31、学んだS!?
疲れた疲れた疲れた疲れた疲れた疲れた疲れたつかれあ、って、舌噛んだ。
……どうも、疲労困憊のそれでも中学一年、瀬川です。
あ゛〜、もう。どうしようもないほどに疲れました。ていうか、疲れさせられました。やれままごとだ、やれ電車ごっこだ、やれ絵本読んでだ……これだから、チビどもは嫌いなんだよ。あ〜あ、この世からウザいチビさんを消してくれないかなぁ。
「ダーーーリ゛ーーーーーーーーン゛」
前言撤回、この世から、ウザい人物全てを消してください、神様!!
「んだよ、へばりつくな、カスが!」
「ガスでも数でもスカでもいいから、このままでいさせてぇ」
「嫌です、離れなさい。ていうか、触れるな」
「やだぁぁぁ。ダーリンに触れてないと、私、生きていけません!」
「家に帰ったあとは、どうすんだよ、ボケ」
「……そ、それは……あ、あのですねぇ、……と、とうさ……」
「とうさ……まさか!お前、また俺を盗撮したのか!?」
「はい、ムービーで!」
ニッコリ笑顔で、嬉しそうによくもまぁ、そんな事がいえるな。
「てか、なんでムービー?どのタイミングで撮った??」
「……昨日、可愛いいとこさん達と遊んでいるところを、ちゃっかり」
「消せぇぇぇい!!いますぐ、それを消せぇぇぇい!!」
「嫌よ!これが私の生きる糧なんだから!!」
自慢気に取り出したテープを、モチ、叩き割る。
「ああ!なんて事するの!?私の宝を!!」
「誰の許可得てこんなの撮ってんだ?コラ。今度こういう事をやってみろ、地獄に送ってやるよ」
「今すぐやるんで、お願いします!」
「俺をなめてんのかぁぁぁぁ!!」
しつこいハエを、叩き潰す。って言っても、頬をつねるだけ。
……アレ?叩き潰してなくね??
「いふぁいてふ!いたいふぇふぅ!!」
「この口でそんな事を言うか!その口、二度と利けないようにしてやる!!」
「なんふぇ!?」
「ストーカーに、神の鉄槌を!!」
「やふぇふぇぇぇえl!!」
と、言いつつ、嬉しそうなのがウザい。まじめにウザい、心からウザい、心から消えて欲しい。てか、消えろ。
「いふぁひ!いふぁひてふ!!岐阜です!!」
「岐阜!?」
「あ、まひはへた。ギブでふ!!」
どこでどう間違った!?何故にギブが岐阜になる!?お前の脳を解剖しないと、解けない謎が多すぎるよ!!
「いったぁい。これが、ダーリンの愛のムチなのね♪」
「もっぺんやられたいか??」
「はい!!」
「……こいつに常識でモノを言うんじゃなかった」
「そうよ、私に常識なんてないの!!私の常識は、ダーリンが―――」
「それ以上!言ったら何が起きるか分かるかなぁ、森野君」
「……はい、先生。もう(多分)言いません」
「ちっさい声で多分って言ってるの、聞えてるからぁぁ!!」
「すみません!すみません!!もう、一回だけ言って終わりにします!!」
「いっぺん死んで見るか?もしかしたら、俺が振り向くような女になれるかもよ?」
「ホント!?……って、いや、嘘です!!死にたくありません!!私は死にません!!」
道路に突き出そうとする俺に対して、へばりついてくる馬鹿。……ちっ、しくじったか。
「……ねぇ、今、心の中でしくじったって」
「……」
「しくじったって、言ったよね?今、言ったよね??」
「……」
「無視しないでよ、愛しのダーリン」
「……」
「もう、分かってるんだゾ。三回『……』が続いたら、話してくれるって」
「……」
「……あの、記録の更新とか、そういうのしなくていいのよ?ダーリン」
「……」
「愛してるわ、ダーリン。だから、あの、ちょっとでいいんです、はい。言葉を発してくれませんか?」
「あ」
「……へ?」
「……」
「た、確かに『あ』も言葉だけど、あの、私一人でしゃべってると悲しいんですけど。ものすっごく、恥ずかしい気がしてきたんですけど」
「……」
「そろそろぉ、お話再開しましょっか、ね??」
「……」
「再開しまショッカー……なんちゃって」
「……」
「あ、あはは!お、面白いなぁ!私って、本当に天才かも!!アインシュタインの孫かも!!」
「……」
「嘘です!ごめんなさい!!くだらない、親父的な発言しちゃって、なんか、あの、なんていうか、えっと、その……すみませんでしたぁ!!」
道路に土下座する馬鹿。それを左へ受け流すぅ♪俺。
「あの、ムディーさんやらなくていいんで、私と話してくれません?」
「……」
「ねぇ、ダリーンのツッコミがないと、この話は成立しないのよ!」
「……」
「ねぇねぇ、ダーリン」
「……はぁ……」
「はぁ、……のあと!そのあとが欲しいの!!ねぇ、言葉を、我に言葉をお与えください!!」
「……」
「あの、雲とか見なくていいんで。今日、快晴なんで、雲ないし」
「……」
「いや、雨も降らないって、ダーリン。そんな仕草しても、降らないものは降らないのよ、ダーリン」
「……」
「……」
「……」
「……」
「……」
「……あ゛〜もう無理!もう、この放置プレイにはたえられません!!」
「……」
「お願いです、瀬川様!いや、瀬川帝王様!!その清々しいお声を、どうかお聞かせください!!」
「……」
「瀬川様ぁ!!もう、盗撮も何もいたしません!引っ付いたりするのも、我慢します!!ですから、どうか、どうかこの森野めを許してくださいましぃ!!!」
ヒステリックな森野を一人捨て置き、俺はスタスタとその場を去った。
こうして俺は学んだ。馬鹿は放っておけば、自滅すると。
……今度から、あんまりしゃべらないようにしぃよおっと!ハハハ!!(黒笑