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第八話 ご近所付き合いをしましょう(前編)

「……あなた、何とは言わないけどすごいもの持っているのね。それ、普通にモデルとしてやっていけるボリュームよ?」

「モデルとは何だ? 言葉の雰囲気だけで下卑た香りがするのだが」


 間違ってはいないが正しいともいえない。そんなメイル――異世界の魔王の発言を軽くスルーして、私はブラジャーだけを戻した。

 メイルはそれに気付き、


「ん、どうしたのだ? お前、服を着ろと言っておいて私から服を取り上げるとは、何とも理解しがたいぞ」

「……ちょっとサイズを間違えちゃっただけの話よ。だって、サイズが間違っていたら着ることも出来ないでしょう? だから、これは無し。だけれど、これの上位互換は残念ながら持っていないから、今度買いに言っておかないとね……」

「ああ、そうか。なら問題ない。今度買いに行こう。そのバンドを」


 ひとまずメイルからブラジャーを奪うことに成功した私は、それ以外を着てもらうことにした。

 メイルが服を着たのを確認して、私は胸のあたりを見て溜息を吐く。

 別に問題はないが、私のとはサイズが違い過ぎて自動的にへそ出しルックになってしまう。彼女は別に問題ない風かもしれないけれど、今度服を買わないといけないだろう。たぶん。


「よし、それじゃ向かうよ。お隣さんに」

「そういえばさっきから気になっていたが……お隣さんに何をするんだ? どんな用事が?」

「これよ」


 私は台所に置いてある鍋をメイルに見せつけるように言った。


「鍋?」

「お隣さんは料理が上手でね。私とお隣さんで交互に料理を作るのだよ。こういう付き合いは大事にしないとね。それで今週はお隣さんの番」

「……そのお隣さんとやらは女性なのか?」

「いや、男だよ。年齢は私と同じくらいかな。だけれどいろいろと料理をするんだよねえ。いや、ほんと。真似をしたいくらいだよ。チョイスがうまいんだよ。ほんとうに、一人暮らしとは思えない。どうして同居人が居ないのかね、と思うくらいだよ」

「ふうん、私の世界では男が台所に立つことは珍しいことだがね」

「この国でも少し前まではそうだったよ。けれど、最近は珍しい話じゃないかな。一つの大きい戦争が終わってから、それが加速していったと思う」

「ふうん……。なかなか面白い国だね。帰ったら私の国にも導入してみたいものだ」


 うんうんと頷きながらメイルは言った。


「そろそろ行こうか。とにかく、あなたもついていくのよ。……とりあえずあなたは私の友人ということで、一緒に暮らすことにしたということにするから。それでいいわね?」

「そういう風に騙るわけだな。了解した」


 だって仕方ないじゃん。実際、魔王が世界を征服するために同居したのでよろしく、なんて言って信じる人間がどこにいるわけよ。最悪精神病院送りも考えられる。はっきり言ってそんなことは嫌だ。だからそういう風にうまい具合にごまかしていくしかない。生憎、肌の色は白人と同じくらいだし最悪うまく外国人でインターネットを経由して出会ったとでもいえばいい。最近はネットワーク経由の友人も多いし。


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