召喚に次ぐ集結、そして集合②
どうして誠志郎と雅臣さんが居るのかという疑問は考えるだけ無駄と、訊ねることすらせずに意気込みます。
「どこへお参りに行くんですか?」
本日の主役に聞いたところ、掛橋大社になったとのこと。
ちょっと遠いですが雅臣さんが足になってくれるとかで、そこに決まったようです。
掛橋大社といえば毎年参拝客が大挙する、近隣で一番人気の初詣スポットですね。大神に縁の深い神社ですから、願い事を着実に受け付けてくれることでしょう。
校門脇に停めてあったのは青いハイブリットなステーションワゴンで、「なにがし+α」だかなんだか。
雅臣さんのイメージ的にイタリア車と思っていたのは置いといて、社会人一年目の独身男性には大きすぎやしませんかね。
胡乱な眼で見上げると、含みの無さそうな笑顔で返されました。
「父が就職祝いにって、家族が増えても困らないよう大き目のを、ね」
小首を傾げてウインクしても、可愛くは無いですから!いっそネオンが似合います!!
ド ン ペ リ 入 り ま ー す ♪
自分の想像に自爆したせいか、嫌みめいたことが口を衝いてしまいました。
「パパが甘いから雅臣さんの身なりが良くなって、玉の輿狙いが群がるんじゃないですか?」
失言か?!と思った時にはもう遅く、口角をさらにクッと引き上げた雅臣さんが、横の洸を器用に押しやって僕に身を寄せてきていました。
「キリィが望むなら、玉の輿にでもなんにでも乗せてあげるよ」
気色ばむ誠志郎と眼光鋭く睨みつけてくる先輩を、眼差しだけで牽制しつつ続けます。
「参考までに、キリィはこの車を見て何を思う?」
その表情は、まさに夜の蝶!とばかりに蕩けるような微笑みでした。
昼間っからの濃ゆい色気に胸やけしそうです。どうしてでしょうね。甘い言葉も声も笑顔も、テレビ越しなら悶えられそうなのに、直にされると嘘臭い事この上ありません。
「このタイプの車の燃費ですかね。実走だとリッター何キロ走るんですか?」
正直な感想を述べると、ますます嬉しそうに笑みを深めて、睦言のように囁いてきました。
「街中だと14~20キロかな。遠乗りすると25キロ近くなるよ」
「あー、やはりカタログ通りにはいきませんか」
近づき過ぎた顔を押し退けてやります。からかいも度が過ぎるとムカつくんですよっ。
僕が嫌がっているのを見て取ったのか洸が僕の手を引き、先輩が雅臣さんの腕を僕から引き剥がし、誠志郎が間に入ってくれました。
「時間を無駄するな。さっさと車を出せ」
年上にその口のきき方はどうかと思うのですが……おっしゃる通りなので、黙っていましょう。
雅臣さんも気にしていないようで、やんわりと先輩から腕を取り返して涼しい顔です。
「では、キリィは助手席へ」
「その場合、赤原を中央に据えるぞ」
誠志郎の脅しに、その顔が珍しくしかめられました。
「それは、ひどい嫌がらせだね……仕方ない。赤原くんが助手席へ」
後ろの席順は「男の隣は嫌」という二人に負けて、僕が真ん中に座ります。
疲労感満載のスタートで萎えかけた意気込みを車中で再燃させましたが、徒労に終わりました。
と言うのも、少し離れた駐車場に車を止め歩き始めた時から多少の違和感はあったのですが、通りに人が増えていくに連れ視線が、視線が、視線がぁあああ!
救いは、四方に注目を集める人を配しているので、僕にはほとんど目を向けられないことでしょうか。それとも、見ようによっては逆ハーレムなこの状況に違和感なく存在できる僕の見た目、でしょうか……自分で言ってて凹みました。
もっとも、なにくれとなく個性豊かに心を配ってくれる四人の気持ちが嬉しくて、凹んだ部分などすぐに無かったことになりましたけれど。カーコン倶楽部もびっくりです。
例えば先輩は、歩きやすいように先導してくれるだけでなく、僕が興味を持ちそうな出店の前を通過してくれます。
洸は後ろ向きになりそうな僕の気持ちを、可愛いかったり綺麗なものに意識を持って行って、明るくしてくれます。
誠志郎は、とにかく食べ物を買い与えようとしてくれます。
雅臣さんは皆のバランスを取って、僕への負担を減らしてくれます。
お陰様で、流されるままに歩いて賽銭箱の前に着く頃には、すっかりこの状況を楽しんでいました。
皆、順調に良い男に成長しているようですね。感心、感心。
メインの参拝を済ませた帰り道は誠志郎が先頭で、僕の両脇に先輩と雅臣さん、後ろから洸が付いてきます。
これはこれで、約一名の影響でホストクラブの店外デートみたいになりましたけれど、楽しめました。
ピ ン ド ン タ ワ ー い っ ち ゃ っ て 下 さ い !!
正月からハイテンションになってしまいましたが、先輩は受験頑張って下さいね。
あっという間に冬休みは終わり、明けて新学期。
入試を終えたはずの先輩が、合同勉強会に顔を出したのには少し驚きました。よっぽど図書館が好きなのでしょうか。本、貸しますよ?
学年末試験はなかなかで、自己記録を更新できました。このまま順調にいけば来年の入試は心配ないと、先生に太鼓判まで頂いてほくほくしていたら、暗い顔の菜穂ちゃんがポツリ。
「お願い。助けて」
僕に否やは無く、これからは菜穂ちゃんと一緒に勉強していくことにしましょう。




