60、これって、無事生還と言えるんでしょうか!?
今回も、少し長くなってしまいました、すみません。そして、これで洞窟編は終わりです。
ではではぁ、最後の洞窟編、いってみよぉ♪
森野が暗い暗い、怖い怖いと五月蝿いなか、とりあえず歩みを止めずに先に先に進み続けているけれど、一向に外に出れる気がしない。つないだ森野の手の震えも、尋常じゃない。そんなに暗いのが嫌いだったっけ、こいつ……。
「わぁ〜ん、パパァ、ママァ」
「どこの幼稚園児の泣きまでだ」
「近所の子」
「あっそ」
「わぁ〜ん、ダーリンも冷たいよぅ」
「俺はいつもだ」
「いつもはもうちょっとホットなツッコミしてくれるもん」
「ホットなツッコミってどんなだよ」
「……わかんない」
「わからねぇのかよ!!」
「だって、ダーリンの言葉には、いつも愛が込められてたから」
「愛なんて込めねぇよ、憎しみなら込めるけど」
「憎しみを乗り越えて、愛に変わっていくんだよ」
「乗り越えられねぇよ、てか、乗り越えたくもねぇよ」
「え!?私のために乗り越えようとしてくれてたんじゃないの!?」
「何を乗り越えればいいんだよ?お前の死体か?」
「それはあまりにも悲しすぎるから、却下」
「誰が悲しい」
「ダーリンが」
「喜ばしいんだけど」
「マジですか!?」
「マジですとも」
「……」
「……」
ネガティブな事を考えないように無理に会話してみたけれど……続かねぇ。続かねぇよ。
大体、何でこんなやつとこんなに長い時間いなきゃならねぇんだ。これ夏休み編の何話目だと思ってんだ。もう、九話目だよ、九話目!そろそろ帰りの支度してくる頃だろ、フツー。もしくは肝試し中?
「あ〜、太陽が恋しぃ」
「私は、ダーリンがいれば……あの、その……ね?」
「ね?ってなんだよ、ね?って」
「……察して」
「何をどう察しろってんだよ!」
「私の気持ちを素直に感じて」
「そうすると、お前は俺の気持ちをしっかり感じて欲しくなるんだけど?」
「好きって事ならとっくに分かってるゾ♪」
「いや、ゴキブリ並みにお前は嫌いだから、ヨロシク」
「マジですか?」
「マシですとも」
「……」
「……」
こんな会話、数行前にもしてなかったっけ?てか、同じ事を言ってた気がするんだけど。
どんっ
う〜ん、ベタに何かとぶつかったんだけど……何だ?
「おい、急に止まるなよ森野」
「え?止まってないよ、私はダーリンとのバージンロードを歩み続けてるよ?」
「妄想世界の中じゃなくて、現実世界の話だよ」
スパコンっと、頭をはたく。手加減しないといけねぇのって、なんか嫌だな。
「今、止まったトコ」
「前にいる?後ろにいる?」
「ずっとダーリンの隣に居る」
「じゃあ、お前も何かにぶつかったか?」
「うん、毛むくじゃらの何かに」
「北京原人かな?」
「違うよ、アウストラロピテクスだよ」
「よく噛まずに言えたな」
「早口言葉は得意だと思うから」
「得意な訳じゃねぇのね」
「予想だね」
シャー
猫?蛇?森野??
「ねぇ、ダーリン。何か言った?」
「言ってねぇ。お前は?」
「言ってないよ」
「……」
「……」
携帯、のランプスイッチON!!
シャーーー!!
「いっやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
目の前の怪物を見て、逃走スイッチ即ON!!
いっやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!
ん?何か叫び声が聞えたような……空耳かな?あ、どうもみなさん、こんにちは。薄情者達によって突き落とされ、かすり傷と痣だらけの勇者コバッシーこと、小橋です。
(そんなんどうでもいいから、先進めろや)
作者!?お前、居たんなら、お前が話し進めろよ!!
(え?いやだ。だって、飽きた)
飽きるなよ!!てか、飽きるの早っ!!
(そーゆー性格だから)
万年自由人め。
(てか、早く話進めろっての)
はいはい。おおせのままに。
「……あ、狩燐から懐中電灯貸してもらえばよかった」
今頃後悔してもなぁ。戻ったら戻ったで、……何か怖いな。仕方ない、携帯のランプで我慢するか。
で、点けた瞬間。
カサッ!!……カササ!!
「マジですかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
ベタだけど、ホンと、ベタだけど、ゴキ+タランチュラの大群と鉢合わせ♪
俺って、……もしかして、ついてない?
「はぁはぁ……」
「も、もうだめ……」
諦めムード満開の、つかれきった中学生です。あ゛〜、もう、マジホントダメだわ。疲れた、精神的にも肉体的にも。マジ限界点突破。おめでたくないけど、おめでとう。
「ちょっと、一休みぃ」
「さんせぇい」
よっこらせっと……。
……ジジ臭いとか言うなよ、疲れてる時は、自然にこういう言葉が出てくるんだよ。分かったか!
「ねぇ、ダーリン。ここから一生出れなかったら、結婚してくれる?」
「……話の意図が、全くつかめねぇんだけど」
「出れなかったら一生2人っきりでしょ?なら、……いっその事……ね?」
「だから、その『ね?』は、なんなんだよ」
「察してくれると嬉しいね?のね?」
「死ねのねじゃねぇのか?」
「違うよ、幸せになろうね、のねだよ」
「違うな、早く帰りたいね、のねだな」
「えぇ〜、どちらかと言えば帰りたくないね、のねでしょ?」
「……なんか、早口言葉見たくなってきてね?」
「そうみたいね」
……。
ち、沈黙って、こんなに重かったっけ?こんなに重力感じたっけ?え、こんな寂しい感じになるっけ??
「ねぇ、ダーリン」
「なんだよ。またくだらない事言うんなら、その口、本物の糸で塞ぐぞ」
「運命の赤い糸で、どうぞ塞いでくださいまし」
「キモい事言うな、馬鹿」
バシッと、ちょっとだけ本気を出して頭をはたく。見事に床にダイビング。あれ?ちょっと強すぎたかな?ま、いっか。森野だし。
「てか、話を逸らさないで、普通に話せや」
「だって、ダーリンのサディスト性がまだちゃんと残ってるか確かめたかったんだもの」
「簡単に消えたら、この話し続かねぇよ」
「あ、確かに」
「つーか、話しを逸らすなって言ったのに、逸らしてんじゃねぇかよ!!」
本気でグーパンチ!!もち、顔面ね。やっぱ本気で殴った方が、楽しいわ♪
「で、話はなんだ」
「……」
「聞いてんのか、ボケナス」
「……」
「おい、馬鹿森野」
「……」
「……まさか、話の内容を、忘れたとか?」
「……テヘ☆」
「テヘ☆……じゃねぇよ!!なんだよ、人がせっかく大人しく聴いてやろうと思ってたのに!!」
「え!?そうだったの!?じゃあ、今から必死に思い出しまっすっ!!」
「もう、何を話しても俺はスルーするからな」
「えぇ〜、聞いてくださいよぅ」
「ヤダね」
「聞いてよ、ダーリン」
「ダーリンじゃねぇし」
「じゃあ、旦那様?」
「だから、そういうコメントはアキバのメイド喫茶で言ってろ」
「ダーリンのためにしか、こういう事は言わないもん」
「迷惑な話だな、この野郎」
「それって嬉しいって事?」
「迷惑だっつってんだろうが!」
「Whta!」
「なんて言ったんだか、俺にも読者にもわからねぇよ!!てか、つづり違うって、前もツッコんだだろうが!!いい加減覚えろ、ヘボ!!」
「……やっぱり、ダーリンのお言葉は格別ね♪」
「もう一発だけ殴らせろ。そうすれば、お前を冥土に送れる気がする」
「メイド?」
「よくある間違いしてんじゃねぇよ!!」
渾身の一撃!必殺グーパンチ!!そして、死ね!!このクソ森野が!!
カサ
?この嫌な音は……もしや。
カササ
……敵は、一匹か?ゴキか?タランチュラか?もしかして、ラスボス(あ、あの巨大タランチュラの事ね)か!?……いや、こいつぁ……。
「逃げるぞ、森野!!」
「え!?何々!?」
「いいから!こいつは、爆発するやつだ!」
何で分かったかって?そりゃあ、背中に★があったからだよ。これがあるやつは、爆発するんだ。
「何ですとっ!?」
ツッコムより先に、まずは―――。
ドォォォォォン!!
むむ?何か、爆発音がしたような……てか、地響きがすごいな……。そろそろここ、崩れちまうんじゃねぇのか?
……。それって、セガワーズ達、ヤバくない!?
(何気にノリノリじゃん)
コメディーだからな。コメディーだから、ノッてやってるんだぞ、感謝しろよ、作者。
(……帰って犬の散歩でもしよっと)
どこにでもあるような逃げ方すんじゃねぇよ!
「ってぇ〜!」
急に爆発すんな、アホ!主人公様を殺す気か!この物語からツッコミが消えたら大変な事になる事くらい、分かってんだろ、この野郎!!だ〜、いってぇ!!
「大丈夫、ダーリン?」
「これのどこら辺が大丈夫!?」
片足、瓦礫の下敷きだから!!あ゛〜〜〜、いっでぇ〜〜〜!!
「えっと、あの、その、……どうしようっ」
「とりあえず、助けてくれ」
「でも、でもさぁ、うう、私庇ったよね?ダーリン、私庇って、うう……」
「泣く前に助けてけろぉ……」
「ダーリンが、庇って、私助かって、ダーリンが怪我して、私、無事で、うう……」
「だぁかぁら!泣く前に、助けろっつってんだろが!!いてぇんだよ、片足だけ!!」
「うう、ごめんなさい。ごめんなさい、ダーリン……」
「だ〜、もう!……助けてくれれば許すから、助けなさい!!」
「ホント?」
「ホントだから、マジ、助けろ、コラ」
「あい……」
で、早速瓦礫を退かし始めたんですけど……。女子って、こんなに力ないんだって、今になって漸く実感しました。
「うう、重……い」
「いだだだだ!!てめっ、わざとじゃねぇだろうな!!」
「そんな!私、ダーリンのために!」
「いだいがら!ちょ、ちょ、お前、何してんの!?」
「え?邪魔なものを退かそうと」
「もっと丁寧にやれ!そして、良く考えて動かせ!!」
俺の足がある場所に重心がかかるような動かし方するなよ!余計に痛いだろうが!!
「……あ、そういえば、引っ張ったりしたら、」
「出ねぇから、助け求めてんだろ」
「あ、そっか」
今頃理解なさったのですかぁぁぁぁぁぁぁ!?引っ張って出るくらいなら、もうとっくに助かってんだよ!お前なんかに助け求めねぇんだよ!!
「うんしょ、どっこいしょ」
「だだ!おまえ、ホント、わざとじゃねぇのか!?」
いないなぁ、セガワーズと迷い姫。なぁんか、目印的なもの残しといてくれりゃあいいのになぁ。
(ぼやいてないで、さっささと見つけてやれ)
てか、まだいたの!?
(いや、暇だからさ。暇つぶしに)
てかさ、お前いるんだったら、セガワーズ達見つけんの簡単だろ!?手伝えよ!!
(ヤダ)
何故に断る!そして、何故に即答!?
(ん?なんとなく、かな?)
薄情者、自由人、馬鹿、自己中。
(HAHAHA。なんとでも呼ぶがいい)
……悪魔。
(HAHAHA)
「これ、動かしたら出れそう?」
「なんとか……なりそうだな」
少し脚を動かせるようになったのはいいけど、痛い。マジで、痛い。ハンパなく、痛い。てか、単刀直入に、かなり痛い。
「これを、こうして……どっこいしょっと。うう、重。でも、ダーリンが待ってる……。よし!動かせたよ!で、出れそう?」
「……」
ちょいまちねぇ。……。いてて。何か、足に引っ掛かった。でも、いけそうだ。……でで!いっでぇ、いってぇけど、……。
「おし、出れた」
「ヤッタァー!」
ハンパない喜びだな、おい。それにしても……
「いってぇな。見てるだけでも」
埋まってなかった方の足は、かすり傷程度で済んでるけど、もうかたっぽは……、言うのはやめておこうかな。ちょっと、想像するだけでも、痛みが増す気がするし。
「血……出過ぎると、ヤバいかな?」
元々貧血持ちだからな……。数少ない、ヘモグロビン達がいなくなっちまう。止血しとかねぇとな。
「……これでよしっと」
「……ね、ダーリン」
「んだよ。ここは危険なんだから、さっさと外目指すぞ」
「……そう、だよね。外、出ないと、危ないよね」
「つってぇ……」
「手、貸そうか?」
「いや、大丈夫だ。壁伝いに行きゃあ、何とかなりそうだ」
痛いけどな。
「……そう」
「セガワーズゥ。迷い姫ぇ。どっこだぁぁ!?」
(そんな呼び方で返事すると思うのか、ヘタレ)
「へタレじゃねぇよ!どのへんがどうヘタレじゃ!」
(ま、どうでもいいんだけどね、小橋なんか)
「冷たくね?最近、冷たくね?」
(気のせいだと思いなさい。それが君の為だ。じゃ、そろそろ帰るわ。犬の散歩犬の散歩♪)
……まだ行ってなかったんだ、犬の散歩……。って、こんな事どうでもいいから!!俺は、セガワーズ達を探さなくては!!
「セガ……瀬川ぁ!森野ぉ!どこだよぅ!いたら返事、もしくはツッコミよろしくお願いしまぁす!!」
あ〜、だめかも。頭がぼうっとしてきて、ふらっふらするぅ。たとえるなら……酔っ払い?
「大丈夫、ダーリン?」
「……ダイジョブ」
「そう……」
なんか、アレから森野も暗いしぃ。どうしたんだろな、らしくない。
瀬川ぁ!かむ・ひあー!
……なんだ?あの変てこな呼び声は?まさか、もうお迎えが!?
「呼ばれてない?」
「呼ばれてる……みたいだな」
瀬川!俺はここにいる!!ここにいるぞぅ!!
俺って誰だよ。
洞窟の中心で、愛を叫ぶぞ!!
ネタ古いし。てか、勝手に愛でも何でも叫んでろよ。てか、誰の為に会い叫ぶんだよ。
助けてください!俺の愛しい瀬川を―――
「助けてください!」
「キモいんだよ、馬鹿」
とりあえず、頭をはたいとく。
「いたっ……って、あんまり痛くないかも」
「そりゃ、力入んねぇもん」
「どした?怪我してんじゃんか!?大丈夫か、貧血」
「こういう時だけ、優位に立ったような顔するな。てか、その謎のロープはなんだ」
「これ?これは、狩燐が発案したもんだ」
……て、ことは、外に続いてるって事か?これを引けば、もしくはたどれば外に出れるのか。
「どうした毒舌辛口天然系M娘?」
よくそういう長ったらしい渾名が浮かぶな。
「……」
「聞いてんの?」
「……」
「お〜い、俺の事は無視ですかぁ?」
「……」
「森野?」
「……え?あ、な、何、ダーリン」
「小橋が呼んでも全く反応しねぇから、俺が呼んでみた」
「そ、そうだったの」
「さ、この影薄使って、外に出るぞ」
「……うん」
……やっぱ、なんかくれぇな。てか、関係ない小橋まで暗くなってる!?
「俺なんて、俺なんて……ははは」
あまりにネガティブな笑い方だな……。周りが負のオーラで包まれてるぞ。
「ともかく、外に行くぞ、外に!」
「……お、おう!」
無理にテンションを上げた森野と、
「はは……この世界に、俺の居場所なんてないんだ……」
全然テンションの変わらない、影薄だった。
*
「遅いぞ、勇者コバッシー」
「あ、セガワーズと迷い姫、ちゃんと連れてきてんじゃん」
「フフ、セガワーズは無事ではないみたいね?」
……何、この変なあだ名達。いつの間に付けられた?てか、適当すぎて、笑えねぇ。
「そうしたの、美咲。暗い顔して」
「え?フツーだよ。テヘヘ」
「フフ、触ってほしくないものがあるって事ね」
「そ、そんなの、何もないよぉ」
「ホントに?でも、やっぱり暗いよ。何かあった?」
「ホント、ホントに、なんでもない……から」
「……フフ、私、おなかが空いたわ。早く戻って、夕食を頂きたいわ」
「さ、賛成!」
「ん〜、納得行かないけど、私も賛成!」
女子三人、月の光に照らされながら歩き去るけど、森野だけ、やっぱりいつもと違ってた。
「さ、俺らも行こうぜ?足は、医者呼ぶからさ、診てもらおう」
「おう、ヨロシク」
「……俺って、あんまり心配されてない?」
小橋の呟きは、夏の冷たい夜風に吹かれて消えた。
不穏な空気が流れておりますが、これは『ドSな俺と、ドMなアイツ』に間違いありませんからね。他の、シリアス系の物語じゃないですから!馬鹿で、無駄にハイテンションな物語ですから!(焦
次回、ちょっと心配な感じです……。