38、Sは子供に弱い!? 前編
五月蝿い奴が減った事で、今日は何とか無事に家にたどり着けそうな気がする。作者が馬鹿な事をしない限り……。
いつものように門を出て、いつものように角を曲がりに曲がって、公園で遊んでる子供がなんだかうらやましくなって、もう少しで家に到着。
おお!?珍しくほのぼのした雰囲気のままで、終われるのか!?
「……っと?」
背中に違和感を感じる。背中に痛いほど視線を感じる。背中に何かがくっついているような気がする……。
「……グスン」
な、泣いてる!?何が泣いてる!?
もし、くっついてるのが森野だとしたら、これだけじゃ済まされないから、論外。小橋とかその他もろもろのガラスハートでもない気がするから、論外。
……じゃ、誰??
「……ウウ、グスン」
信じてねぇけど、幽霊とか、そのあたりの人??……う〜ん、ありえなくもない気がする。
と、とりあえず、振り返れば、……分かるよな?
ゆぅっくり振り返って、それを見た。
うん、実に予想外です。
「……うう、グスン。うう……」
だって、こんなにちっこい子供だと思ってなかったもんな。推定、あの双子達と同い年。
「……」
「うう……」
「……」
「……グスッ」
「……」
「……ズッズッズズッ」
鼻、啜りすぎじゃね?
てか、この子どこの子!?……早口言葉みてぇだ。
「……」
「……グスン」
「……」
は、話しかけにくぅい!!何で泣いてんだよ!?何で俺にしがみついてんだよ!?何で俺の制服放してくれねぇんだよ!?
「な、なぁ、お前、どうしたんだ?」
お、お願いだ!!答えてくれよ!?嘘でもいいからさ、とりあえず答えろよ!?じゃないと気まずすぎて、俺の心臓は止まります!!
「……あのね、ボクね、おかあさんとね、はぐれちゃったの」
「そう……なんだ」
ベタだ!ベタだけど、ほっておけないよ!!
「じゃあ、迷子?」
「ううん。まいごじゃないよ。ボク、瀬野沙琉覇っていうの」
「サルハ……君?」
こっくりと頷く。
うん、自己紹介有難う。でも、迷子だよね、この子。迷子じゃないって言ったけど、迷子だよね?
「ボクね、おかあさんと一緒にね、おかいものにいってたの」
「そうなんだ」
お〜い。俺、一応知らない人だよね?見知らぬどこかの人だよね?通行人Aだよね??
「でもね、とちゅうでね、はぐれちゃったの」
「どうして?」
「お手手つないでたんだけど、はなしちゃったの。だからね、はぐれちゃったの」
どんだけの人込みを越えてきたの?てか、こんなデパートも商店街も遠いここに、よくたどり着けたな、少年。……じゃなくて、沙琉覇。
「お母さんの名前、なんていうの?」
俺のお節介!子供相手に弱すぎだ!!強くなれ、俺!!
「瀬野春乃」
春乃?春乃??……う〜ん……どこかで聞いた事があったような、なかったような。
「おかあさんの事、知ってるの、にぃちゃん」
知っているようで、知らないかもぉ。てか、にぃちゃんって呼ぶな。
「どうしたの?にぃちゃん??」
ああ、もう!その純粋すぎる瞳で、この穢れた俺を見るな!!
……うう。ったく、もう!!仕方ねぇな!!
「じゃあ、にぃちゃんが探してあげるからさ、どこのお店行ってたか、教えてくれる?」
「うん!えっとねぇ、確かあっちだよぉ!!」
引っ張るな、沙琉覇。ていうか、何気に手をつなぐな。
「こっち、こっちだよぉ」
純粋な目で見るなって言ってるだろぉがぁぁぁぁ!!
*
てな訳で、今は商店街にいます。しかも、制服で。しかも、子供を連れて……。
「確かねぇ、このお店だよ、にぃちゃん」
「……あ、この店、俺もよく来るな」
「にぃちゃんも、おかあさんと?」
「いや、頼まれるんだ、いろいろとな」
「そーなの?」
「そーなの」
あ〜あ、甘いなぁ、俺。甘すぎるなぁ、俺。あまりに甘すぎてとろけそうだよ、俺。
「で、お母さんて、どんな人?」
「優しくて、いつもニコニコ笑ってる人!」
そう、そりゃよかったな。
……って、ちがぁぁぁぁうっ!!
「そ、そうなんだ」
「うん!いつもね、とぉっても、優しいんだよ!!」
そりゃいい事だ。でもさ、俺が聞いてんの、そこじゃねぇんだわ。
「あの、……見た目は?」
「みため?」
「そう、見た目」
「みためって、なあに?」
「見た目って言うのは、……」
「なあに?」
あ、改めて聞かれると、どう答えていいか、迷うんですけど!?
「見た目ってのは、外見?」
「がいけんって、なあに?」
「……俺見て、どう思う?」
「優しいけど、弱そうな中学生!!」
……半分当たりにしてやるからさぁ、弱そうとか言うなや。結構傷つく……。
「そういう事を言うんだよ」
「外見?それとも、みため??」
「りょーほー」
「わかった!!」
はい、素敵な笑顔を有難う、少年。
「で、お母さんは、どんな見た目?」
「背が高くてぇ、細くてぇ、ながぁ〜い髪してるぅ!!」
「髪は、結わいてる?」
「湯、沸いてる?」
「いや、髪は、こう、束ねてる??」
うう……人前で前髪を上げるのは恥ずかしいぞ。
何故に実際にやってやってんだよ、俺!何とか説明すればよかったものを……!!
「うん!でも、にぃちゃんみたいにはしてなかったよ」
そりゃそうだな。こんな髪型してるの、ヤワ○ちゃんくらいだ。ちょっと古いけど……。
「うしろでそうやってね、高くしてるの!」
ポニーテールか。そ言えば、よく夏鈴にやってた気がするな。
「じゃ、探してみっか?」
「うん!」
いいよなぁ。ちっこい子供は純粋でぇ。
てな感じで、探してますが、全くいる気配ナッシング。ていうか、ポニーテールすらいない。
……てか、この店、今の時間帯にこれだけで、よく営業してられんな。もう、何十分もいるのに、5人くらいとしかすれ違ってねぇぞ?
「おかあさぁん!どこぉ……」
ああ、もう。またぐずり始めた。これだから嫌いだ、子供なんて。
あ、そういえば、ひらめいた。
「もしかしたら、家の道にいるかもな」
「どうして?」
「お前が、家に帰ってるかもしれないだろ?」
「でも、ボク、ここにいるよ?」
「お母さんはな、まず、家の帰途を辿るんだ。子供が一番通るからな」
「なんで?」
「お前だって、最初は思ってたんじゃねぇのか?家に帰ろうって。で、あの道に迷ってたんじゃねぇのか?」
「うん。でもね、道が分からなくなっちゃったの。そこでね、にぃちゃんを見つけたんだよ」
見つけてくれなくていいよ。
「じゃあ、もっかい、あそこに戻るか」
「ここからなら、お家の帰る道、分かるかも!」
「じゃあ、歩いてみな」
手を放そうとしたけど……。
「にぃちゃんが隣にいないと、ヤダ」
……森野並にわがままだな、この野郎。
で、仕方なく、手を繋いで帰る事になりました。
って、これまだ続くの!?……えぇっ!?マジで!?!?