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第三十八話 どどんと一発撃ちましょう(前編)

 日付も変わり、深夜一時。

 東京のど真ん中にある高層ビル、その屋上に俺たちは居た。

 マリア、ルイス、メイル、レティーナ。

 リアライズ世界の四人が、扉を見つめていた。

 扉は確かにぼんやりと浮かんでいた。その姿は透明で、おぼろげだった。その形を保つことが難しくなっているのでは、と考えられるほど。


「この扉を開ければ、自動的に私たちは元の世界に戻ることが出来るでしょう。それに、私たち以外にリアライズ世界にやってきた人たちも、です」


 マリアの言葉にレティーナは頷く。


「ええ、その通りです。マリア。あなたの考え通りであれば……、今から我々の最大出力で技を打ち込めば、扉が具現化し、そのまま扉が開かれるはずです」


 すう、と深呼吸するルイス。

 剣を構え、扉を見つめていた。


「短い間だったが、良い世界だったよ。この世界は」


 ルイスの言葉に、俺は頷く。


「お前にとっては安息の地だったかもしれないが、俺はずっと安息出来なかったぞ」

「……それについては済まなかったと思っているよ。ただ、あの世界は……、リアライズの世界では、戦うことばかりだったんだよ。それが宿命のようになっていた、とでもいえばいいかな」


 たぶんそれは、ゲームでいうところのプログラムされた部分なのだろう。

 ルイスの言葉は続く。


「でも、この世界にやってきて色々と楽しいことを知ったよ。炬燵でミカンを食べることの楽しさ、テレビ……だったか。箱に映る色々な人を見ることができた。とても楽しかったよ。それに、お前の食事もなかなかだったぞ」


 ルイスは剣を戻すと、俺に近付く。

 そして、ルイスは恥ずかしそうに、呟いた。


「……目を瞑って、くれないか。エイジ」


 その言葉を聞いて、俺はゆっくりと目を瞑った。

 直後に、唇に何かが触れたような感触があった。

 その感触は僅かしか感じることは出来なかったが、それがどういうものであるかは俺にも理解出来た。

 目を開けると、ルイスが少し顔を赤らめていた。


「……ありがとな、エイジ」


 そうしてルイスは再び剣を構えると、踵を返し、また扉のほうを向いた。


「やることは済みましたか、ルイス」


 マリアの言葉に頷くルイス。


「ええ。そんなことより、あなたはもう大丈夫なのかしら。マリア。あなただってあの子と一緒に過ごしたのでしょう?」

「そうですが、別れはやはり悲しいものですね。あまり長い時間過ごした覚えはありませんが……、いろいろと迷惑をかけました。それについては精一杯謝罪いたしましたよ」

「でも、楽しかった思い出もあったのではなくて?」

 ルイスはマリアに微笑む。


 マリアはそれを聞いて、口元が緩む。


「……ええ。そうね。確かに、いいこともたくさんあったわ。でも、私たちは戻らないといけない。元の世界に。私たちはリアライズ世界、『ファンタジア』に待たせている人がたくさんいる。それに、私たちはもともとあの世界の住民だからね。だからいつかは帰らないといけない。それはあなただって、理解しているでしょう? ルイス」


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