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生まれつき女ですが、なにか?  作者: 周
中学校 編
26/43

第一回・合同勉強会②

※二話、同時掲載です。

※しおり機能をお使いの方は、作者都合で二話(『参照:煙が目に沁みる』と『いい日、独り立ち』)削除していますので、前話からお読み下さい。

「待たせた。あと、大声出すな、バカ」


開口一番に小声で叱りつけるとしょんもりしましたが、悪いのは場をわきまえない方なので放置します。


「荷物、多いな」


カバンに本をしまって立ち上がった誠志郎は、僕のトートに目を止めました。


「ああ。お弁当、持ってきたから」


パンッと叩いて示すと、グッと眉を寄せ拗ねた声を出します。


「……おごるって言っただろ?」


言いながら肩に掛け直したトートに手を伸ばしてきたので、軽く手で制して断りました。


「中学生が生意気言うな。手弁当で十分」

「俺の分も?」

「当たり前だろ。自分だけ食べるとか、どんだけ嫌な奴だよ」

「もしかして、キリコの手作り?」

「なにか問題でも?」

「ちっとも!むしろ望むところだ!!」

「声がでかい、馬鹿者っ。ただのおにぎりと簡単なおかずだよ。そんな期待すんな」

「……すまん……でも本当に嬉しいんだ。お昼が、すごく楽しみだ」

「それより勉強だろ?ほら、開いた。移動しよう」

「ああ」


こんなやり取りをしながら入った自習室でも、もう一悶着。

向かい合って座ろうという僕に、隣の方がいいと主張する誠志郎。

結局、小声で質問しやすいという誠志郎の意見が通りました。

誠志郎の声は張りがあって良く通る低い声なので、よほど注意しないと響き渡ってしまうから、仕方ないと言えば仕方ないですね。

時折ボソボソと聞きながら、基本は黙々とそれぞれの学習を進めます。

始めは顔を寄せ合う度に、どこからか消音仕様の黄色い悲鳴が聞こえてきましたが、集中しているうちに全く気にならなくなりました。

そして、お昼。

待ち合わせ場所でもあった休憩スペースへ。

ラップで個装したおにぎりと弁当箱を取り出し、軽く説明。


「梅干しと、おかかチーズと、シーチキンマヨ。おかずは、卵焼きと肉巻きと豆腐ハンバーグ、ウインナー、ポテトサラダ。プチトマトとブロッコリーは絶対食べろよ?」


お絞りと袋入りの割り箸を渡します。

お犬様の目がキラキラと輝きました。


「これ、全部キリコが作ったのか?」


指の間まできれいに拭いているのを確認しながら頷きます。


「卵焼きとポテトサラダ以外は、冷凍庫にあったやつだけど」


晩御飯のメインを、お弁当とかチョイ足し用に小分けしてストックするのは、基本ですよね?

蛇足だけれど、洸のお弁当はサンドイッチ。言わずもがな、チーズとシーチキンマヨと豆腐ハンバーグとポテトサラダが流用されています。


「それでも凄いな!美味うまそうだ」


シーチキンマヨおにぎりに、まずはかぶりつきました。彼は幼稚園の時から嗜好が変わっていないようです。

僕はトマトとブロッコリーを食べてから、おかかチーズに取りかかりました。

と、僕の手元を誠志郎がじっと見ています。


「どうした?」


訊けば、ご飯の間から覗いている具を指差しました。


「おかかチーズって、美味いのか?」

「?美味しいよ?」


良く見えるように差し出したら、バクリと喰い付かれました。


「意外に美味い、な」


僕ではなく、おにぎりが、ですが。


「もう一個あるだろう!」


三分の二を失ったおにぎりに未練はないけれども、言うべきことは言っておきましょう。


「キリコが食べているのが、食べたくなったんだ」


悪びれもせずに言われて、ハタと思い出しました。

そういえば幼稚園の時も僕の食べしを、なんだかんだと食べられていたような気が……


「まったく……成長してないんだな」


呆れて溜め息と共にこぼします。

誠志郎は、心外だ!と言わんばかりの顔を、途中で企むようなニヤリ笑いに変えて、


「そう。だからキリコ、食べさせてくれ」


つらっと口を開けて餌待ちしてきました。

あー、そうそう。箸使いも怪しかった時は、里芋を摘まむことも刺すこともできずに涙目になっていたから、食べさせてあげたことがあったなぁ……


「って、自 分 で 喰 え 」


箸で額を突きたい衝動を堪えるのが大変でした。


結構な量を持ってきたお弁当ですが、成長目覚ましい少年には物の程ではなかったようで、すっかりと平らげられました。作った甲斐があったというものです。

午後は眠気と闘いながらも三時くらいまで頑張り、送ると言い張る誠志郎を宥めてすかして断って、ようやく現地解散と相成りました。

家に着く頃、着信が。


『弁当、美味かった。次も頼む』


次回の約束をしていないのに、おねだりとは!

呆れつつ返信します。


『金取るゾ』


直ぐに返ってきました。


『請求明細書をくれれば』

『電気・水道代まできっちり請求してやる』

『無理だろう』

『果たしてそうかな』


送信しながら、テンポの良いやり取りに笑いがこぼれます。

その顔のまま家に入ったからでしょうか、リビングのソファからむっつりとした声が飛んできました。


「楽しかったんだ?お勉強デート」


クッションを抱えた、ふくれっ面の洸です。

置いて行かれたのが、余程ご不満だったようですね。

困ったなあと思いながら、「ただいま」を言って洸の隣に座りました。


「デートじゃないよ、ただの勉強会。次は必ず誘うから、機嫌直して?」


膨らんだ頬を突くと、ムキになって空気を溜めています。

それが、ふしゅっと抜けました。


「絶対だからね。絶対、教えてよ」

「約束する」


頭を撫でて、ようやくご機嫌が直ります。

ところで二人とも『次回』の話をしているけれど、『次』っていつなんですかね?

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