、ちょっと恥ずかしいわね」

 「演歌なら私の18番よ!任しといてよ、良美!」

 「フフ、じゃあ任せるわ」

 ……ついでに、○の風になっては演歌じゃないわよ、サチコ。



 廊下でお化けもどき達にすれ違って気づいた事、人じゃないもの混ざってね?変な杖持ったオバハンに襲われかけたし、頭から角生やした巨人に出くわしたし、顔面が親父の犬とかいたし、ホントに足ない人とすれ違って黄泉の国への道を問われたし……。ちょっと本格的になってきたかな?

 でも、俺はそんなの問題にしてねぇ。問題は今、目の前にある。前にもこんな事を言った気がするけど、今回も目の前に問題はある。

 「……」

 何このゴスロリな感じの車椅子。闇に紛れて気づかなかったから、思い切り蹴っちまったじゃねぇかよ、森野が。

 黒いフォームは車椅子の原形をとどめているが、ほかは例外。背もたれの部分に小悪魔的な羽はえてるし、足掛けるところは悪魔が支えるようになってるし、肘掛はドクロが彫られてるし、人が持つところはイガイガしてるし、タイヤは白黒。これ回ってたら、目ぇ回すじゃねぇかよ。

 しかもよりにもよって、『Dear ハゲりん』ってあて先付きだし……。

 「ハゲりんって……」

 「知るか、そんなもん」

 「でもさ、これ……」

 「いいから先行くぞ。俺は松葉杖これさえあれば、大丈夫だ」

 「……」

 「ホントに大丈夫だからさ、心配ねぇよ。ホラ、行くぞ?」

 「……うん」

 で、たどり着いたよ、ダンスホール!

 「オープン・ザ・ドアー」

 そこ!『棒読みじゃん』とか言わない!!

 「さ、カード探すぞ」

 「うん」



 「次はぁ、……クソ親父の部屋か」

 五月蝿いカスが黙ると、結構静かなんだな。襲い掛かってきた無礼者どもは、片足で撃退したし、間違えて血まみれの誰かさんを蹴っちまったけど、ダイジョブだよな?クール宅急便でどっかに送っとけば大丈夫だよな?

 「……入りたくねぇな」

 なぜなら、親父は俺が大好きみたいだから、盗撮写真が多い。手っ取り早く、この場は去りたい。

 で、カードに書かれていた事。

 『早口言葉の東京特許許可局を、10回言おう♪』

 よりにもよって、早口言葉かよ……。

 「東京特許許可局東京特許許可局東京特許きょきゃ……」

 舌噛んだぁ……。さ、みなさんも、チャレンジ。



 「やってきました、待合室♪」

 「フフ、楽しそうね」

 「そう?」

 この子、サチコは、まだ千の○になってを演歌だと信じています。だから、こうして元気なのよ。

 「あったよ、カード!」

 「フフ、『相手の髪の毛を一本抜きなさい♪』だって」

 「……」

 「……」

 女にとって、髪は命のようなもの。この勝負、絶対に負けられないわ。

 「ゴメンね良美、私、負けられないの」

 「フフ、あら、奇遇ね。私もよ」

 そして、私達の髪をめぐるバトルは始まったの。



 「……あったよ」

 「なんて書いてある?」

 「『ブレイクダンス、やってみよぉ♪』だって」

 「不可能だから」

 「でも」

 「お前、できるか?」

 「……出来ない」

 「だよな。俺も出来ねぇ。どうすっかなぁ……」

 あ〜、何でブレイクダンスなんだ?何で肝試しなのにブレイクダンス?しかも怪我してるのにブレイクダンスって、……ありかよ!!

 「あ、私やるよ」

 「出来んのか?」

 「……分からないけど、やってみる」

 ……で、すごかったよ、こいつ。ダンスのプロ!?見たいな感じで。

 「おま、……どこで習った!?」

 「え?いや、ただ、見よう見まねで……」

 そういうので出来るもんじゃねぇよ?できちゃったお前、何?何なの!?

 「と、ともかく、最後の部屋、行こうぜ」

 「うん!」

 いい汗かいて、森野もノッてきたみたいだ。いつもの感じ、あのウザい感じに戻ってきてる。



 「……はっ」

 「今頃お目覚めかい?」

 「ここは?」

 「屋根裏部屋」

 「途中の二個は?」

 「俺だけでクリアした」

 「で、お題は?」

 「ここのか?」

 「もち」

 「『下弦の本名の名前の由来はなんでしょう♪』だ」

 「本名すら知らないのに、由来当てんの!?」

 「そうだ。もうかなりの時間を費やして考えてみたけど、全部不正解」

 「不正解だとどうなるんだ?」

 「こうなる。 由来は、テキトー」

 (ハズレダヨ♪ハズレダヨ♪ハズレダヨ♪)

 ……何度このいらつく声を聞いたことか。

 「……無謀じゃね?」

 「もうそんな事、分かってら」

 「そうですか」

 最後の部屋だってのに……。



 「さむ!?」

 食料庫って、閉じ込められたら最期じゃない……。うう、寒いわ……。

 「か、かか、かかか」

 「かか?」

 「かか、かーかか、かかっかかかか」

 さ、寒くて、同じ言葉を繰り返しにしか言えないわ……。うぅ、寒い……。

 「かっかかか!!」(さ、寒いよ!!)

 「かーかか、かーかかかか!!」(カード、カードよ!!)

 「かかかかかか!?」(なんて書いてあるの!?)

 しゃべるのは難しかったので、見せたわ。

 『パン壁を20回噛まずにゴー♪』

 「かかかか!?」(殺す気!?)

 「かかかかか」(そのようね)



 「最後、客間」

 ここは飾りが多いけど、普通だからいい。てか、この家の普通は異常だけど、たくさんある部屋の中で、ここはなんか落ち着く。

 「カードは、これか」

 目立つねぇ、机の上に置いてあると。

 う〜ん、なになに……。

 『仲直り、して欲しいな♪』

 願いじゃん。てか、これ、俺らに仕掛けただろ。てか、喧嘩した覚えはねぇぞ。

 「なんて、書いてあるの?」

 「仲直りしろだとよ」

 「……」

 そこで何故に黙る!?

 「……ゴメンなさい」

 「あ?」

 「怪我させて、ゴメンなさい」

 あ゛〜、やりにくいけど……。

 「……自分のせいだと思うなら、一生そのままでいればいい。だけど、そんなお前は俺は嫌いだ。近くに、隣にいて欲しくねぇよ」

 「……ゴメン……なさい」

 「それがらしくねぇんだよ。お前に笑ってもらえるように努力した奴の気持ちを、ちゃんと受け止めたか?お前は、そんな奴らの顔さえ見ない。今のお前も、俺の顔をみようとしない」

 頬を両手で掴んで、無理矢理顔を合わせる。涙で滲みかけた目が、戸惑いに揺れた。

 松葉杖の支えを失って、右足だけで、何とか力強く立つ。ここで倒れたら、もう前の森野には、戻れない。

 「俺は元気だ、お前の傍にいて、お前の話を聞く。変な事を言えば、笑い飛ばしてやろう。変な行動をすれば、すかさず止めてやろう。気にくわねぇんなら、面と向かって言え。俺の顔見て、思い切り大嫌いだと言ってみろ、近寄るなと言ってみろ。そしたら俺は、お前の場所を、他の奴のために使うから。でも、でも今はさ、お前のためにあるんだよ、俺のとなりは」

 「……私に、……そこにいる資格が……ない、よ」

 「資格?なんだそりゃ。そんなの関係ねぇだろ?俺はどんな奴が傍にいても、そいつのありのままを受け止める。狩燐だって小橋だって、斎賀だって葛野木だって、誰でも受け止める。何度だって、受け止めるさ。俺の隣にいるべき人は、俺が決める」

 「……怪我をさせたのに?」

 「怪我なんて、時が経てば気付かねぇうちに治ってるもんさ。それに、人が傷つくのは当たり前なんだ。怪我するのだってそうさ。一々こんな事気にしてたら、自分の身がもたねぇ。だからさ、人は忘れる事ができる。その時どんなに気にしてても、忘れる事でまた前を向ける。お前がこの事を忘れるべき時は、今だ。すぐにとはいかねぇけど、忘れて人のためになる事だってあるんだよ」

 恥ずかしい気持ちをぐっと堪えて、俺は、森野に居場所をやろう。

 「お前はここに、俺はここにいる。それだけの事さ。怪我なんて関係ねぇよ。俺の傍にいていいのは、お前だよ、森野」

 崩れてしまわぬように。壊れてしまわぬように。消えてしまわぬように。そっとそっと、抱き寄せた。

 「うぅ……」

 耳元で、涙を堪える声がする。

 「泣けばいいさ、ご自由に。俺は、お前を怒る気はねぇよ。だから、な?もうお前は、何も心配しなくていい」

 「じゃあ、……また、ダーリンって呼んでもいいの?」

 「気にくわねぇけど、呼びたきゃ呼べ!」

 「じゃあ、……私、ダーリンの傍にいていいの?」

 「お前が嫌じゃなけりゃな」

 「……じゃあ、じゃあ―――」

 そっと撫でた頭に、やっと森野らしさを感じられた。





 その頃他の組は、もう大広間で、森野達の帰りを待っていた。


本編で紹介してなかった部屋の紹介ぃ。


資料室……狩燐家代々の歴史がつまっております。本棚と資料の量がハンパない。


展示室……狩燐父の趣味の、数々のレプリカがおいてある。


親父の部屋……別の部屋と同じく、広い、でかい。違うところは、狩燐に関する写真が無駄に多い事。


空き部屋……予想外に使われなかった部屋。友達や客が来たら、使ってもらう。


屋根裏部屋……掃除はあまりされないので、埃っぽい。それ以外はどこの家とも変わらない、普通の屋根裏部屋。


展望室……狩燐父が、星を見るのが好きな狩燐母のために作った部屋。プラネタリウムにもなる。


お母様の部屋……綺麗で清楚な部屋。星の図鑑や、たくさんの万華鏡がある。


食料庫……その名のとおり、食料を保存する所。普段勝手に入ると、シェフが牙をむく。



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