第四話 服装を整えましょう
「とにかく」
ルイスは立ち上がり、俺に語り掛けた。
「問題はここからよ、エイジ。リアライズマスターを探さないといけないし、魔王を探さないといけない。でも魔王を探すだけじゃダメ。仲間を探す必要だってある。そのためにも先ずは探索することが大事だと思うのよ」
「……お前が、か?」
「ダメかしら?」
いやいや、とエイジは首を横に振った。
「普通に考えてみろよ。浅黒い肌、尖った耳……普通に考えればこの世界に居る人間じゃないぞ。いや、正確に言えば肌の問題は何とかなる。問題は尖った耳だよ。普通の耳と比べれば一目瞭然、というレベルの尖鋭度だぞ」
「そうか……。そういわれるとそいつは不味い話だな。はて、どうすればいいかな?」
ルイスは再び安坐になった。
「……まあ、どうすればいいかって……。帽子で隠すしかないかなあ。あとはお前は俺の遠い親戚って嘘を吐くしかないだろ。そうすればあとはうまくいく。親が来るってことが無い限りはな……」
「まあそんなことがあったら恋人とでも言っておけばいい。案外、それで隠し通せるかもしれないからな」
「……お前、プライドって無いの?」
「無いわけではない。だが、時には捨てる必要もある」
まあ、堅実な判断なのかもしれないが……。
さて、とりあえずどうするべきかな……。
「問題は、服だよな……。俺の服でいいか? たぶん背格好も変わらないから入ると思うし」
「胸の問題は考えなくていいのか?」
「それについては考えなくていいよ。最悪、何かのファッションっぽくなるし」
「……そういうものなのかしら?」
ルイスは首を傾げるが、そんなことはどうだっていい。とりあえず目の前にある問題――ルイスの服装についてどうにかしないといけない。肌着とか下着が一番の問題かな……。あれはどうにもならないし、まあ、とりあえず服さえ着させてしまえばルイスの付き添いでランジェリーショップには入れるだろうし。
そう思って俺は立ち上がり、クローゼットへと向かった。
◇◇◇
「なんだか隣が騒がしいわね……」
確か隣は一人暮らしの男性だったと思ったけれど、どうしてここまで騒がしいのかしら? まあ、別に私は音について気にする立場ではないから別にいいのだけれど。
「で。これからどうするつもり?」
私は目の前の――ちゃぶ台の向こう側に腰掛けてお茶を啜っている相手に話しかけた。
鎧、兜、剣すべてが黒い。黒いオーラすら感じられるその相手は人間かどうかすら危うい。出来ることならあまり触れたくないところだけれど、それが私の部屋に勝手にやってきてしまったのだから、まあ、仕方がない。さすがにそこで投げるわけにはいかないし。
湯呑を置いて、その鎧は言った。
「……先ずは戦力を集めるところから始めねばならない。リアライズマスターの居る場所に移動することが出来たのは、まったく好機だと言えるだろう。これから私の戦いが始まる。だが、一人ではどれもやっていけるわけではない。それは解るだろう?」