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第七話 お着替えをしましょう

 私の指摘にメイルは首を傾げ、


「あれ? 言っていなかったか。私は女性だよ。だが、この姿のままでいるとあまり権威が無いように見えると言われてな……。実際そうだろうよ、魔族を統べる魔王が、人間の女性の姿なんぞ滑稽だ。まあ、だからこそこのような鎧をしているのだが」

「でも、可愛いじゃない」


 ぼっ!! とオノマトペが聞こえるような勢いでメイルの顔が真っ赤になった。


「か、可愛い……だと? この私が……か?」


 メイルは頬に手を当ててきょろきょろとしている。恥ずかしいのだろう。もうそのしぐさがはっきり言って男を殺しかねない。ああ、あくまでも精神的に。

 私は溜息を吐いて、話を続ける。


「話を戻しましょう。これ以上あなたの話に付き合っている場合じゃないの。……とにかく、私の服を貸してあげるから、どうにかこうにかいろいろと日本の生活に慣れてもらわないと。まずはそこからよ」

「生活に慣れるということか! それは何ら問題ないだろう。だって私は魔王だぞ」

「その驕った態度から改めましょうか。少なくとも、そんな態度ではこの世界で生きていけないわよ」


 なん……だと? とメイルは私の顔を見て目を丸くした。そんなことを言っても何も変わらないぞ。


「詳しくはあとで話すから……取り敢えず服を探しましょうか」


 立ち上がり、クローゼットから適当に服を見繕ってメイルに差し出す。


「これが……服か? 防御力がとても低いように見えるが」

「戦闘なんてあまりないから安心しなさい。とにかく、それを……。ああ、そういえば下着が無いんだっけ。取り敢えずこれを使って」


 そう言って私は服の上にブラジャーとパンツを投げた。私のお気に入りの黒いレース入り肌着セット。取り敢えずこれで問題はないかしら。


「これを着ければいいのだな? 胸に……か?」

「そうなるわね。一応言っておくけれど、パンツを履く文化だったかしら?」

「馬鹿にするなよ。さすがにパンツは履いている。しかしこのような胸を抑えるものは見たことが無いがな」

「この世界ではそれを着けていないと逆におかしい人と思われるのよ」


 私はそう言い放って、メイルにブラジャーを差し出した。


「さ、とにかく鎧を全部脱いでこれに着替えて。話はそれからよ。私はお隣さんに用事があるのだから」

「……オトナリサン?」

「隣に住んでいる人のことよ。ここは集合住宅だからね。さすがにあなたの世界にも集合住宅はあったわよね?」

「ああ、あったぞ。魔族が良く住んでいるからな。恥ずかしいことかもしれないが、魔界は土地が少ない。だからおのずと集合住宅が多いのだよ」

「なにそれ、この国と同じ問題じゃない。……なんか、異世界ってもっと幻想的な感じをイメージしていたけれど、幻滅したわね……」

「異世界だか何だか知らないが、そう簡単に幻想的なものをイメージしてもらっては困る。君たちの世界と何ら変わりない世界だぞ。まあ、若干常識が違うかもしれないが。……さて、これを着ればいいのだな? 待っていろ、今から着るぞ」


 そう言ってメイルは鎧を外し、そのまま着ていたシャツのようなものを脱いだ。

 と、同時に鎧とシャツに抑えられていた彼女の胸がぶるん! とはじけた。

 ……こいつは予想外だった。

 メイルは、女性である私が羨むほど、大きいものを持っていた。一応言っておくが、何とは言わない。


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