15、S vs ○○○○!? 後編
「さあ、ゴキちゃんとどう戦う」
再び(かなりの勇気を絞って)家の中に入って、ゴキちゃんの動きを見ながら俺は言った。てか、つぶやきし○うみたいな言い方で言った。だって、大きな声出して、ゴキちゃんが暴れだしたら大変だろ?
「……あ゛〜もうっ!何で今日に限ってゴキちゃんなんだ!?」
頭をくしゃくしゃにかきむっしても、むしゃくしゃが収まらない。てかさぁ、何で二話連続でゴキちゃんを書くんだよ。おかしいだろ、イカれてんだろ、ボケてんだろぉーーー!!
「こんっの、ボケ作者がぁーーーーー!!」
思わず叫んでしまった瞬間!!作者の怒りと共に、ゴキちゃんに動きがあった。
また羽を広げ、飛ぶ体勢に入ったのだ!!やめろっ!!それだけは、やめるんだぁー!!
「くるなーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」
ほんっとゴメンなさい。作者様、いや、神様。ホントすみません。心から謝るんで、ゴキちゃんをどうにかしてくださいっ!
いやですっ!!生みの親に向かって、失礼なやつめ。神の裁きを受けなさい!
神様仏様作者様〜!!どうか哀れな俺を、どうか助けておくんなましぃ〜!!
とりあえず、再び外へ避難する。ゴキちゃんが、扉に体当たりした音が聞こえる。……ヤベェ、ヤベェよ。怖くて扉が開けられねぇ……。
どうしよう、ってか、俺どうなるの?このまま家に入れない系ですか?それともゴキちゃんと戦わせる気ですか?それとも、てか、逃げていいですか?ゴキちゃんのいない所まで、逃げさせてもらってもいいですか?というか、逃げさせてください。
静かになった扉の向こうに潜むゴキちゃんの様子を見るために、すこぉしだけ、扉を開く。
「……アレ?」
いないぞ、ゴキちゃん。扉にもいないし、靴箱の上にもいないし、靴の中にもいない。花瓶の中でもないし、招き猫の上でもないし、階段でもない。本格的に、いない気がする。……この本格的の使い方、間違ってね?
「……あ、もしかして―――!」
心配は的中したようで、ゴキちゃんはリビングにいた。そしてそいつは、ミッチェルさんの手製の、地獄のドーナツを食おうとしていた。……グッバイ、ゴキちゃん。それを食べたら、きっと君はこの世を去る事になるだろう。……お疲れ様でした。
「……さよなら、ゴキちゃん」
ドーナツにかぶりついたと思われるゴキちゃんは、動きを止めた。きっと死んでしまったのだろう。ああ、哀れなり、ゴキちゃんよ。
「……え?……嘘?」
ゴキちゃんは死んでいなかった!動いたんですよっ!!かすかにっ!!ピクピクッと、動いたんです!!
そして、変化は起こりました。異様に輝く赤い目。大きくなる、黒いボディー。逞しくなった六本の足。……ミッチェルさん、あんたは魔物を作る腕があるようです……。
出来上がったのは、巨大なゴキちゃん。キモさも倍増、大きさも倍増、怖さも倍増!この世の終わりです!!破滅です!!
もう殺せないじゃん!あんなの潰したら、真面目にホラーになるよっ!!
「……フフフ、瀬川慎吾君、君に復讐の時が来たようだ」
しゃ、しゃべったぁーーーー!!しかも標準語で!!しかも、なんか分かんないけど、俺を根に持ってるみたいだし!
「忘れたとは言わせないぞ!作者様をボケ呼ばわりして、ただで済むと思っているのか!!」
「も、もしや、貴方は……」
「そのもしやのもしや。下弦鴉様だぁ!」
「……鴉なのに、ゴキブリって。それでいいのかよ」
「ブツブツ言ってないで、そこに直りなさい!!今すぐそうしないと、近づいてやるっ!」
「え゛ぇ〜!!それはないですよ!!」
「さあ、早くすわれっ!私が根性ってもんを叩き直してやるよ」
「……子供っぽい事で怒る人に?」
「はぁいそこっっ!!何か言ったか?」
「いいえ、別に!」
「では、そこに座れ。私が、……何教えるんだっけ?」
「……根性じゃ、なかった?」
「敬語はどうしたこのヤロウ!!馬鹿だからってナメてると、痛い目見るぞ!!」
「……自分で馬鹿って言っちゃったよ」
「うっるさい!!お黙りなさい!!」
「ひぃやぁぁぁぁぁぁぁああああぁぁぁぁ!!ちっ、近づくなぁ」
のっそのっそと歩くのはゴ……じゃなくて、下弦鴉。そう思っても、見た目はゴキブリだ。気持ち悪い。大嫌い。近付くなバカヤロォ!!
「……よし、やっと座ったな。偉い偉い」
近いよ、めっさ近い。もうちょぉっと離れてほしい……。
「で、ええっと。何の話をしてたんだっけ?」
「根性を叩き直すそうですよ」
「そうそう、それそれ。最近物忘れが激しくって、親にも馬鹿にされ始めてるんだよねぇ。悲しいよねぇ」
「……はぁ」
「別にさぁ、覚えてなくてもいいじゃんか。なのにさ、うちのオバンときたらうるさいったらありゃしない。小言をブツブツ、ブツブツ。姑かっての」
「……あのぉ」
「やれ勉強しろ、やれゴミを捨てろ、やれ部屋を片付けろ。もう、○校生何だから、黙ってロッテの!!」
「……ロッテ?それって、♪ロッテコアラの―――」
「そのせいで、いまだに反抗期が終わらないんだよねぇ。それにさぁ、聞いてよ!私の友達、産まれた頃から反抗期なんだってぇ。ある意味すげくね?」
「……どーでもよくね?」
「あ、話がそれたね。何だっけ?親の事だっけ?ホントしつこいよねぇ」
「……話違うしっ!」
「そろそろ一人暮らしとかしたいじゃん?どこがいいかな?やっぱ、レオ○レス?それとも、……って、そんな事する金がねぇや」
「……すみません、キャラ、変わってません?」
「やっぱ住むんなら都会だよなぁ。俺が住んでる所、ド田舎なんだよ。一応言っとくけど、一番大きい店が、ア○タです。知ってる人は、知ってるよねぇ」
「……」
「でもさぁ、ウチから遠いんだよね。もっと近くにねぇのかよっ!みたいな?寒い時に自転車こいでると、そう思って寂しくなるんだよねぇ」
「……」
「アレ?また話がずれた気がするんだけど、何の話してた?」
「テメェはずっと田舎で、畑でも耕してろっ!!」
ゴキブリ、もとい、下弦を殴る。思いっきりグーパンチで。
……あ、ゴキブリ触っちまったよ。まあいっか。後でちゃんと、手、洗えば。
「おまえさぁ、人に根性叩き直してやるって言っといて、それはねぇんじゃねぇの!?お前の根性を叩きなおしてぇよ!!ふざけんじゃねぇぞ!!貴重な行を無駄に使いまくって、それでもお前は作者かっ!!」
「そうだよ、作者だよ。悪いかよ?俺だってなぁ、好きでこんな事やってんじゃねぇよ!!(小説書く事は好きです)ゴキブリにだってなりたかなかったよ!!」
「そーゆう問題じゃねぇから!!」
「いいから、聞けよ!これ聞いてくれたら、絶対帰るし、ゴキブリもいなかった事にするから!!!」
「絶対だな?」
「ああ、絶対だよ」
「……よし、しゃべっていいぞ」
「最近学校にゴキちゃんが異常に現れるようになったから、『あ、これ、話のネタにしちゃえばよくね?』って思ったんだよ!!それだけだよっ!!じゃあな、クソがきっ!!」
嵐のように現れた作者は、また、嵐のように去って行った。そして約束どおり、ゴキちゃんもいなくなっていた。よかったよかった。
……それにしても、学校にゴキちゃんが出るって、ある意味悲劇だな。大変なんだな、作者も。
「あ、塾」
……もう、いっか。いかなくて。今日は、そんな気がしました。疲れたというより、面倒臭い。そんな感じですね……。