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生まれつき女ですが、なにか?  作者: 周
中学校 編
30/43

いい日、独り立ち②

「あ、金魚の」


僕たちを見ての一言に、洸の片眉がピクリと吊り上がりましたが、それ以上には発展しませんでした。

先日めでたく百九十センチに到達した先輩は、最近ようやく手足が大きくなり始めた洸にとっては大き過ぎる相手、貫録も迫力も人望すら敵いません。


そう、人望。


先輩は強面なのに面倒見がよく、無口な割に的確なアドバイスをしてくれるとかで、女子からはギャップ萌えな男として、男子からは頼れる兄貴分として、校内で絶大な人気を集めているのです。

ちなみに洸は美少女とも見まごう美貌と、可愛らしい口調で尖った発言をするので、先輩とは別な意味で絶大な支持を得ています。さすがうちの子(ry


「お待たせしました。案内先は、僕たちが良く行くスーパーで良いですよね?」

「頼む」


飛び抜けて高い先輩と、女子にしては高い僕と、これから伸びる予定の洸、奇しくも背の順で三人横並びになり移動します。図書館のみならず、外でもこれですか……昔はこの状態を「ドリカム」って言っていた気がしますが、今の子は何て言うんでしょうね。

顔を見ながら歩くと首が痛くなるので正面を向いたまま、リサーチを開始します。


「冷蔵庫には、なにが残ってるんですか?」

「食べ物は皆無」

「あー、調味料とかは」

「一通りある、と思う」

「あとで見させて下さい」

「ああ」


頷きながら、何故か僕の頭を撫でてきました。

首を傾げて見上げたら、また頷かれます。

反対側から不機嫌な空気が漂ってきますが、手を繋いできただけでした。相手が誠志郎なら、とっくに噛みついていることでしょう。

異様な雰囲気を醸している三人組でしたが、閑静な住宅街なので誰に迷惑をかけるでもなくスーパーに着きました。

食材は無いとのことなので、好き嫌いやアレルギーを聞きながら一週間ちょい分を買っていきます。


「キィちゃん、その量じゃ足りないよ?」

「そっちより、こっちの方が腹持ちも良いから、断然こっち!」


主婦が板に付いてきた洸も、食べ盛りの同性として的確なアドバイスをくれました。マジ、うちの(ry


買い物袋に計三つ分買い込んで、先輩のお宅へ向います。

二つを先輩が、一つを洸が持ってくれたので、僕は手ぶらでした。片手は塞がってましたが。

僕の頭越しに繋がれた手に視線を向ける先輩が、自分の荷物と何回か見比べていましたけど、何をしたかったのでしょうね?謎です。

お邪魔したマンションは、一月ひとつき近く一人暮らしな割に小奇麗でした。

食器や保存容器が洗いかごに伏せられているなど、使った形跡のある台所も清潔に保たれています。


「片付けに、どなたか来てるんですか?」

「来ない」


ダイニングテーブルに食材を並べながら聞くと、意外な答えが返ってきました。


「え?じゃあ、先輩が掃除と片付けを?」

「もともと、オレの役目」

「あー、共働きですもんね。立派にきちんと一人暮らししてるなんて、すごいです」


失礼とは思いますが、時間が惜しいので話しながら作業を進めます。

そのまま冷凍するものはどんどん詰めて、洸が小分けに袋詰めした肉類も冷凍庫へ。

次に野菜類は、ゆでたりチンしたりの下ごしらえをして、これも小分けして冷凍庫へ。

もともと小母さんも休日にそうされていたようで、冷凍室が大きい冷蔵庫だったので、どんどん入ります。

僕と洸の連係プレーを眺めながら、先輩がぽつり。


「立派?」


手を止めずに答えます。


「そうですよー。料理はどうとでもなりますけど、整理整頓はなかなか追いつかない人、多いですから」

「掃除が苦手って、キィちゃんのことでしょ」

「洸だって好きではないでしょ?」


ブロッコリーを小房に分けながら洸が混ぜっ返してきたので、負けじと返してやりました。

そんな軽口には気にも留めず、思案顔の先輩が訊いてきます。


「料理は、どうとでも……?」

「今は色々と便利になりましたから。今日行ったスーパーにも、ありましたよね?弁当、惣菜、レトルト、一人分の加熱するだけの調味済みカット食材、一人分の食材セット、混ぜるだけの合わせ調味料。それらを上手に取り入れ、外食を挟んだりしてメリハリつければ、一人でも食事には困りませんよ」


一人暮らしに優しい世の中になりましたよねー。

頭をもたげかけた苦い思い出を元の場所に押し込めて、意識をに戻します。


今回は、ふた世帯に別れた先輩のご家庭の事情に配慮して、食費を抑えるためにファミリーサイズを買い込みました。だからこその下処理と小分けです。前世の経験が活きてます。


「キィちゃんは、いっつも一から作るよね?」

「作れるものを作っているだけだよ。しかも、なんちゃって料理だったりするし」

「美味しければ、なんちゃってでもいいじゃん」

「確かに、弁当は美味かった。あれを毎食?」


誇らしげな洸の言葉に、過去に沈みかけた気持ちを引き上げられ照れていると、先輩が別方向へ誤解したようです。

ここは訂正と、そろそろ作業が終わるので総括に入りましょうかね。


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